研究課題/領域番号 |
23K26113
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補助金の研究課題番号 |
23H01418 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
木寺 正平 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (00549701)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | 計測工学 / レーダ信号処理 / 電磁界逆散乱解析 / 複素誘電率推定 / マイクロ波乳癌診断 / 逆散乱解析 / レーダ画像化 / 信号処理 / 深層学習 / マイクロ波焼灼 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,マイクロ波による乳癌診断及び治療技術のためのレーダ方式とトモグラフィ方式を双方向融合した複素誘電率3次元イメージング法を構築に関するものである.従来の画像解析法はレーダ方式に基づくため,対象の複素誘電率を定量的に評価することができない.本課題では各組織の複素誘電率値を抽出するため,レーダ⇔トモグラフィ⇔深層学習の双方向融合という,全く新しい独自のアプローチを導入し,実現が困難とされる高精度3次元複素誘電率イメージング法を確立させる.本手法の有効性を,簡易乳房ファントム及び臨床試験データを用いて検証し,次世代マイクロ波医療診断技術の研究基盤を構築する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,マイクロ波による乳癌診断及び治療技術のためのレーダ方式とトモグラフィ方式を双方向融合した複素誘電率3次元イメージング法を構築することにある.本課題では各組織の複素誘電率値を抽出するため,レーダ⇔トモグラフィ⇔深層学習の双方向融合という,全く新しい独自のアプローチを導入し,実現が困難とされる高精度3次元複素誘電率イメージング法を確立させる. A:レーダとトモグラフィの双方向融合に基づく複素誘電率3次元イメージング:まずトモグラフィ方式で得られる最適化結果からレーダ方式での伝搬モデルを生成する理論的枠組みを完成させ,それを乳癌診断モデルにおいて確認した.同手法により,乳房組織の不均質性に起因する虚像を抑圧し,内部の乳腺及び癌組織のみを高精度に画像化することに成功した. B:深層学習に基づく癌組織識別とトモグラフィ方式との双方向融合:3次元的な複素誘電率イメージングを実現させるため,散乱データから直接的に複素誘電率を再構成する深層学習の枠組みを構築した.具体的には3次元畳み込みオートエンコーダを用いて各種の乳房モデルを学習させ,同エンコーダ部分をニューラルネットワークに置き換えることで,4次元散乱データから複素誘電率を再構成させる手法を提案し,その有効性を簡易ファントムを用いた実機実験により検証した. C:マイクロ波アブレーション(焼灼)のためのリアルタイム3次元画像化:計算効率と複素誘電率イメージングを実現させるため,到来時間差に基づく焼灼領域推定法とトモグラフィを統合させた.焼灼領域と誘電率変動の両方をパラメータとしてコスト関数を最適化することで,両者を同時に推定する方式を提案し,その有効性を数値計算例で示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A:レーダとトモグラフィの双方向融合に基づく複素誘電率3次元イメージング:トモグラフィ方式→レーダ方式の理論構築を完了させ,それを数値計算データにより検証している.これらは従来のレーダ画像化方式の本質的な問題点を解決する手法として,独自性・有効性の高いものである.更にレーダ→トモグラフィ方式の理論的枠組も構築がほぼ完了しており,同課題については順調に進捗していると判断できる. B:深層学習に基づく癌組織識別とトモグラフィ方式との双方向融合:3次元的な複素誘電率イメージングの実現において,深層学習を用いた手法を統合した.その際に,効率的な学習を実現させるため,3次元実空間データをフーリエ変換によって波数空間に変換し,同領域でフィルタ・次元圧縮をさせることで効率を高めた.また共通パターンを差し引くことで,内部の組織分布の差異により重みを付けた学習を実現させた.同手法は実際のレーダ装置で簡易ファントムを用いて、複素誘電率イメージングができることを実証しており,顕著な進捗が得られたと判断する. C:マイクロ波アブレーション(焼灼)のためのリアルタイム3次元画像化:計算効率と複素誘電率イメージングを実現させるため,到来時間差に基づく焼灼領域推定法とトモグラフィを統合させた.同手法においては,上記の統合アルゴリズムを複数の方法で試し,焼灼領域と誘電率変動を独立した変数として最適化することが最も適切であると判断し,その手法を採用した.同手法の有効性は,数値計算例でのみ実証しているが,理論的な部分の新規性は高く.その意味で今年度の進捗としては順調であると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
A:レーダとトモグラフィの双方向融合に基づく複素誘電率3次元イメージング:レーダ→トモグラフィ方式の理論的枠組も構築が完了させる.レーダ画像によるROI制限及び初期値推定法を導入し,トモグラフィによる複素誘電率推定精度を改善させる.また癌組織等の高コントラスト誘電率に対する高精度化のために、背景更新型のトモグラフィ法を導入する.また観測素子の配置の最適化も導入する.同手法の検証は,2次元及び3次元問題での電磁界解析データで検証し,有効性が確認できた段階で,実機実験データによる検証を進める. B:深層学習に基づく癌組織識別とトモグラフィ方式との双方向融合:深層学習による3次元複素誘電率再構成結果について,物理的な整合性・信頼性を高めるために,トモグラフィ方式との統合を図る.深層学習での結果を初期値として,トモグラフィ方式に入力し,最適化することで,電磁界散乱場として物理的に適切な解に導くことができる.また臨床試験データへの適用,敵対性生成ネットワークなどを導入することで,教師データを増大させ,良性悪性の判断,サイズ,湿潤性などのより高次な情報を識別できる手法へ発展させる. C:マイクロ波アブレーション(焼灼)のためのリアルタイム3次元画像化:到来時間差に基づく焼灼領域推定法とトモグラフィを統合させた手法において,3次元電磁界シミュレーションデータによる評価を実施する.3次元問題を解くには計算時間が膨大となり,実際の応用に対応させることが難しいため,円形のリングアレイによる観測モデルを導入する.マイクロ波焼灼においては内部に挿入するプローブの位置が凡そわかっているため,同プローブを含む高さの断面での複素誘電率イメージングが実現できれば,リアルタイム性と複素誘電率イメージングを両立させることが可能となる.3次元数値計算データと簡易ファントムを用いた実機実験による検証を予定している
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