研究課題/領域番号 |
23K25971
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補助金の研究課題番号 |
23H01275 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
相澤 広記 九州大学, 理学研究院, 准教授 (50526689)
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研究分担者 |
松島 健 九州大学, 理学研究院, 教授 (40222301)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 水蒸気噴火 / 間欠泉 / 傾斜 / 地電位 / 直前予測 / 微動 |
研究開始時の研究の概要 |
傾斜と電場(地電位差)の同時観測から水蒸気噴火を直前予測できるか検証する。電場観測では他の物理観測で計測できない地下水流動を間接的に推定できる。本研究の最初のステップとして2か所の間欠泉において傾斜、電場、可視映像の同時観測を2週間程度行い、地下圧力源と電場変動の時空間関係を明らかにする。次に3つの火山において傾斜と電場の長期観測(2年程度)を行い「傾斜変動を伴う火山性微動」により電場変動が観測されるか、されるとしたら地下圧力源とどのような時空間関係があるか確認する。以上の観測により得られた知見から、最終的に傾斜と電場観測による水蒸気噴火直前予測の有用性について結論を得る。
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研究実績の概要 |
本研究では傾斜と電場 (地電位差) の同時観測から水蒸気噴火を直前予測できるか検証する。ターゲットとする前兆現象は継続時間が数分程度の「傾斜変動を伴う火山性微動」と、そのとき発生が期待される電場変動である。電場観測では他の物理観測で計測できない地下水流動を間接的に推定できる。「傾斜変動を伴う火山性微動」は稀な現象であるので、観測事例を増やすため水蒸気噴火と類似する間欠泉も研究対象とする。 R5年度は島根県木部谷間欠泉で傾斜、地電位、可視映像、温度の多項目観測を行った。この間欠泉は噴出時間6分、休止時間32分の38分周期で24℃程度と低温の温泉水を噴出し、駆動源は地下の空洞に蓄積する炭酸ガスと考えられている。本観測から得られた傾斜、地電位、温度のデータには噴出と対応した明瞭な変化が見られらた。観測点をそれぞれ3ケ所設置することで地盤変動源、地電位変動源の位置を推定した。地盤変動源として深さ10mを上端とした29m x 16mの北東―南西走行の板状の地盤変動源が推定された。その体積は2.6m3で、温泉水の噴出量とおおよそ等しい。点電流、面電流のそれぞれを仮定した推定した地電位変動源の位置は、地盤変動源とおおよそ一致した。両者の変動源の位置に明瞭な時間変化は見られなかった。得られたデータから木部谷間欠泉のメカニズムを推定し、噴出前の炭酸ガスによる圧力上昇と、周辺から流入する地下水で説明可能であることが分かった。その一方で傾斜変化、地電位変化と噴出開始のタイミングについては、霧島硫黄山の水蒸気噴火や間欠的熱水噴出現象で見られたような、噴出直前に変化がゆるやかになる傾向は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
間欠泉で明瞭な傾斜変動と地電位変動が観測でき、その変動源を推定できたことから、研究手法が有効であることが確認できた。また変動源推定などの解析手法が確立できたことで、今後、観測データから短時間で結果を出すことが可能となった。本来の計画では複数の間欠泉での多項目観測を予定していたが、複数の間欠泉で観測許可が得られなかったため、R5年度は1ケ所でしか観測を実施できなかった。そこで次年度も引き続き間欠泉の多項目観測を実施するため、北海道の羅臼間欠泉で下見と観測点選定を行った。活動的火山においては霧島硫黄山と九重硫黄山で地電位観測を開始・維持したが、「傾斜変動を伴う微動」は発生せず、目立った変化は見られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
傾斜変化、地電位変化と噴出開始のタイミングについて、木部谷間欠泉では水蒸気噴火との類似性が見れなかった。これは高温の水蒸気によって駆動される水蒸気噴火と、低温の炭酸ガスによって駆動される木部谷間欠泉の噴出メカニズムに違いがある可能性がある。今後、高温水蒸気型の間欠泉の多項目観測も実施し、その原因を考察する。活動的火山において「傾斜変動を伴う微動」とそれに伴って期待される地電位変動を観測するため、さらに複数の火山において傾斜と地電位の連続観測点を設置し、長期観測を行う。多くの火山で同時に観測を行うため、不足するデータロガーおよびセンサーを購入する。また許認可や実際の観測を行うため旅費を計上する。RAを1名雇用し、多項目観測を効率的に行う。
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