研究課題/領域番号 |
23K26029
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補助金の研究課題番号 |
23H01334 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原田 周作 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80315168)
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研究分担者 |
田中 洋介 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (80509521)
山本 恭史 関西大学, システム理工学部, 教授 (90330175)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
15,080千円 (直接経費: 11,600千円、間接経費: 3,480千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 微粒子分散系 / 混合 / 集団運動 / 界面不安定 / 流体力学的混合 / 濃度界面 / 微粒子 / 集団性 |
研究開始時の研究の概要 |
液体中に分散した微粒子群は,粒子間の流体力学的相互作用によって1つの連続体のように集団的にふるまうことがある.このような液中微粒子の集団性は,濃度の不連続面(濃度界面)の遮蔽性が大きく関与することが明らかになっている.本研究では,さまざまな流動条件下において粒子群の集団運動にともなって生じる大規模な混合現象 (巨視的混合) と,個々の粒子スケールでの混合現象 (微視的混合) の関係性を明らかにする.それぞれの混合速度を定量的に表し得る物理モデルを構築し,従来の物質の混合現象とは全く異なる流体力学的なアプローチによって,液中微粒子の混合現象に関する根本的な理解を試みる.
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研究実績の概要 |
微粒子分散系の濃度界面で生じる流体力学的混合の解明を目的とした研究を行った.個々の粒子スケールで生じる微視的混合と,集団運動のスケールで生じる巨視的混合の関係性について調べるために,紫外線を照射させることにより異なる波長で蛍光する特殊な微粒子を2種類作製し,外部からUVレーザーを照射することで液体中における異種粒子の混合挙動を調べた.濃度の不連続面が形成されるような粒子沈降実験装置を作製し,不連続面近傍の粒子混合挙動を撮影した.得られた実験画像を分光して粒子の判別を行うことにより,粒子の巨視的な混合距離を定量化した.その結果,粒子の混合距離は,理論的に導出された微粒子の集団性および沈降速度比を含む無次元数によって定量的に予測可能であることを実験的に確認した. さらに,複雑形状を有する流路中の微粒子分散系の集団性と濃度界面挙動について調べることを目的として,屈折率マッチング法とレーザースキャニング法を併用した微粒子濃度界面の3次元形状測定システムを開発した.任意の空隙サイズを有する複雑流路を作製するために,スピノーダル分解の数値解析を行った.数値解析結果を利用して,種々の水力平均直径を有する多孔質状の複雑流路を設計し,透明レジンを材料として3Dプリンティングにより供試体を作製した.また空隙を飽和させる液体の屈折率を調整することで流路部を透明化し,下部から照射したシート状レーザーをスキャンすることにより複雑流路内部の微粒子挙動の観察を可能とした.開発した測定システムを用いて,濃度界面を伴う微粒子沈降実験を行った.その結果,濃度勾配が重力と逆方向に正となるような条件での微粒子沈降は,粒子直径や濃度に大きく依存し,特定の空隙部分を微粒子が集団的に沈降するなど複雑な挙動を示すことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である「流体力学的混合の解明」に関して,紫外光により蛍光する特殊な粒子を用いた粒子混合実験装置および測定システムの開発および改良を行った.UVレーザーシステムを含む実験装置の製作および複数の蛍光粒子の作製を行い,濃度界面近傍の混合挙動を撮影することに成功した.現段階では,撮影画像を分光して判別した粒子の輝度情報から,画像解析によって局所的な粒子体積濃度を定量化することを試みており,この試みは順調に進展している.さらに,実験と対応する流体力学的混合の数値解析を広範な条件範囲で実施した.実験結果と数値解析結果を比較することにより,微視的混合と巨視的混合の推移メカニズムの検討を行い,混合メカニズムに関する一定の知見を得た.上記のように,本課題は当初の研究計画通りに実施されており,既に複数の学会で研究成果の発表を行った. さらに,より複雑な系における液中微粒子の流体力学的混合について調べるために,複雑流路中における新しい微粒子挙動の測定システムの開発を試みた.複雑流路中の微粒子の濃度界面挙動を非接触で測定可能な実験装置および測定システムの開発を試み,成功した.現在は,開発したシステムを用いて種々の集団性を有する微粒子分散系の濃度界面挙動を追跡し,複雑流路中において濃度界面の遮蔽性が微粒子の集団運動に与える影響について調べている.微粒子分散系の濃度界面挙動に関する実験装置の開発によって,研究計画よりもより複雑な系での実験が遂行可能となった.この新しい測定システムに関して論文を執筆し,既に国際的学術誌に掲載された. 上記のように,本課題では概ね順調に研究が遂行されたと判断している.得られた研究成果は,引き続き国内外の学会で発表を行い,国際的学術誌に投稿する.また学術講演会や産学官連携イベントなどで積極的に公表を行い,研究成果の普及に努める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である「流体力学的混合の解明」に関して,現在までに実験装置の製作,測定システムの構築および数値解析を予定通り行い,順調に進展している.今後は,撮影画像の分光によって得られた粒子の輝度情報から,局所的な粒子体積濃度を定量化することが当面の課題である.また粒子の判別を高度化し,PIV (Particle Image Velocimetry) による濃度界面近傍の粒子の相対運動の定量化と微視的混合度の算出を行うことが最終的な目標である.これらの課題を遂行するために,画像取得システムと画像解析手法の高度化を検討することが重要であると考えている. また,複雑流路中における微粒子の濃度界面挙動と流体力学的混合に関する数値解析コードを現在作製中である.これは粒子間の流体力学的相互作用を適切に表現して空隙中の粒子運動を解析する新しい試みであるが,境界条件の取り扱いに課題があり,現在,予備計算を行うなど継続して検討を行っている.今後,問題の解決が難しいと判断された場合は,より簡便な方法を用いた数値解析手法への変更も検討する予定である.さらに,多孔質体のような複雑流路中において微粒子濃度界面で生じる界面不安定に関する理論解析の検討も行っており,これに関しても継続的に研究を行っていく. 次年度以降は,既に構築済みの実験装置および測定システムを用いて,より広範な条件で実験を遂行する予定である.実験および数値解析結果から粒子混合度の定量化と混合メカニズムの解明を目指し,得られた成果に関して,国内外の講演会での発表や投稿論文による発信を随時行っていく.
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