研究課題/領域番号 |
23K25978
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補助金の研究課題番号 |
23H01282 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
辻野 典秀 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, テニュアトラック研究員 (20633093)
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研究分担者 |
山崎 大輔 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (90346693)
櫻井 萌 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 特任助教 (00963729)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2026年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
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キーワード | 下部マントル / 粘性率 / 多相系 / レオロジー |
研究開始時の研究の概要 |
地球物理学的観測から、下部マントルの粘性率構造は深さ方向に一様ではないことが知られている。この主な要因は、下部マントルが硬いブリッジマナイトと柔らかいフェロペリクレース(Fp)により構成され、その微細組織の違いに起因すると考えられているが、それらを定量的に明らかにした研究は報告されていない。さらには第三相であるCaSiO3-ペロブスカイトがFpよりも柔らかい可能性が報告された。そこで、本研究では、各下部マントル鉱物の相対粘性率を明らかにした上で、高温高圧変形実験により多相系としての下部マントル鉱物の粘性率を決定することで、下部マントルの三次元粘性率構造を推定することを目指すものである。
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研究実績の概要 |
本研究は下部マントル鉱物のそれぞれの粘性率差を明らかにするとともに、多相系での歪量を変数とした粘性率の決定を行うことで下部マントルの三次元粘性率構造を高圧実験から推定し、沈み込み帯の様式の多様性の要因を解き明かすことを目的としている。そこで、1年目となる2023年度には、以下の二つのことを行った。 1.下部マントル中で3番目に主要鉱物であるCaSiO3-ペロブスカイトの粘性率測定 CaSiO3-ペロブスカイトは3番目に主要な鉱物であり、2022年にダイヤモンドアンビルセルを用いた変形実験により下部マントル主要鉱物中で最も柔らかい鉱物である可能性が示唆された。そこで、本研究では、川井式セル及び変形111型マルチアンビル装置を用いて約18万気圧下での変形実験中のその場応力ー歪測定を行うことで粘性率の決定を行った。その結果、CaSiO3-ペロブスカイトは我々が過去に報告したブリッジマナイトに比べて柔らかいものの、二番目に主要なフェロペリクレースよりも固いことが明らかとなった。 2.超高温真空炉を用いた微小多結晶体の合成 本研究では、多相系としての下部マントルの粘性率を測定することを目的としている。その実験を行うために、均質な微細組織を持つ多相系の微小多結晶焼結体の合成は必要不可欠である。そこで、ナノ多結晶焼結体を合成することを可能とするために真空下での焼結体を行うために超高温真空炉及び冷間等方加圧装置の導入を行った。本年は、フォルステライト多結晶体及びCaSiO3焼結体の合成を行った。CaSiO3焼結体は1.に述べたCaSiO3-ペロブスカイトの変形実験の出発物質として使用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、多相系としての下部マントルの粘性率を高温高圧変形実験によって決定することを目的としている。そこで、研究実績の概要に述べたように1年目となる2023年度には、以下の二つのことを行った。 1.下部マントル中で3番目に主要鉱物であるCaSiO3-ペロブスカイトの粘性率測定 2.超高温真空炉を用いた微小多結晶体の合成 これにより、下部マントル鉱物の粘性率差が圧力が多少異なるが明らかになった。また、多相系での変形実験を行う上で重要となる出発物質の合成のための試料の合成を行うことを可能とした。今後、これらをもとに、第二、第三の主要鉱物であるフェロペリクレース・CaSiO3-ペロブスカイトの下部マントル圧力での粘性率の測定により相対粘性率の決定、多相系での変形実験を行うための出発物質合成にめどが立ったことから概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は下部マントル鉱物のそれぞれの粘性率差を明らかにするとともに、多相系での歪量を変数とした粘性率の決定を行うことで下部マントルの三次元粘性率構造を高圧実験から推定し、沈み込み帯の様式の多様性の要因を解き明かすことを目的としている。そこで、2023年度に得られた成果をもとに以下の3点を明らかにすることで本研究目的を達成する。 1.CaSiO3-ペロブスカイト(Ca-Pv)及びフェロペリクレース(Fp)の下部マントル圧力条件での粘性率測定。:下部マントル圧力条件でのそれぞれの鉱物の粘性率測定は必要不可欠である。そこで、下部マントル圧力条件でのCa-Pv及びFpの粘性率測定をすることで、下部マントル条件での下部マントル鉱物間の相対粘性率を明らかとする。 2.カンラン石組成を持つ下部マントル鉱物多相系での粘性率の歪量依存性の決定。:ポストスピネル相(カンラン石組成を持つブリッジマナイトとFpの二相系)でのせん断変形実験中のその場応力歪測定を行うことにより、歪量に伴う、粘性率の変化を明らかにする。本研究により、歪量に伴いどちらの鉱物が粘性率を支配するかを明らかにするとともに、ダナイトのような枯渇したカンラン岩が示す下部マントル中での粘性率を明らかにすることが期待される。 3.パイロライト組成を持つ下部マントル鉱物多相系での粘性率の歪量依存性の決定。パイロライト組成でのせん断変形実験中のその場応力歪測定を行うことにより、パイロライト組成での下部マントルの粘性率とその歪量依存性、粘性率を支配する鉱物を明らかにすることが期待される。また、最後に、これまでに明らかにされた単相系及び多相系での粘性率及び歪量に伴う粘性率の変化から下部マントルの三次元粘性率構造の推定を行う。
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