研究課題/領域番号 |
23K25966
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補助金の研究課題番号 |
23H01270 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鷺谷 威 名古屋大学, 減災連携研究センター, 教授 (50362299)
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研究分担者 |
寺川 寿子 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (30451826)
松多 信尚 岡山大学, 教育学域, 教授 (40578697)
MenesesーGutierrez Angela (MenesesーGutierrezAngelaDelValle) 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波防災研究部門, 契約研究員 (90846099)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2027年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2026年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
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キーワード | 島弧地殻の変形特性 / 応力場 / 非弾性変形 / テクトニクス / 長期変形 / 島弧地殻 / 地震 / 地殻変動 / 応力ば |
研究開始時の研究の概要 |
活動的なプレート境界である日本列島では顕著な地殻変動が生じる。地殻変動データは完全弾性体を仮定して解釈されてきたが、近年の研究に より島弧地殻が非弾性的な振る舞いをすることが明らかとなった。本研究では、島弧変形の理解を深めるため、地殻変形の構成関係(応力とひ ずみの関係)を推定するとともに、地殻変動に加えて地震学的な応力場および長期変形データを考慮した新手法により、非弾性変形と弾性変形 を分離し、その空間的な分布を推定する。多様な時空間スケールの変形場および応力場との関係を考慮した地殻変動の解釈を通して、日本列島 のテクトニクスの総合的な理解と新たな地殻変動学の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
測地観測に関しては、ひずみ集中帯の長岡平野周辺及び糸魚川静岡構造線北部で独自GNSS観測点を運用してデータを取得し、地殻変動データを蓄積した。特に長岡平野周辺では、携帯基地局に設置されたデータの解析を行い詳細な地殻変動パターンを得ることができた。 地殻変動データから地殻の力学特性を解明する足がかりとして、新潟ー神戸ひずみ集中帯のGNSS座標データ約20年分を用いて地殻変動の詳細な時空間変化を分析し、東西方向の伸長・短縮変形を弾性変形と非弾性変形の寄与に分離した。さらに非弾性変形が応力に依存することを見出し、応力とひずみ速度の関係から地殻の粘性を推定した。今回の解析は暫定的な成果ではあるが、地殻変動データから力学特性を推定できる可能性が示された。また、地震時及び地震後のGNSS観測データからひずみエネルギーの変化を見積もる方法を開発し、2016年鳥取県中部地震及び2016年熊本地震に適用して検討した。 長期変形に関しては、2022年9月に地震が発生した台湾東部、2014年に地震が発生した長野県北部、2024年1月に地震が発生した能登半島などで現地調査により変動地形の計測や地震との関係を検討した。また、活断層データに基づいて日本列島の長期的な変形速度分布を求める取り組みを開始し、新たな結果を得た。 地震応力のに関しては、2016年熊本地震震源域の絶対応力場を推定する目的で,CMTデータインバージョン法により,熊本地震前後の応力場の変化と絶対応力レベルの関係を分析した.この結果,地殻の実効的摩擦係数は,従来考えられてきた値(<0.1)より大きい可能性があることがわかった. 担当者による会議を2回開催し、研究の進捗報告と議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新潟ー神戸ひずみ集中帯のGNSS観測データを用いてひずみ速度と応力変化の対応関係を求められたことは今後につながる大きなステップである。今回は東西方向の1次元変形のみを扱ったが、今後は2次元の変形として扱うことで、より的確が議論ができるようになると期待できる。また、非弾性変形の推定結果との比較対象となる長期変形速度分布を活断層データから求める手法を開発し、既存のデータに適用した。現在の方法は計算する格子感覚によってひずみの値が変わってしまうが、測地学的な全ひずみとの比較の際には、同様な格子を設定して平均化処理を行うため問題は解決可能である。地震学、地質・地形学の情報を測地学データと統合する手法のアイデアは既に考えてあり、今後はその具体的な統合解析手法を開発していくことになる。年2回程度の研究集会で情報交換をしており、研究分担者との関係は良好である。指導学生の協力も得て順調に進展している。2024年能登半島地震の発生により、地震活動評価において、海域も含めた活断層の評価が重要であることが再認識された。こうした方向性は本研究の目指すところと同じであり、研究の更なる進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
GNSS観測及びデータ解析、InSARデータ解析を進め、変形集中域における詳細な地殻変動分布の解明を進める。GNSSについては、GEONETに加え、大学独自観測点やソフトバンク携帯基地局の基準点を活用する。 GNSSデータに基づく地殻の力学特性の推定をより一般的なケースに拡張するとともに、プレート境界及びプレート内の地殻変動源を推定する逆解析法の開発を進める.特に、非弾性変形の拘束条件として地殻応力場や長期変形のデータをどのように取り込むかを担当者間での議論を通して検討する。長期変形のデータとしては、陸域活断層のデータに加え、活褶曲データ、海域の活断層データ、海岸部の海成段丘、地層の変形データなどの活用を進める。 また、2024年1月に発生した能登半島地震についても、本研究の当初計画では考慮していなかったが、地殻内地震の例として考慮し、現在の地殻変動、長期変形、応力場等のさまざまな観点から検討を試みる。 研究分担者間では毎年2回程度対面での打ち合わせを実施する。研究の3年目、5年目には、海外研究者も交えて研究集会を開催する。また、国際学会等で特別セッションを開催して研究成果をアピールするとともに多くの研究者と広く議論を行う。
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