研究課題/領域番号 |
23K25952
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補助金の研究課題番号 |
23H01256 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17030:地球人間圏科学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐伯 和人 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (50292363)
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研究分担者 |
鹿山 雅裕 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (30634068)
松島 亘志 筑波大学, システム情報系, 教授 (60251625)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
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キーワード | 月 / 永久影 / コールドトラップ / 水資源 / 月極域探査 |
研究開始時の研究の概要 |
月の極域の永久影に、外部から飛来した水のような揮発性物質分子が凍結捕獲され、さらにレゴリス空隙内を移動する時、レゴリス粒表面におけるレゴリス温度での昇華・凝華の繰り返しが考えられている。しかし、我々は飛来した水分子がすぐには凝華しないでレゴリス間を何度か跳躍しながら運動エネルギーを失った後、凝華するという過程を提案する。その場合は月の水資源の埋蔵量が飛躍的に増大する可能性がある。本研究は、このような初期濃集過程の存在を、真空凝華実証試験や、非平衡昇華速度計測、レゴリス3次元モデルの中の水分子跳躍計算機シミュレーションで示そうとするものである。
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研究実績の概要 |
月の極域の永久影では外部から飛来した水のような揮発性物質分子を凍結捕獲するコールドトラップが行われていると考えられている。コールドトラップやその後の水分子のレゴリス空隙内の移動のメカニズムとして、レゴリス粒表面での昇華・凝華の繰り返しが考えられているが、レゴリス温度から推測される昇華・凝華速度では多くの水分子が地下に移動できないうちに微小隕石衝突によって宇宙へ四散してしまう。しかし、我々は飛来した水分子がすぐには凝華しないでレゴリス間を何度か跳躍して運動エネルギーを失った後、凝華するという過程を提案する。このような初期濃集過程があれば例え水分子の初期到達深度が数cm程度だったとしても水資源の埋蔵量が飛躍的に増大する可能性がある。この初期濃集が起こりうることを、真空凝華実証試験や、非平衡昇華速度計測、レゴリス3次元モデルの中の水分子跳躍計算機シミュレーションで示すことが目的である。 今年度は、真空配管を組み立てて「コールドトラップ実証実験」を行った。配管中の水分子の平均自由行程がcmオーダーになる気圧にする一方、ガラスビーズをレゴリス模擬物質として試験管に入れ、試験管を液体窒素で-196℃にしておき、そこへ配管からの水分子をぶつけてコールドトラップさせた。高い運動エネルギーを持つ水分子ほど、模擬レゴリス深くまで侵入できることを確認できた。また、「3Dレゴリス形状モデルによる水分子移動シミュレーション」も始め、一次元モデルや球体レゴリスモデルでの水分子の挙動の違いの基礎的なデータが得られ始めた。さらに、真空下での氷の昇華速度を観測し、昇華・凝華速度の定量的な議論をするための、走査電子顕微鏡とクーリングステージシステムをくみ上げ、実験の基礎となる環境を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の根幹となる作業仮説であった、コールドトラップまでに水分子が何度もレゴリスに衝突することや、水分子の速度によってその衝突回数が異なることを実験によって実証することができた。この研究計画の有効性が証明されたことは当初予定通りであるが大きな成果である。また、3D形状を再現したシミュレーションソフトの基礎部分が完成して計算機シミュレーションを予定通り開始することができた。非平衡実験用の走査電子顕微鏡と冷却ステージを組み合わせたシステムも昨今の電子部品等の供給不足から納期が心配されたが、無事納品され、初年度のうちに基礎的なシステムを組み立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
「コールドトラップ実証実験」については、学術論文発表に耐える精度の高いデータを得るために、装置を改良して実験条件の安定化を図り、さらに実験回数を増やしてデータを増やした後、論文投稿する。なお、実験結果を解釈するために1次元に単純化した跳躍シミュレーションソフトをつくって検証したところ、跳躍回数は当初の想定を遙かに超えて、1万回~10万回のオーダーに達している可能性があることがわかった。そのため、今後のコールドトラップシミュレーションは、そのような大きな跳躍回数に対応するような工夫をほどこしたい。 「3Dレゴリス形状モデルによる水分子移動シミュレーション」に関しては、過去の科研研究でアポロ16号サンプルをマイクロX線CTで計測して、74個の粒子の形状を複合球体にモデル化し、さらに個別要素法シミュレーションで、月の重力下で堆積させた模擬レゴリス地層モデルを保有している。これは、元々は力学特性シミュレーション用につくったものだったが、それを流用して水分子移動シミュレーションを行った。初年度に使った地層モデルは月レゴリスの最表面としては空げき率が低いので、空げき率を高めた地層モデルを準備してさらに現実に近いモデルで3次元形状が水分子移動に与える影響を検証したい。 「非平衡昇華速度測定実験」に関しては、昇華速度の実験を予定どおりすすめていく。凝華プロセスについても実験をしたいと考えているが、コールドトラップまでの跳躍回数が大きな数字になることが実験により示唆されているので、これを確認する実験条件を検討中である。
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