研究課題/領域番号 |
23K26059
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補助金の研究課題番号 |
23H01364 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉浦 広峻 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10844805)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2025年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
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キーワード | MEMS / 水晶振動子 / 力計測 / 高周波デバイス / バイオ応用 / 高精度センサ / 高感度センサ / 力センサ / 細胞組織計測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,水晶振動子を用いた生体サンプルの力計測プロービング技術の基盤を創生する.従来技術として持ち合わせていた水晶振動子の力計測技術を更に先鋭化し,特に感度,応答性,精度,ダイナミックレンジについて,モード局在化振動子の構築や,HighSpeedPLLを用いた高速サンプリングなどの技術基盤を確立することで,従来到達し得ない次元のバイオセンシングの手段を提供する.これにより,蛍光標識では対応できない力学作用評価を伴う生化学現象の評価現場に,高性能な機械的なプローブイメージング技術の技術を提供する.また,例えば病変モデルを有する組織モデルおける,病理動態現象の発現因子のメカニズム解明などをすすめる.
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研究実績の概要 |
本研究では,水晶振動子を用いた生体サンプルの力計測プロービング技術の基盤を創生する.従来技術として持ち合わせていた水晶振動子の力計測技術を更に先鋭化し,特に感度,応答性,精度,ダイナミックレンジについて,モード局在化振動子の構築や,HighSpeedPLLを用いた高速サンプリングなどの技術基盤を確立することで,従来到達し得ない次元のバイオセンシングの手段を提供する.これにより,蛍光標識では対応できない力学作用評価を伴う生化学現象の評価現場に,高性能な機械的なプローブイメージング技術の技術を提供する.また,例えば病変モデルを有する組織モデルおける,病理動態現象の発現因子のメカニズム解明などをすすめる. 本研究では,特に水晶振動子をトランスデューサをとして用いた,超高精度,超高速,マルチスケール力計測プローブによる次世代細胞組織プロービングの基盤技術創生を目標とする.近年,人体の病理解析モデルやIn-vitro創薬試験プラットフォームとして,オルガノイドなどの培養組織の解析が注目されている.当該分野では,蛍光標識では対応できない力学作用評価を伴う病理解析のため,機械的なプローブイメージング技術の技術革新が急務である.そこで,高いひずみ感度を有する水晶を用いて,次世代のMEMS加工,計測,システム統合基盤技術を創生することで,超高感度,高速応答,マルチスケーラビリティが実現可能な水晶振動式力センサプローブを実現する.応用先として,例えば病変モデルを有するオルガノイドおける線維化などの,明示的な病理動態現象の発現因子の探索や,そのメカニズムの解明などをすすめる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水晶振動子の力センシング技術要素技術の立証に重点をおいて研究を進めた.具体的には,水晶振動子のから生起される不要モードの抑制,振動の局在化低ノイズ化に関するあらゆる手法を模索する.とくに,水晶を機械,電気的に連成状態とした,モード局在化技術,ならびに,高速サンプリングに必要なHighSpeedPLL統合型の振動子,トランスデューサ技術などについて,理論検証,実験的評価を進めた. PLLを用いた出力検出方式では,従来のレシプロカルカウント計測方式より,遥かに高速な1kHzオーダの周波数変調検出を実現した.また,これによって,細胞組織(オルガノイド)のプロービングを行い,組織の周波数応答性,ひいては粘弾性特性について,定量的な議論を行った.これらの結果は,MHS2023などの国際学会の口頭発表や,各種アウトリーチにて説明を行ったほか,現在学術誌への寄稿を進めている. モード局在化振動子の構成においては,2対の振動子の電気的,機械的な結合状態と,それによって励起されるモード,およびその出力(振幅,位相,周波数,励起入力電圧の変調)について,それぞれ体系的な検討を行った.とくに,振動モード解析に重点をおき,FEMによるモードカップリングの評価を可能とする手段の開拓を進めた. また,水晶振動子の加工方法についても見直しを行い,例えば水晶振動子の直接接合技術などの評価を進めた.結晶材料の固有の接合プロセスの問題,たとえば,加熱圧縮行程における結晶構造の非破壊的プロセスの確立,ヒドロキシ基による接合時の余剰水分子の排出パスの形成,プラズマ誘起の表面活性化特性などを検証した.これらの結果は,ROBOMECH2023, 2024や,各種学術誌への寄稿を進めているほか,知財化も並行して進めている.
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今後の研究の推進方策 |
PLLを用いた出力検出方式では,従来のレシプロカルカウント計測方式より,遥かに高速な1kHzオーダの周波数変調検出を実現した.さらに,中間周波数発振器を導入し,素子のばらつきを吸収しながら高速に検波する手段に関して,実現可能性の検証を行い,まずは知財化を進めている.また,高精度化やさらなる高速化を目的として,位相特性の異なるフィルタを介して,PLLのPFDゲインを動的に制御する手段や,DC電圧制御を介さない直接的な周波数復調技術を取り込むことで,さらなる応答の高速化を目指している.これにより,本研究の細胞特性計測のみならず,材料特性計測やロボット,産業応用など,多様な局面で実用的な,高精度力センサ技術を確立していく. また,モード局在化水晶振動子の解析が進んでいるため,本年度は実際の試作を行うとともに,その特性を評価していく.すでに高精度なスペクトラムアナライザ/位相ノイズアナライザ,VCOテスタを用意しており,振動モードの干渉状態の評価や,各モードの位相ノイズ評価なども実現できる状況にある.さらに,これらの解析技術を用いて,水晶振動子の高周波化を進めた際の,不要モード抑制寄稿について,さらなる検証を行い,素子の基礎特性の向上なども目指していく. 細胞特性計測用の実験はすでに1フェーズ完了しており,今後は細胞特性計測の結果に関する議論に着目した,高インパクトファクタのジャーナルへの寄稿を推進するほか,実用性のあるセンサとして,より広く学術界,産業界に普及するような,力センサの基盤技術開拓を進める.
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