研究課題/領域番号 |
23K25899
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補助金の研究課題番号 |
23H01203 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
若狭 智嗣 九州大学, 理学研究院, 教授 (10311771)
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研究分担者 |
西畑 洸希 九州大学, 理学研究院, 助教 (00782004)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2023年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | 核物質 / 状態方程式 / 中性子スキン厚 / 中性子星 / 反応断面積 |
研究開始時の研究の概要 |
元素合成のゆりかごを生み出す中性子星の性質から合成プロセスまでを、核物質の状態方程式を通して統一的に理解することを目指す。状態方程式へのアプローチとして中性子過剰な原子核の中性子スキン厚に着目する。多くの理論模型は鉛原子核に対して薄いスキン厚を予測しているが、パリティ非保存電子散乱は厚い値を報告している。この矛盾を解決するために、陽子と中性子分布の半径を独立に決定することが必要である。そこで、九州大学FFA加速器からの100 MeV 級陽子ビームと中性子ビーム生成システムで原子核の陽子と中性子分布を独立かつ系統的に測定する実験を遂行し、状態方程式の高精度化を通して統一理解の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
元素合成のゆりかごを生み出す中性子星の性質から合成プロセスまでを、核物質の状態方程式を通して統一的に理解することを目指す。状態方程式へのアプローチとして中性子過剰な原子核の中性子スキン厚に着目する。本研究では、九州大学FFA加速器からの100 MeV 級陽子ビームと中性子ビーム生成システムで原子核の陽子と中性子分布を独立かつ系統的に測定する実験を遂行し、状態方程式の高精度化を通して統一理解の確立を目指す。 初年度である本年度は、中性子ビーム生成システムの設計・整備を進めた。まず、主要機器である偏向電磁石に対して、有限要素法による三次元磁場解析を行った。得られた磁場分布を用いてGeant4シミュレーションを行い、中性子生成標的通過後の陽子ビームが損失無くビームダンプに導けることを確認した。また、必要な遮蔽体の厚さや位置を求めた。さらに、100 MeV陽子偏向に必要な電源・電力ラインの導入・整備を行った。 陽子や中性子測定のために、発光物質の減衰時間の違いを利用して中性子とガンマ線の分離が可能な、Eljen社製シンチレータ EJ-276 を用いた位置感応型検出器を用いる。阪大RCNPにて数十から200 MeV程度の中性子に対する測定を行い、分離性能のエネルギー依存性をみる基礎データを取得した。また、252Cf 線源を用いて 10 MeV以下のデータも取得した。現在、解析を進めており、分離性能および検出効率のエネルギー依存性を比較するシミュレーションの構築も併せて進めている。 データ収集 (DAQ) に関しては、SPADIアライアンスのものに対してテストベンチを構築した。その結果、時間情報のみを用いる CF-ToT 法により中性子とガンマ線の分離を行うためには、専用の回路を設計・実装する必要があることが分かった。現在、設計をほぼ終えて、実装に向けた詳細設計を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、九州大学FFA加速器からの100 MeV 級陽子ビームを活用し、中性子ビーム生成システムを構築することで原子核の陽子と中性子分布を独立かつ系統的に測定し、状態方程式の高精度化を実現する計画を立てている。 初年度である本年度は、中性子ビーム生成システムの設計・整備、中性子検出器における中性子とガンマ線の弁別能力の定量的評価、施設の変更申請による実験室における100 MeV級陽子ビーム利用の実現の3つを主に計画していた。最初の中性子ビーム生成システムに関しては研究実績の概要に述べた通り、現実的な磁場分布に基づいた軌道計算に成功し順調に進んでいる。また、必要な遠隔制御可能な真空排気系の整備も行った。実際のビームラインに組み込んでテストを行った結果、大気圧から1時間以内の運転でビーム輸送に必要な真空度に到達することが確認された。 2番目の中性子検出器に対しても、加速器を用いた中間エネルギー中性子に対するデータ取得を終えており、解析とシミュレーション構築も概ね遅延無く進んでいる。時間情報のみを用いるCF-ToT 法による中性子とガンマ線の分離では、Flash-ADC を用いた波形データから、波高依存性を補正する専用回路の必要性が明らかになった。回路の基本設計を終え、現実的なシミュレーションを実施し、実データと比較しながら仕様の詰めを行っている。 3番目の変更申請に関しては、原子力規制庁との事前協議に時間がかかり、本年度中の許可には至らなかった。しかしながら、申請済みであり現在は許可に向けた細かな修正対応を行っているところであり、2年目の5月には申請許可・ビームシャッター設置に向けた工事を速やかに行う予定である。ビームシャッターの制御系の整備も並行して進めており、申請許可・工事が当初予定より遅れたことを取り戻すべく必要な措置を講じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、基本的には申請時の年次計画に沿って進行していくことで問題ないと判断する。変更申請に関連して一部遅れが生じているが、前年度後半に放射線取扱施設の変更申請を行っており、本年度5月に承認される見込みである。承認後速やかに穿孔工事およびビームシャッター設置を行ったのち、中性子ビームシステムの整備を実施する。具体的には、約3トンの主要機器である偏向電磁石を設置し、電源・冷却系との接続を行う。施設検査は八月に予定しており、その後、陽子ビームのコミッショニングを行い、遅延の解消を図る。 陽子や中性子測定に関しては、理化学研究所等と共同で開発している、発光物質の減衰時間の違いを利用して中性子とガンマ線の分離が可能な、Eljen社製のプラスチックシンチレータ EJ-276 を用いた位置感応型検出器を開発している。昨年度、CF-ToT法による分離を試みたが、波高に依存しない時間情報をCFDで得るだけでは不十分なことが明らかになった。そこで専用回路のシミュレーションを行い、それに基づいて回路を実装し分離能力の向上を図る予定である。分離達成後、標準中性子線源として導入されている 252Cf線源を用いて数MeV程度までの低エネルギー中性子に対する検出効率を求める予定である。その段階で、エネルギー依存性についてのシミュレーションの高度化が課題となる。 データ収集 (DAQ) に関しては昨年度、DAQ標準化を目指すSPADIアライアンスのものに対して実際にテストベンチを構築した。飛行時間やToT等の基礎情報の取得には成功しているが、マルチヒットに対する紐付けや波高情報の精度に問題があることが分かっている。CF-ToTからのデータ取得の実装と併せて、問題解決と高度化を行う。
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