研究課題/領域番号 |
23K26107
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補助金の研究課題番号 |
23H01412 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山田 寛喜 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20251788)
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研究分担者 |
佐藤 亮一 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (00293184)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
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キーワード | MIMOレーダ / 合成開口レーダ / 逆合成開口レーダ / イメージングレーダ / ミリ波レーダ / MIMOアレー / 仮想アレー / センシング |
研究開始時の研究の概要 |
この研究は仮想アレー手法を用いて,少ない送受信アンテナにより2次元アレーアンテナを実現したMIMOレーダを開発し,人物などの3次元準リアルタイムイメージングの実現を目指したものである.具体的には1m程度のターゲットにおいて数cmの分解能実現,および2~3m離れた人物を10cm以下の空間分解能でイメージング可能なレーダの実現を目指している.これは,大型施設における入場者のウォークスルーな危険物検出を実現するものである.さらに逆合成開口レーダと呼ばれる信号処理を導入し,ターゲット(人物等)の移動などを利用した更なる高分解能化を目指している.
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研究実績の概要 |
この研究は,人物の行動・往来を妨げないウォークスルーセキュリティチェックを実現するためのミリ波3次元イメージングセンサを実現することを目的としている.近年,多数の人々が利用する電車や集会等における危険物(銃刀等)による事件が頻発しており,安心・安全実現のために,それらを未然に防ぐ手段の構築が社会問題となっている.本研究では,先行研究で開発したミリ波帯におけるMIMOイメージングレーダをさらに改良し,人物の動きを利用した逆合成開口処理(ISAR)を併用することにより,映像化性能の向上のみならず利便性を高めた高分解能3次元イメージングを目指している点に特徴がある.人物のような形状の変化を伴う近傍ターゲットへのISARの応用は,ミリ波帯センサの利用促進に寄与し,カメラ等の既存センサとのセンサフィージョンによる豊かで安全な生活環境実現のための要素技術の一つとして重要なものである. ミリ波は波長が短く,また動きのある人体がターゲットとなるため,散乱現象を計算機により正確に模擬することは困難,かつ膨大な計算時間を要する.そこで,実験による検証も並行して行うようミリ波3次元イメージングセンサの設計,開発を実施した.ここでは現在実現容易な12送信,16受信時のMIMOレーダにおいて,我々が考案した仮想アレー手法の適用時に分解能が最大となる素子配置を導出し試作した.このレーダは1m程度の距離のターゲットにおいて理論上1cm程度の空間分解能を実現する現有するレーダにおいても最高分解能を有するものである.併せてレーダの誤差補正において問題となる回路内部の遅延補正,校正用ターゲットの設置誤差を考慮した校正手法も考案した.また,次年度以降のデータ評価の処理において問題となる計算負荷を軽減するため,レンジマイグレーション処理と呼ばれる近傍時の高速化処理を実装し,次年度以降の研究の円滑な実施に整えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画は信号処理理論の構築として,「シナリオに最適化した素子配置および制御法等の設計理論の確立」と「近距離用SAR/ISAR-2次元KR-MIMOレーダの設計及び開発」が最も重要な課題であった.近距離(1m以内)および中距離の人物(2-3m程度)を想定し,それらに対して12送信,16受信の制約下で分解能を最大化する素子配置を導き,MIMO動作の下で連続送信するアレーを設計し,試作を依頼した.製作の遅延により納期が当初より遅れたものの,年度内に納品され,設計通り良好に動作することを確認済みであり,予定通りに完了している. なお,動作評価において,アレー誤差のみならず給電線路長の補正およびキャリブレーション用ターゲットの設置誤差の影響を無視できないことが判明した.そのため,これらの誤差パラメータを含めたキャリブレーションを行うアルゴリズムを考案し,計算機シミュレーションにより,その精度を確認した.実験における有効性の確認(実証実験)は2024年度に実施する予定である. また,近距離ターゲットのイメージングにおいては,球面波伝播の影響を考慮したイメージングが不可欠となる.従来までは球面波を想定したフーリエ変換に基づく処理を行っており,その計算負荷が非常に大きく,研究推進の障害となっていた.その問題点を解決するため,レンジマイグレーション処理を導入した高速処理法を実装し,1/10~1/100(解析領域に依存)の計算時間での処理を実現した. さらに,「ミリ波人体散乱電磁界シミュレーション用人体モデル構築」に関しては,ミリ波レーダシミュレータWaveFarerを導入し,シミュレーション用の人体モデルとしては情報通信機構のディジタル人体モデルを用いることとし,任意の姿勢の計算機シミュレーションの実行を可能とする環境を構築した.
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今後の研究の推進方策 |
試作したレーダによる近距離,中距離イメージング実験および計算機シミュレーションによる比較検討により,イメージングアルゴリズムの改良とISARアルゴリズムの導入を進める.具体的には,ISARの実現には,各部で異なる人体の動きを反映した効率の良い処理が不可欠である.従来のISARでは単一の動きのみを探索的に推定するものがほとんどであり,高速演算不可能である.ここでは,まず各部の動きのドップラを3次元的に推定することにより,動きの向きと大きさを推定する手法を確立し,ISAR前処理法として導入することを予定している.また,前年度実現したレンジマイグレーションよりは,通常のMIMOレーダ用であり,カトリ・ラオ処理を施したMIMOレーダに適用可能な手法は未だ開発されていない.今年度以降,そのアルゴリズムの開発に着手する.さらに,それらのアルゴリズムを用いたイメージング実験を行い,ユーザフレンドリーな可読性の高いイメージングセンサの開発を進める.
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