研究課題/領域番号 |
23K25892
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補助金の研究課題番号 |
23H01196 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
飯田 崇史 筑波大学, 数理物質系, 助教 (40722905)
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研究分担者 |
鎌田 圭 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (60639649)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2026年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | ニュートリノ / 二重ベータ崩壊 / ガドリニウム160 / GAGGシンチレータ / 高純度無機シンチレータ / 極低放射能技術 / 地下素粒子実験 / 核行列要素 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、高純度なCe添加Gd3Ga3Al2O12結晶を用いて、内部に含まれる160Gd原子核が起こす二重ベータ崩壊の研究を行う。ウクライナでCe添加Gd2SiO5結晶を用いて行われた先行研究よりも感度を一桁高め、ニュートリノを放出する二重ベータ崩壊(2nbb)の発見を目指す。160Gdの2nbbは未発見であり、その半減期を測定することは二重ベータ崩壊確率の計算における理論的不定性の低減につながる。その結果、ニュートリノのマヨラナ有効質量の計算精度が向上し、素粒子物理学の理解が進むと期待される。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、代表者の主導するPIKACHU(Pure Inorganic Scintillator experiment in KAmioka for CHallenging Underground sciences)実験を遂行し、160Gdの二重ベータ崩壊の研究を行うことである。初年度となる本年度は、160Gdを含む高純度なCe添加Gd3Ga3Al2O12結晶(GAGG)の開発を行った。これまでの研究から、既存のGAGG結晶に含まれるウラン、トリウム系列の放射性不純物量は、ウクライナで行われた先行研究のGSOに含まれるそれと比較して約一桁高いことが分かっている。 初年度で我々は、GAGG結晶の主要原料であるGd2O3, Ga2O3, Al2O3, CeO2に対し、ゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線測定を行い、内部に含まれる放射性不純物量を計測した。その結果、主に不純物の原因となっていたのは、Gd2O3原料とAl2O3原料であることが判明した。Gd2O3に関しては業者に協力を依頼し、樹脂を用いた純化を行うことで二桁以上の不純物低減に成功した。さらに、Al2O3は3種類の原料を購入・比較し、最も純度の高い原料を選別することで、これまでより一桁以上の不純物低減に成功した。これら高純度原料を用いて結晶を作製し、その評価を行ったところ、ウラン・トリウム系列の不純物が既存の結晶に比べて一桁低い、高純度なGAGG結晶の開発に成功した。 また、高純度結晶開発と並行して、2024年度に開始予定のPIKACHU実験フェーズ1に向けたDAQの構築に取り組んだ。DAQ用PCとCAEN社製Flash-ADCを購入し、250MHzでの波形データ取得が可能なシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、初年度で高純度GAGG結晶開発を推進した。結果として、既存のものよりも一桁高純度な結晶の開発に成功している。また、それを大型化した際に得られる二重ベータ崩壊探索感度を見積もり、半減期で4.4×10^22年が達成可能であることを示した。これは先行研究の半減期下限値よりも2倍以上良い感度である。これを受けて、2024年度に神岡地下実験室においてPIKACHU実験フェーズ1を開始することを決定した。以上の理由により、本研究は予定通り進んでいるということが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度前半は、これまでに開発した高純度GAGG結晶を大型化し、重量3kg程度の結晶を作る。光電子増倍管と組み合わせ検出器モジュールを作製、性能を評価したのち、夏ごろを目処に神岡地下実験室内の鉛シールドに設置する。同時にDAQシステムも構築し、PIKACHU実験フェーズ1を開始する予定である。さらに並行して、フェーズ2に向けたさらに純度を高めた結晶の試作、そしてその目標であるニュートリノを放出する二重ベータ崩壊への探索感度の見積もりなどを進める予定である。
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