| 研究課題/領域番号 |
23K26104
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| 補助金の研究課題番号 |
23H01409 (2023)
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| 研究種目 |
基盤研究(B)
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| 配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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| 研究機関 | 九州大学 (2024) 東京工業大学 (2023) |
研究代表者 |
實松 豊 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (60336063)
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| 研究分担者 |
大橋 正良 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 適応コミュニケーション研究所, 連携研究員 (50500154)
櫻井 幸一 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (60264066)
牟田 修 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (80336065)
篠原 克寿 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (50740429)
森 慎太郎 福岡大学, 工学部, 助教 (90734913)
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| 研究期間 (年度) |
2024-04-01 – 2027-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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| キーワード | 二重選択性フェージング / 通信とセンシング / 遅延・ドップラー推定 / レーダ / スペクトル拡散 / レーダー / ドップラー周波数 |
| 研究開始時の研究の概要 |
本研究では、海、空、宇宙空間における通信とセンシングを行う信号処理の基礎理論構築を目指す。海中音響通信や低軌道衛星通信で課題となるのは大きなドップラー周波数である。センシングでは物体までの距離を十分高い精度で測定することを目標とする。 本研究では、申請者らが過去に提案したGabor分割スペクトル拡散(GDSS)信号を拡張し、ドップラー周波数対策のための送信信号の設計、効果的なドップラー周波数の検出法、二重選択性フェージングの補償、高い時間周波数分解能を達成するとともに、MIMO通信/レーダまで構築することを目標とする。
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| 研究実績の概要 |
通信とセンシングの融合を実現するための最も基礎的な研究課題の一つは,強いドップラーシフトが生じる環境下において,信号同期を確立する手法の開発である.従来のレーダ方式には,チャープ信号,パルス圧縮方式,LFM方式など多様な手法が存在しており,それらとの融合には多くの技術的課題がある.本研究では,工学的応用を視野に入れつつ,数学的理論の構築を目指している.特に,フーリエ変換における遅延演算とドップラー演算の対称性,および両者の演算順序の非可換性に着目している. 今年度は,九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の共同利用制度を活用し,研究集会(I)「情報通信の技術革新のための基礎数理」(研究代表者:實松豊)を開催した.この研究集会では,通信とセンシングの融合が主要なテーマの一つとして取り上げられ,国内外の研究者と活発な議論を行った.本研究課題では,遅延・変調方式として Gabor Division Spread Spectrum(GDSS)方式の利用を想定していたが,近年 OTFS(Orthogonal Time Frequency Space)変調が OFDM に代わる通信方式の候補として国際的に注目されている.本研究の実施により OTFS と GDSS には多くの類似点が見られるが,波形やデータ信号,パイロット信号の構成に違いがあることが明らかとなった. OTFS方式には,遅延とドップラーに小数部分が存在する場合,推定精度が劣化し,結果としてチャネル補正が不十分となり,ビット誤り率の悪化を招く課題があった.本研究ではこの問題に対し,パイロット信号を適切に選択することで Ambiguity 関数が遅延およびドップラーに関して 2 重の sinc 関数で精度良く近似できることを示し,この性質を使って小数部分に対する推定精度を大幅に向上させることに成功した.
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ambiguity関数の中心部分を2重のsinc関数で近似することで,小数遅延・ドップラー推定を行う手法に関する研究成果は,電子情報通信学会無線通信(RCS)研究会[依頼講演]で一部公表され,さらに2025年度の国際会議にも採択された.OTFS方式においても,OFDMと同様にMIMOアンテナを用いたMIMO-OTFSは極めて有望である. 今年度に開催した研究集会「情報通信の技術革新のための基礎数理」では,参加者である松本正・北陸先端大名誉教授から有益な示唆を受け,アレイアンテナを用いた到来角推定の検討を行った.本研究集会は研究の促進を目的として開催されたものであり,松本氏との交流はその目的に合致した重要な成果であった. 到来角の情報が得られれば,混合波を分離することが可能となり,マルチパス環境下における遅延・ドップラー推定において,シングルアンテナと比べてマルチアンテナアレイの優位性が明確になる.実際の検討により,送信信号がOFDMであってもOTFSであっても,到来角推定における性能差はほとんどなく,いずれの方式でも有効な推定が可能であることが確認された.この結果は,2025年3月の通信方式(CS)研究会で報告した.さらに,多くの場合に矩形窓が用いられているが,窓関数を工夫することで小数遅延・ドップラー推定における計算量が大幅に削減できることが明らかとなり,その成果を2025年4月の研究会で公表した. 研究分担者の大橋は,「情報通信の技術革新のための基礎数理」および情報理論とその応用シンポジウムにおいて研究成果を発表した.また,研究分担者の牟田は,受信信号の強度に基づく距離推定手法において成果を得ている.このように,研究は順調に進展しており,検討すべき課題も当初より明確になりつつある.
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| 今後の研究の推進方策 |
令和7年度は,これまでの成果をさらに発展させるとともに,複数の技術要素を統合することで,一層の性能向上を目指す.まず,矩形窓に代えて他の窓関数を用いることで,遅延・ドップラーの小数部分における推定精度の向上を図る.この場合,隣接フレームとの間に生じるフレーム間干渉の抑圧が重要な課題となるため,その影響を考慮した詳細な検討を行う.次に,到来角推定と遅延・ドップラー推定の統合を進める.到来角の情報を併用することで,遅延・ドップラー推定の精度向上が期待される.この方向性に関する先行研究も存在するが,小数部分の推定精度や計算量の面において,依然として課題が残る.本研究で用いる手法は,これらの点で優位性を有すると考えられる.さらに,これまで距離推定は主に遅延時間に基づいて行ってきたが,牟田教授の手法により,信号強度の減衰量から距離を推定する方法も可能であることが示されている.この手法の実装には,低演算量での統合が求められ,今後の重要な検討課題となる.加えて,遅延・ドップラー・到来角などの複数のパラメータを同時に高精度に推定する手法として,機械学習,特にディープラーニングの導入を検討する.教師信号としてパイロット信号を活用し,複雑なマルチパス環境や干渉環境下でも高精度な推定を可能とするモデルの構築を目指す.このアプローチは,従来手法では困難であった非線形関係のモデル化や,小数部分の推定精度向上にも有効であると期待される.
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