研究課題/領域番号 |
23K25851
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補助金の研究課題番号 |
23H01154 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14020:核融合学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田口 明 富山大学, 学術研究部理学系, 講師 (40401799)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2026年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | ゼオライト / 水素同位体 / 同位体分離 |
研究開始時の研究の概要 |
細孔径0.38×0.38nmのCHA型ゼオライトを初め,LTA型(0.41×0.41 nm),RHO型(0.36×0.36 nm)など,Si8O8からなる8員環細孔を有するゼオライトに着目し,冷低温領域(100~298 K)で動作可能な水素同位体分離材料の開発を目指すと共に,水素同位体分離特性と分離メカニズムの解明を試みる。 これまで,Cs+を対カチオンとするCs-CHAゼオライトについて,250 KでH2-D2混合ガスを吸着し,77Kから昇温脱着を行うと,200~300Kの冷温域に新たにH2,D2の脱着が観察(D2/H2比=1.42)されることを見出した。
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研究実績の概要 |
重水素,トリチウムの分離は,核融合炉燃料サイクルにおける水素同位体の分離,精製の他,廉価な重水素の製造,精製による光ファイバー製造や長寿命半導体の製造などへの貢献が期待できる重要かつ付加価値の高いプロセスである。水素同位体の分離は低温ほど有利であるが,省エネルギー化の観点から,簡便かつ室温に近い温度での分離プロセスの開発が望まれる。本研究では細孔径0.38×0.38nmのCHA型ゼオライトを初め,LTA型(0.41×0.41),RHO型(0.36×0.36)など,Si8O8からなる8員環細孔を有するゼオライトに着目し,100~298Kの冷低温域で動作可能な水素同位体分離材料の開発を目指すと共に,水素同位体分離特性と分離メカニズムの解明を試みる。 これまで,Cs+を対カチオンとするCs-CHAゼオライトの合成,およびH2-D2混合ガスを用いた昇温脱着実験からD2/H2分離能の評価を行った。前処理後のCs-CHAを77,201,あるいは250Kに保持(Tad.)し,H2(50.7%)-D2(49.3%)混合ガスを導入,吸着した。未吸着ガスを排気しながら試料を77Kに冷却した後,約0.3K/minの昇温速度でおよそ273Kまで昇温しながら脱着するH2,D2を質量分析計で定量した。その結果,約110KにH2,D2脱着が観察されると共に,Tad.=201Kでは約220K,Tad.=250Kでは約267KにH2,D2の脱着ピークが観察された。比較として行ったK-CHA,Na-CHAにおいても同様に,Tad.=250Kにおいて,それぞれ190K,200KにH2,D2の脱着が観察された。今後,200~300KのH2,D2脱着現象について詳細に検討する。なお,Cs-CHAについて,Tad.=250KにおけるD2/H2比は低温側で約1.34,高温側で1.42であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度までに,昇温速度約0.3 K/min,77Kを開始温度とする昇温脱着測定を確立した。現在,200 Kおよび250 Kを開始温度とする昇温脱着測定の実験条件を検討している。また,室温を十分に測定範囲に含めたいため,350K程度までの昇温装置,条件の検討を行っている。 2023年度までに250KでH2-D2混合ガスを吸着(Tad.)したCs-CHAでは,約110Kにおける脱着の他,約267KにH2,D2脱着ピークが観察された。200~273KにおけるD2/H2選択性(SD2/H2)は,約1.42と見積もられた。K-CHA,Na-CHAの脱着ピーク温度(それぞれ約190,約200K)と比較しても,60K以上高い温度で脱着することが分かり,D2/H2分離にCs-CHAが有望であることが示唆された。Cs-CHAの-10℃におけるD2/H2の分離は,Ag(I)-Y(Tad.=90K,SD2/H2=10,doi.org/10.1021/acs.inorgchem.2c00028)や,Cu(I)-MFI(Tad.=273K, SD2/H2=1.2,10.1016/j.micromeso.2020.110820)と同様に,冷温域の同位体分離材料として有望であることを示している。 この様なCs-CHAのD2/H2同位体の分離機構は,極低温における細孔内拡散速度の差を利用する速度論的量子篩い(KQS)や,H2とD2の吸着熱の差を利用する化学親和的量子篩い(CAQS)とは異なることが示唆されている。今後,分離メカニズムについて,Cs-CHAの構造解析等も含めながら検討する。 一方,これらの研究過程において,Cs-CHAはH2(D2)の吸着量が極めて低いことが明らかとなった。吸着量の改善に向け,メカニズムの解明とともに,Cs-CHAの合成法の改良も検討する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,CHA型ゼオライトで観察された200~300KのH2,D2脱着現象を詳細に検討する。これまで昇温脱着測定は77Kを開始温度としていた。今後,昇温脱着の開始温度をドライアイス-エタノールを使用する200K以上に設定し,冷温領域の吸脱着現象を確認する。また,脱着現象が見られる250KのH2とD2の吸着等温線の測定を行い,吸着能を明らかにする。さらに,これら冷温域におけるCHA型ゼオライトの物性について,低温X線回折測定による構造解析を行い,結晶構造,格子定数の変化を明らかにする。得られた知見から,H2,D2吸脱着機構と分離メカニズムの解明を目指す。 一方,本研究で使用しているCs-CHAは,元素分析の結果,一部K+が交換されずに残っていることが明らかとなっている。Cs-CHAの250Kにおける特異なH2,D2脱着現象について,Cs+とK+の影響を明らかにするために,K+が含まれない試料(Cs-CHA)の調製を試みる。得られた試料について,昇温脱着測定,構造解析の他,いくつかの温度の吸着等温線の測定からH2とD2の吸着熱の測定を試みる。Cs-CHA,K-CHAにおける吸着熱の測定から,H2,D2の吸脱着機構の解明を試みる。 また,CHA型の他,LTA型やRHO型など,8員環細孔を有する他のゼオライトについても,昇温脱着測定を行い,D2/H2分離能の評価を行う。
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