研究課題/領域番号 |
23K25979
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補助金の研究課題番号 |
23H01283 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡邉 友浩 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (80731968)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2026年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2025年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
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キーワード | 生命進化 / 亜硫酸 / 微生物 / タンパク質 / エネルギー代謝 / ヘテロジスルフィド還元酵素 / リポ酸 / 硫黄リレータンパク質 / 硫黄 / 酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
始原的なエネルギー代謝には亜硫酸が使われていたと考えられている。本研究では、亜硫酸を生成する可能性を持つ機能が未知のタンパク質複合体(sHdr)の触媒反応を生化学および構造生物学的に解明する。sHdrの触媒反応に重要なアミノ酸配列を情報学的に解析することで、亜硫酸を使うエネルギー代謝の進化起源を考察する。そして、本酵素および関連酵素の情報学的解析を通じて、始原的なエネルギー代謝の進化を再考する。
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研究実績の概要 |
本研究計画の目標は、一部の硫黄酸化菌が合成する機能未知のヘテロジスルフィド還元酵素が亜硫酸生成反応を触媒するとの仮説を、生化学と構造生物学によって検証することである。2023年度は、硫黄酸化菌から精製したヘテロジスルフィド還元酵素複合体の立体構造をクライオ電子顕微鏡で解析した。この結果、本酵素複合体には計画当初には予想していなかった小さなタンパク質が結合していることが判明した。質量分析とAIによる構造予測を組み合わせることで、この小さなタンパク質がサイズ11 kDaの機能未知タンパク質であることを解明した。そのアミノ酸配列の解析結果から、これは硫黄輸送タンパク質の一種だと考えられる。ヘテロジスルフィド還元酵素の酵素反応には複数種類の硫黄輸送タンパク質が関与すると考えているが、今回の様にヘテロジスルフィド還元酵素と硫黄輸送タンパク質が結合した複合体の構造は世界的にも初めてのものである。また、ヘテロジスルフィド還元酵素の活性部位の1つに非キュバン[4Fe-4S]クラスターが結合する可能性を見出した。通常、非キュバン[4Fe-4S]クラスターを結合するタンパク質にはCCGモチーフと呼ばれる配列特徴が保存されているが、今回見出した非キュバン[4Fe-4S]クラスターを配位する領域には、CCGモチーフと大きく異なる配列特徴がみられる。この発見に関しては別実験による精査が必要であるが、少なくとも、その触媒反応は既知のものとは異なると考えられる。 一方で、酵素反応を生化学実験によって検出するために、2023年度は酵素反応基質の調整および酵素反応を検出するための質量分析実験とゲルシフトアッセイを確立した。なお、酵素反応基質はリポ酸を結合したリポ酸結合タンパク質とスルファン硫黄を結合した硫黄リレータンパク質だと予想している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能未知のヘテロジスルフィド還元酵素複合体の立体構造解析によって、当初の予想を上回る成果を得た。まず、当初予想していなかったタンパク質が複合体に含まれることを発見したことで、その未知機能の解明に向けた新たな研究展開が期待できる。さらに、活性部位の1つがユニークな特徴を持つ鉄硫黄クラスターである可能性を新たに発見した。したがって、得られた成果は当初の予想を大きく上回るものである。一方で課題として、複合体を構成する1つのサブユニットの構造が得られなかった。2023年度はAIによる構造予測で欠けている1つのサブユニットを複合体構造にモデルすることに成功しているが、このサブユニットを含む完全な複合体の立体構造を実験的に解明することが理想的である。以上より、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に得られたヘテロジスルフィド還元酵素複合体の立体構造には、1つのサブユニットが欠けていた。完全な複合体の構造を解明するために、2024年度は複合体の精製条件を改良する。2023年度の構造から非キュバン[4Fe-4S]クラスターの存在が強く示唆された。しかし、これを配位する配列特徴が高度にユニークであるため、2024年度は、複合体を分光法によって解析することで、非キュバン[4Fe-4S]クラスターの存在を検証する。また、酵素活性測定を開始する準備が整ったため、2024年度は亜硫酸合成反応の検証を開始する。よって、2024年度の実施計画は精製条件の改良、分光分析、亜硫酸合成反応の検証である。これらを実現するためには、数百グラムの培養細胞が必要になる。現在の硫黄酸化細菌の培養体制ではこの需要を満たすことができないので、2024年度前期は培養体制の強化に重点的に取り組み、順次、実験研究を開始する。
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