研究課題/領域番号 |
23K26072
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補助金の研究課題番号 |
23H01377 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
新竹 純 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (10821746)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2026年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
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キーワード | ソフトロボティクス |
研究開始時の研究の概要 |
繊維状の流体駆動ソフトアクチュエータは汎用性が高く出力も大きいが,外部的なポンプが必要であるため,ロボットの構成が複雑になりがちである.本研究では,内部的に統合できる,らせん状の電極を用いた繊維状ソフトポンプを提案し,その製造方法を確立する.そして,性能特性を実験的に明らかにし,モデリングとともに設計法を確立する.さらに,ソフトロボティクスへの有効性を実機の開発を通して実証する.本研究のらせん状電極を有する繊維状ソフトポンプは,次世代の流体駆動要素となって,様々なデバイスに適用されることにより,ソフトロボットの社会実装を大きく促進することが期待される.
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研究実績の概要 |
本研究は,らせん状電極を有する繊維状ソフトポンプの製造方法の確立,性能特性の解明,設計法の確立,およびソフトロボティクスへの有効性を実機で実証することを目的としている.本研究で提案する繊維状ソフトポンプは,シリコーンチューブと2本のらせん状電極から構成される.本年度は,主として繊維状ソフトポンプの製造方法の確立に取り組んだ.ここでは,ポンプの母体となるシリコーンチューブと電極材料および製作工程について,試作を通した検討を行い,液体状のシリコーンに丸棒を浸すディッピング手法によって,らせん状電極を有する繊維状ソフトポンプを製作できるようにした.また,圧力計や流量計からなる実験セットアップを構築し,印加電圧に応じた圧力と流量が,想定通りに出力されていることを確認した.その結果によって,ポンプの製造方法を確立できたことを確認した.さらに,前述の実験セットアップによってポンプの特性解析を継続し,特定の設計条件に対する性能を明らかにした.これらの成果は学術論文として出版するに至った. らせん状電極を有する繊維状ソフトポンプの作動流体を検討する過程で,磁性流体の変形が異種の流体を押すことによって,液体の輸送が行えることを着想し,さらにそうした流体同士の相互作用が推進力を生み出せることを見出した.この流体同士の相互作用力をロボットプラットフォームを用いて定量化したところ,興味深い挙動が得られた.これは本研究における副次的な成果であり,学術論文として出版するに至った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で提案する繊維状ソフトポンプは,シリコーンチューブと2本のらせん状電極から構成される.本年度は,主として繊維状ソフトポンプの製造方法の確立に取り組んだ.最終的に確立された製作方法は以下の通りである.まず,電極となるスズめっき銅線(直径0.32 mm)を2本,それらの間隔を一定に保ちながら,真鍮製の棒(直径4 mm,長さ100 mm)にらせん状に巻きつけた.この棒の直径がポンプの内径となる.銅線の巻き付けにはUV硬化性レジンの3Dプリント材料によってできた治具を使用した.次に,サンプル全体を液体状のシリコーンに浸して取り出し,オーブンで硬化させた.シリコーンはSylgard 184と Dragon Skin 30を1:3の割合で混合したものである.また,硬化時間は10分であり,温度は120 ℃である.このステップを4回繰り返した.そして,棒を取り外し,チューブと電極からなるポンプ構造の両端に,コネクターと導線を接続して繊維状ソフトポンプが完成した. 上述の製作方法が妥当であるかを検証するため,圧力計や流量計からなる実験セットアップを構築し,印加電圧に応じた圧力と流量が,想定通りに出力されていることを確認した.その結果によって,ポンプの製造方法を確立できたことを確認した.上述の実験サンプルを用いて,特定の設計条件(長さ100 mm,内径 4 mm)に対する特性解析を行った.測定された流量と圧力はそれぞれ167.4 mL/minと4.1 kPaであり,他研究に見られるソフトポンプと比較して,同等かそれ以上の出力を持っていることを確認した.特筆すべきは,これらの出力が40%の長さ歪みを与えても保たれている点で,これまでのソフトポンプより遥かに大きな変形状態で動作可能であることを確認した.さらに,本研究のポンプは長さ方向の変形を検出できるセンサとしても機能することが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,らせん状電極を有する繊維状ソフトポンプのより詳細な特性解析を行う.本研究のポンプの動作原理となっている電気流体力学では,例えば,電圧が高ければ出力が大きくなり,同じ電圧であっても電極の間隔が狭ければ強電場となるため高出力になる,というような関係が見出されている.本研究の繊維状ソフトポンプでも,こうした設計パラメータと性能の関係が成り立つのかを明らかにする.また,本研究のポンプ固有のパラメータとして,らせん電極の巻き角度があり,それが性能に及ぼす影響も明らかにする.具体的には,チューブの内径,電極の直径,電極の間隔,チューブの長さ,および電極の巻き角度をパラメータとしてポンプを製作し,特性解析を行う.並行して,ポンプの数理モデルを作成して,特性解析の結果に基づいた妥当性の検証を行う.この際,有限要素解析ソフトウェア(Abaqus, Dassault Systemes)でのモデリングも行い,数理モデルの妥当性が検証できるようにする.以上によって,ポンプの詳細な挙動の把握しながら,目的とする仕様のポンプを製作可能にする設計法を確立する.
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