冷却原子・分子の量子エンタングル状態を用いたＥＤＭ探索

• 研究課題/領域番号: 23K25893
• 補助金の研究課題番号: 23H01197 (2023)
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 配分区分: 基金 (2024); 補助金 (2023)
• 応募区分: 一般
• 審査区分: 小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 青木 貴稔 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30328562)
• 研究分担者: 東條 賢 中央大学, 理工学部, 教授 (30433709) ; 松尾 由賀利 法政大学, 理工学部, 教授 (50231593) ; 阿部 穣里 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (60534485) ; 酒見 泰寛 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (90251602)
• 研究期間 (年度): 2023-04-01 – 2026-03-31
• 研究課題ステータス: 交付 (2024年度)
• 配分額: 18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円); 2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円); 2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円); 2023年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
• キーワード: 実験核物理 / 量子エレクトロニクス / 量子エンタングル状態 / レーザー冷却 / EDM / 原子・分子物理

研究開始時の研究の概要

レーザー冷却技術を用いて原子・分子で電子の電気双極子能率（EDM）を測定することを目指す。レーザー冷却されたLi 原子とSr 原子から、レーザー光によりLiSr 分子を生成する。冷却原子・分子の量子エンタングル状態を用いたラムゼー共鳴を行い、不確かさの改善を行う。磁気シールド内で、冷却原子・分子を用いて電子EDM 測定を行う。

研究実績の概要

EDM測定に向けて、今年度は、（１）分子分光用光源の実験、（２）EDM測定のための分子の量子状態の研究、（３）磁力計の開発、（４）磁気シールドの設計と予備実験、を行った。
（１）光源を用いた光学系の構築と分光実験に着手した。（２）東京大学の梶田氏と分担者の阿部氏ともに、電場と磁場下での分子の量子状態の計算について研究した。（３）磁力計の開発。EDM測定では、環境磁場の測定と磁気シールド内の磁場の評価が重要となる。そこで、東京農工大学の畠山温先生が開発した「スピン緩和防止コーティング」された原子セルを用いて、分担者の松尾氏・東條氏・酒見氏とともに、Mx磁力計を開発し、実際に環境磁場の測定に成功した。（４）磁気シールドの設計と予備実験。EDM測定で環境磁場を抑制するための大型の磁気シールドについて、磁気シールドの形状や性能などについて検討した。また、小型の磁気シールド内で磁力計による磁場測定を行った。そして、磁力計と磁気シールドの実験結果を学会発表した。電場測定も発表した。
分担者の阿部氏は、核EDMの一つであるシッフモーメントについて計算プログラムを開発した。TlF、RaO、LrF分子の数値計算を行い、従来のシッフモーメントの表現では、核表面付近での記述が不十分であることを明らかにし学術論文の執筆を進めた。分担者の東條氏は、冷却原子集団をガラス表面近傍まで輸送した後に、表面近傍で交差型光トラップを行うことで、蒸発冷却により位相空間密度1を超える高密度超低温状態を実現した。分担者の松尾氏は、超流動ヘリウム（～1.6 K）をトラップ媒質としたRbおよびAg原子の精密レーザー分光実験を進めている。光ポンピング法によるスピン偏極とレーザー・マイクロ波二重共鳴法を組合せることで、媒質中においても1 kHz以下の不確かさで超微細構造間隔を測定すべく、マイクロ波発振器の周波数掃引法を改良した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

