研究課題/領域番号 |
23K25940
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補助金の研究課題番号 |
23H01244 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
長井 健容 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (90452044)
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研究分担者 |
中村 啓彦 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (50284914)
小針 統 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (60336328)
堤 英輔 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 助教 (70635846)
仁科 文子 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 助教 (80311885)
井上 龍一郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋観測研究センター), 主任研究員 (80624022)
鋤柄 千穂 国立研究開発法人海洋研究開発機構, SIP海洋統括プロジェクトチーム, 特任准研究員 (90447128)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2026年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
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キーワード | 黒潮 / サブメソスケール / 渦、フロント / 乱流混合 / 栄養塩フラックス / トカラ海峡 / 海山 / 湧昇 / 栄養塩 / 低気圧性渦 |
研究開始時の研究の概要 |
表層を貧栄養として知られる黒潮は、亜表層では大量の栄養塩を北方の下流域表層に最終的に供給し、生物生産を支える。トカラ海峡上流の黒潮が北偏すると、屋久島南西で小規模な冷水渦を形成しつつ、屋久島や種子島の北方に暖水が波及して大隈分枝流を形成する。この屋久島北側の東向きの流れは、島との境界で時計回りに回転する流れと、それに伴う強い乱流を生成することが推察され、分枝流が亜表層に栄養塩を伴っていれば、そこで栄養塩を供給し得る。本研究では、黒潮やその分枝流が屋久島や種子島に接近して流れる際に発生する渦、乱流混合に着目し、その栄養塩供給、低次生態系に及ぼす影響を現場観測と数値実験を用いて解明する。
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研究実績の概要 |
本研究では、トカラ海峡を流れる黒潮が北偏する際に生じる、サブメソスケールの渦や、低渦位生成に伴う混合現象と、それらの栄養塩供給、低次生態系への影響を現場観測と数値実験を用いて調査している。1回目の観測は、新青丸を用いて2022年12月から2023年1月にわたってトカラ海峡で実施した。本観測時には、トカラ海峡を流れる黒潮が北偏して流れ、屋久島の南側で、上に凸状構造をとった密度躍層と栄養塩躍層を捉えることに成功した。これらは、屋久島南に形成される低気圧性渦による湧昇の影響を受けたと推察される。また同じ観測期間中に種子島東方を観測した際には、丁度そこで低気圧性の渦巻き構造を衛星海面水温がとっていた。そこで高解像度の自由落下曳航式断面観測を実施した結果、渦の南側で栄養塩躍層と密度躍層が持ち上がっており、栄養塩の湧昇がそこで発生していることを示唆した。これらの低気圧性渦周辺は比較的乱流が弱く、栄養塩供給が渦に伴う鉛直移流によって発生していることを示唆した。低気圧性渦を再現するために高解像度の数値モデルで生態系モデルを一緒に計算したところ、モデル中の屋久島南海域で観測と同様な水平規模の低気圧性渦が、黒潮が接近して流れる際に、順圧不安定を介して発生していることがわかった。モデル中でこれらの渦を検出し、渦による硝酸塩の鉛直移流フラックスを計算したところ、屋久島の南海域では、渦の東側で硝酸塩の湧昇が、西側ではサブダクションが発生していることがわかり、正味で10 mmol m-2 day-1の湧昇フラックスを生じることがわかった。一方、2023年7月の新青丸航海や2022年11月のかごしま丸航海では、種子島北の大隈海峡で乱流と硝酸塩濃度の高解像度断面観測を実施し、北偏する黒潮から派生した暖水に伴って、大隈海峡に東向きの大隈分枝流が形成され、海底付近の硝酸塩が表層に乱流拡散することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、トカラ海峡を流れる黒潮が北偏する際に生じる、サブメソスケールの渦・混合現象と、それらの栄養塩供給、低次生態系への影響を現場観測と数値実験を用いて定量することを目的としている。これまでの研究の結果、トカラ海峡の海山周辺では1 mmol m-2 day-1 程度の大きな硝酸塩の乱流拡散フラックスがσθ=25面付近で200km程度の水平規模を持って黒潮に沿って発生することを現場観測から明らかにすることに成功した。さらに今まで見落とされてきた大隈海峡における大隈分枝流に伴う大きな硝酸塩の乱流拡散フラックスを現場で捉え、これが下流の黒潮に合流することで黒潮の下流を肥沃化する可能性を示した。また、乱流に加えて、屋久島周辺では、サブメソスケールの低気圧性渦が発生し、渦周辺で硝酸塩が上に凸状構造を取ること、また密度面に沿った舌状構造を形成することを現場観測によって初めて明らかとした。このような、高解像度の現場観測結果を再現するために、高解像度数値シミュレーションを用いて、現場観測でカバーしきれない時空間データを補完し、黒潮や大隈分枝流が生成する、九州南方海域の湧昇や混合現象による栄養塩供給ホットスポットの全体像を明らかにしつつある。このため、概ね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず2020年に白鳳丸で観測した200kmにわたる平均で1 mmol m-2 day-1 程度という大きな硝酸塩の鉛直拡散フラックスに関する結果をまとめる。またこれに、大隈海峡での硝酸塩の鉛直拡散フラックスを議論に加え、全体として九州南方が巨大な栄養塩供給のホットスポットとして黒潮を肥沃化していることを論文として出版する。一方で、屋久島南で発生する低気圧性渦とその栄養塩供給、低次生態系応答に関しては、私の博士後期課程の学生がすでに論文としてまとめ、現在投稿中である。一方でこれらの低気圧性渦や乱流に伴う、炭素の輸出フラックスに関するデータは未だ所得されておらず、果たしてどの程度の炭素循環への貢献があるかは未だ不明である。そこで2024年12月から2025年1月にかけて予定されている新青丸航海では、漂流型セジメントトラップを渦に投入し、ラグランジュ的な観測を一部渦で実施する予定である。また、大隈分枝流と黒潮が合流する海域での観測はこれまで不十分であるのでそこでどのような、物理生物化学的現象が発生しているか、栄養塩供給、低次生態系応答という観点に焦点を当てて観測を実施する。得られた成果は、国際学会などで発表し、フィードバックを得たのちに論文していく予定である。
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