研究課題/領域番号 |
23K25987
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補助金の研究課題番号 |
23H01291 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡部 朋永 東北大学, 工学研究科, 教授 (50344164)
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研究分担者 |
川越 吉晃 東北大学, 工学研究科, 助教 (00884199)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,780千円 (直接経費: 10,600千円、間接経費: 3,180千円)
2025年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | マルチスケールモデリング / 反応誘起相分離 / CFRP / ポリマーアロイ / 熱硬化性樹脂 / 熱可塑性樹脂 / 熱硬化/熱可塑樹脂 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、相分離構造を有するネットワークポリマーアロイを母材に用いた炭素繊維強化複合材料の特性発現機構を、計算・実験・データ科学による複合アプローチによって解明し、新規材料探索を行う。まず、相分離構造を有する複合材料向けネットワークポリマーアロイ、特にエポキシ樹脂の反応誘起相分離をシミュレーションによりモデル化し、実験・計測結果と照らし合わせて、その構造形成メカニズムと力学特性を明らかにする。これらの知見をマクロスケールと接続し、炭素繊維とネットワークポリマーアロイからなる複合材料の力学特性を計算・実験的に評価する。最後に得られた知見とデータ科学を駆使し、実用的新規複合材料探索を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では反応誘起相分離樹脂を母材とした炭素繊維強化複合材料のマルチスケールモデリングおよび最適材料探索を行う.本年度は熱硬化性樹脂としてdiglycidyl ether of bisphenol A (DGEBA)/diamino diphenylmethane (DDM),熱可塑性樹脂としてpoly(ether sulfone) (PES)をモデル材として,熱硬化/熱可塑ブレンド系の散逸粒子動力学法による反応誘起相分離シミュレータの構築,全原子分子動力学法による単成分樹脂物性評価,および反応誘起相分離実験を実施した. 反応誘起相分離シミュレータでは量子化学計算で熱硬化性樹脂DGEBA/DDMの反応パラメータ(活性化エネルギーと生成熱)を取得し,全原子分子動力学法にて粗視化パラメータを同定した.これらパラメータを用いて反応散逸粒子動力学法を実施し,反応誘起相分離の再現に成功した.熱可塑樹脂PESの添加量,分子量,加熱速度によって形成される相分離モルフォロジーが変化することを確認し,その傾向は概ね実験と対応した. また,全原子分子動力学法を用いてDGEBA/DDMおよびPESそれぞれ単成分樹脂の力学特性(強度・剛性)および熱物性の予測を行った.実験値・文献値に対してまだ誤差はあるものの,手法としての確立は完了したと考えている. 実験ではDGEBA/DDM/PES混合系の反応誘起相分離のin-situ観察および硬化樹脂の力学特性・熱物性評価を実施した.in-situ観察では海島状の相分離構造が確認でき,加熱速度によって相分離開始温度が異なった.力学試験では熱可塑添加によって剛性は単調増加したものの,強度や破断ひずみは異なる応答が見られ,これらは内部で形成されている相分離モルフォロジーに依存していると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応誘起相分離樹脂のマルチスケールモデリングの根幹となる散逸粒子動力学法による相分離シミュレータが構築でき,関連内容で論文が2編公刊された.また,実験においても高水準の相分離観察および樹脂力学特性評価が可能になり,今後解析との比較・検証が大いに期待できる. 以上より,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
初年度において分子スケールのシミュレータ構築は概ね完了した.これらツールの精緻化は今後も進めるが,2年目以降は主に樹脂物性、相分離モルフォロジーを微視的有限要素法へ接続したツール構築を行う。これにより樹脂物性およびモルフォロジーによる相分離樹脂の特性発現メカニズムを明らかにする。さらに積層板スケールの有限要素法へ接続し、変形・破壊解析を行いマルチスケールモデリングを完成させる。また、相分離樹脂とノンクリンプファブリック繊維を複合化することで、相分離樹脂を有する複合材料の作成にも取り組み、解析との比較・検証を行う。3年目では樹脂種や積層構成のバリエーションを増やし、各種特性予測の精緻化をはかる。また、より良い特性発現のための相分離モルフォロジーの制御にも取り組む。さらにこれまでに蓄積されたデータを自己組織化マップおよびベイズ最適化を用いたデータ科学手法によりあらゆる特性が高水準を満たす材料開発指針の提案を目指す。
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