磁気シールドの実験に着手し、当初の計画にはなかった磁力計を開発できた。

今後の研究の推進方策

ラムゼー共鳴の実験を行う。そして、磁気シールドやスクイージング状態により、信号の改善を試みる。

研究成果

• [国際共同研究] Physical Research Laboratory(インド)
• [国際共同研究] University C^ote d'Azur(フランス)
• [雑誌論文] Conception, modelling, and characterization of a fiber amplifier with a simple and easy-to-repair configuration intended for the use in harsh environments (2024)
  • 著者名/発表者名: Ozawa Naoya、Nakamura Keisuke、Sakemi Yasuhiro
  • 雑誌名: EPJ Techniques and Instrumentation 巻: 11 号: 1 ページ: 3-3
  • DOI: 10.1140/epjti/s40485-024-00111-1
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Injection of high energetic ion beams to superfluid helium as a host matrix of laser spectroscopic study of radioisotope atoms (2024)
  • 著者名/発表者名: Imamura K.、Takamine A.、Kikuchi K.、Mitsuyasu R.、Akimoto S.、Ito M.、Tsubura K.、Gladkov A.、Tajima M.、Go S.、Mukai M.、Doi M.、Nishimura M.、Yamamoto T.、Endo H.、Fukuzawa Y.、Sasamori S.、Takahashi S.、Hase M.、Kawata K.、Nishibata H.、Ichikawa Y.、Kitagawa A.、Wakui T.、Ueno H.、Matsuo Y.
  • 雑誌名: Interactions 巻: 245 号: 1
  • DOI: 10.1007/s10751-024-01889-y
  • 査読あり
• [雑誌論文] Hyperfine and P, T odd properties in BiO: comparison between coupled-cluster method and multi-reference perturbation method based on a Dirac Hamiltonian (2023)
  • 著者名/発表者名: Abe Minori、Tsutsui Takashi、Kanamori Hideto、Hada Masahiko
  • 雑誌名: Molecular Physics 巻: -
  • DOI: 10.1080/00268976.2023.2226255
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Francium ion source with novel methods of target heating and beam characterization (2023)
  • 著者名/発表者名: Ozawa N.、Nagahama H.、Sakemi Y.
  • 雑誌名: Review of Scientific Instruments 巻: 94 号: 2 ページ: 023306-023306
  • DOI: 10.1063/5.0118754
  • 査読あり
• [学会発表] バッファガス入りCs原子マイクロセルアレイを用いた量子センシング (2024)
  • 著者名/発表者名: 石井佑、田中聡、西野仁、小野崇人、Adam B. Gabteni、Anders Kastberg、 畠山温、松尾由賀利、松下大、東條賢、 酒見泰寛、岡本直大、梶田雅稔、鳥井寿夫、青木貴稔
  • 学会等名: 法政科学技術フォーラム2024（法政大学小金井キャンパス）2024年3月1日
• [学会発表] Development of the Mx magnetometer toward the search for dark matter (2024)
  • 著者名/発表者名: T. Aoki, Y. Ishii, S. Tanaka, H. Nishino, T. Ono, A. B. Gabteni, A. Kastberg, B. K. Sahoo, A. Hatakeyama, Y. Matsuo, D. Matsushita, S. Tojo, Y. Sakemi, N. Okamoto, M. Kajita, Y. Torii
  • 学会等名: The 15th International Workshop on Fundamental Physics Using Atoms (FPUA2024) (Okayama University) 13th March 2024
  • 国際学会
• [学会発表] 超流動ヘリウム中Rb不安定核原子のレーザー分光観測のためのビーム診断真空チェンバー内での光電子増倍管の動作検証 (2024)
  • 著者名/発表者名: 望月真生, 高峰愛子, 今村慧, 菊地快, 光安陸大, 大岩彩良, 上野秀樹, 松尾由賀利
  • 学会等名: 日本物理学会2024年春季大会, 2024年3月21日, オンライン
• [学会発表] Srリドベルグ原子を用いた電場の量子センシング (2023)
  • 著者名/発表者名: 青木貴稔，池田英彦，佐藤拓海，岡本直大， 酒見泰寛，鳥井寿夫
  • 学会等名: 第5回冷却原子研究会「アトムの会」（邦和セミナープラザ） 2023年8月2日
• [学会発表] バッファガス入りCs原子マイクロセルアレイを用いた量子センシング (2023)
  • 著者名/発表者名: 石井佑, 田中聡, 西野仁, 小野崇人, Adam B. Gabteni, Anders Kastberg, 畠山温, 松尾由賀利, 松下大, 東條賢, 酒見泰寛, 岡本直大, 梶田雅稔, 鳥井寿夫, 青木貴稔
  • 学会等名: 第40回「センサ・マイクロマシンと応用システム」（熊本城ホール）7P2-PS-30, 2023年11月7日
