研究課題/領域番号 |
23K25964
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補助金の研究課題番号 |
23H01268 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山野 誠 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (60191368)
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研究分担者 |
木下 正高 東京大学, 地震研究所, 教授 (50225009)
笠谷 貴史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(海底資源センター), センター長代理 (90373456)
後藤 忠徳 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (90303685)
朴 進午 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70359199)
土岐 知弘 琉球大学, 理学部, 准教授 (50396925)
川田 佳史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 客員共同研究員 (50402558)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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キーワード | 海洋地殻 / 日本海溝 / 流体循環 / 熱輸送 / 比抵抗 / アウターライズ / 断層 / 熱流量 / 間隙水 |
研究開始時の研究の概要 |
日本海溝・千島海溝に沈み込む直前の海洋プレート上で、高密度の熱流量測定、海底電磁気探査、堆積物中の間隙水の化学分析を行い、他のデータや数値モデリングと合わせることにより、海洋地殻内での水の動きと熱輸送の過程を明らかにする。特に、日本海溝と千島海溝の違い、日本海溝の中での地域による違いに着目し、プレートの構造や沈み込みに伴う変形との関係を調べる。その結果に基づき、プレート境界の地震発生帯付近の温度構造と水分布が、海溝や地域によりどのように変化するかを考察する。
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研究実績の概要 |
1.日本海溝海側および沖縄トラフにおいて断層近傍での高密度測定により検出した熱流量異常について、異常を説明する流体循環モデルの構築を行った。また、日本海溝アウターライズ上での短波長の熱流量変動と海洋地殻及び堆積層の構造を対比し、地殻の破砕と流体循環の発達過程を考察した。 2.熱流量測定の精度向上を目指して開発した、多数のセンサーを有する細い温度プローブを用いる機器について、プローブと記録装置の接続を簡便にする改良を行い、琵琶湖底において測定試験を実施した。 3.2024年に予定している人工電流源を用いた比抵抗構造探査について、測線の検討、使用機器の整備を進めた。水深1000mの海域で、電位計を備えた長さ1kmのケーブルを海底上100m程度の高度で曳航し、問題点の洗い出しを行った。曳航した電位計にノイズが乗ることが判明したため、これを解消する改良を行った。また、北西太平洋で取得した海底電磁場データを解析した結果、太平洋プレートのリソスフェアの比抵抗値を求めることができた。 4.日本海溝海域における反射法地震探査データを解析し、大規模な地震断層の構造と物性を調べた。アウターライズに発達する正断層群の活動性を評価するため、地震探査データから推定した断層形状と地殻応力場データなどを組み合わせ、個々の断層の滑りやすさを求めた。 5.デジタル屈折計の導入により、調査船上において堆積物コア間隙水の塩濃度を測定できるようになった。海洋地殻やマントルからの深部流体は海水と塩分が大きく異なるため、調査航海中にコア試料採取を行いながら、計画を検討・修正することが可能となった。 6.海洋地殻の破砕が熱輸送に及ぼす影響を評価するため、割れ目・断層に相当する薄い領域を埋め込んだ系の熱伝導を計算する数値計算コードを開発した。薄い領域の熱伝導率を大きくすることで、流体循環による熱輸送の効果を取り込むことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の重要な要素である、日本海溝アウターライズ上での人工電流源を用いた海底電磁気探査について、研究船共同利用の申請を行って採択され、2024年5月の「新青丸」KS-24-8航海において実施できることになった。これに向けて、探査測線の選定、使用機材の整備、作業方法の打合せ等の準備が順調に進んでいる。 一方、2023年4月の「新青丸」KS-23-6航海では、日本海溝海側の正断層の近傍で熱流量の高密度測定を実施する予定であったが、海況不良のために観測調査時間が限られ、少数の点での測定ができたのみであった。このため、断層帯における流体循環については、主に既存の熱流量データに基づいたモデル構築を進めた。 熱流量測定機器の改良を進めた結果を、琵琶湖で湧水活動を調べるプロジェクトと連携して湖底での測定に活用することで、確認できた。 海底堆積物の間隙水分析については、デジタル屈折計の導入によって船上での塩濃度測定が可能となり、航海中にコア試料採取の計画を随時更新して調査を行う準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
2024年5月に、日本海溝アウターライズ上で人工電流源を用いた海底電磁気探査を、詳細な熱流量分布が得られている海域で実施する。その結果を解析して得られる海洋地殻上部の3次元的な比抵抗構造を、熱流量分布、地震波速度構造、反射法地震探査による構造と対比し、地殻の破砕・断層・流体循環の発達過程を推定する。 2025年度に日本海溝海側の断層近傍での熱流量測定・間隙水試料採取を実施するため、関連する分野・プロジェクトの研究者と協力して調査航海計画を作成し、研究船共同利用の申請を行う。 熱流量測定機器の改良については、引き続き琵琶湖での湧水活動の研究と連携して測定試験を行い、実用化を図る。 日本海溝において得られてきた成果を足掛かりとし、国内外の研究者と共同して、千島海溝・マリアナ海溝の海側で測定された熱流量異常と地殻構造の関係を調べる。これにより、プレートの屈曲変形に伴う海洋地殻の破砕・流体循環の発達の不均質性・地域性について、その要因や沈み込みプレート境界への影響の探求を進める。また、伊豆―小笠原海溝を対象とした新たな調査研究計画の立案にも貢献する。
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