• [学会発表] Towards Discrete Time Crystals with Bouncing Bose-Einstein Condensates (2023)
  • 著者名/発表者名: Andrei Sidorov, Ali Zaheer, Arpana Singh, Chamali Gunawardana, Krzysztof Giergel, Krzysztof Sacha, Peter Hannaford, Satoshi Tojo
  • 学会等名: Bose-Einstein conendation 2023, Hotel Eden Roc (Sant Feliu de Guixols, Spain), Sep. 10th, 2023.
  • 国際学会
• [学会発表] Fundamental Physics with Cold Radioactive Heavy Elements (2023)
  • 著者名/発表者名: Y. Sakemi
  • 学会等名: Sixth Joint meeting of the nuclear physics divisions of the APS and JPS, Hawaii, Nov.26th-Dec.1st 2023
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Injection of high energetic ion beams to superfluid helium as a host matrix of laser spectroscopic study of radioisotope atoms (2023)
  • 著者名/発表者名: K. Imamura, A. Takamine, K. Kikuchi, R. Mitsuyasu, S. Akimoto, M. Ito, K. Tsubura, A. Gladkov, M. Tajima, S. Go, M. Mukai, M. Doi, M. Nishimura, T. Yamamoto, H. Endo, Y. Fukuzawa, S. Sasamori, S. Takahashi, M. Hase, K. Kawata, H. Nishibata, Y. Ichikawa, A. Kitagawa, T. Wakui, H. Ueno, and Y. Matsuo
  • 学会等名: International Conference on Hyperfine Interactions and their Applications (HYPERFINE2023), Nara, Japan, 2023.11.14
  • 国際学会
• [学会発表] Laser spectroscopic measurement of the hyperfine structure splitting of silver atoms in superfluid helium (2023)
  • 著者名/発表者名: S. Takahashi, K. Imamura, A. Takamine, H. Endo, T. Yamamoto, W. Kobayashi, H. Ueno, Y. Matsuo
  • 学会等名: International Conference on Hyperfine Interactions and their Applications (HYPERFINE2023), Nara, Japan, 2023.11.14
  • 国際学会
• [学会発表] Development of a neutralizer to produce thermalized RI atoms (2023)
  • 著者名/発表者名: Y. Fukuzawa, K. Imamura, A. Takamine, A. Gladkov, T. Kato, K. Shimizu, M. Rosenbusch, S. Go, Y. Ito, M. Tajima, Y. Matsuo, H. Ueno
  • 学会等名: International Conference on Hyperfine Interactions and their Applications (HYPERFINE2023), Nara, Japan, 2023.11.14
  • 国際学会
• [学会発表] HIMAC施設 2次不安定核ビームを利用した超流動ヘリウム中不安定核原子の超微細構造精密測定手法開発 (2023)
  • 著者名/発表者名: 高峰愛子, 今村慧, 菊地快, 光安陸大, 秋元彩, 伊藤愛美, 螺良健太, 上野秀樹, 松尾由賀利
  • 学会等名: 日本量子医科学会第3回学術大会, 2023年12月8日, 理化学研究所（埼玉県和光市）
• [学会発表] 超流動ヘリウム中Ag原子の超微細構造間隔測定へ向けて (2023)
  • 著者名/発表者名: 高橋翔輝, 今村慧, 高峰愛子, 遠藤宏紀, 山本匠, 上野秀樹, 松尾由賀利
  • 学会等名: 第12回停止・低速不安定核ビームを用いた核分光研究会(SSRI2023)，2023年9月4日，立教大学 (東京都)
• [学会発表] 超流動ヘリウム中Rb原子の超微細構造異常測定に向けたマイクロ波掃引方法の検証 (2023)
  • 著者名/発表者名: 笹森慎也, 高峰愛子,今村慧, 遠藤宏紀, 高橋翔輝, 上野秀樹, 土居三瑠, 松尾由賀利
  • 学会等名: 第19回原子・分子・光科学(AMO)討論会，2023年6月2-3日，東北大学 (宮城県仙台市)
• [学会発表] 超流動ヘリウム中Ag原子の超微細構造間隔測定へ向けたDPSSレーザーのレーザーパワー最適化 (2023)
  • 著者名/発表者名: 高橋翔輝, 今村慧, 高峰愛子. 遠藤宏紀, 山本匠, 上野秀樹, 松尾由賀利
  • 学会等名: 第19回原子・分子・光科学(AMO)討論会，2023年6月2-3日，東北大学 (宮城県仙台市)
• [学会発表] 低速・高偏極RI ビーム生成に向けた中性化装置開発における88Sr+イオンの冷却実験 (2023)
  • 著者名/発表者名: 福澤悠亮, 今村慧, 高峰愛子, Aleksey Gladkov. 加藤大河, 郷慎太郎, 田島美典, 松尾由賀利, Rosenbusch Marco, 上野秀樹
  • 学会等名: 第19回原子・分子・光科学(AMO)討論会，2023年6月2-3日，東北大学 (宮城県仙台市)