研究課題/領域番号 |
23K26121
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補助金の研究課題番号 |
23H01426 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
荒川 貴博 東京工科大学, 工学部, 准教授 (50409637)
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研究分担者 |
三林 浩二 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (40307236)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | バイオセンサ / 生体計測 / 酵素 / イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
創傷部位や滲出液中に存在する細胞や細菌の代謝で発生するガス成分に含まれる揮発性化学情報の高感度・選択的な画像化を目指した研究である。創傷部位の治癒過程において、細胞や細菌の代謝に伴い皮膚ガスとして放出されるガス成分はその濃度が時間的に大きく変動する。これをリアルタイムで画像化する生体ガス情報のイメージングが可能となれば、ガスの発生部位の特定や濃度の連続測定が可能な非侵襲な創傷治癒の評価法として応用が可能となる。創傷部位の代謝で生成する揮発性化学成分を、酵素を固定化したドレッシング材とバイオイメージングシステムにより情報化が可能なモバイル計測システムを構築する。
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研究実績の概要 |
本研究計画は3つの要素技術確立(2023~2024年度)、要素技術を集積化・機能化したイメージングシステム構築(2024~2025年度)と疾患スクリーニングへの応用(2025年度)のスケジュールで研究を進めている。 2023年度は、基盤技術である複数成分の同時イメージングシステムの開発を実施した。アセトンとアンモニアのように創傷部位の治癒状態の変化に関連する複数のガス成分を同時に可視化計測するイメージングシステムの構築を行った。複数成分のイメージングのため、異なる機能を有する複数の繊維材料を物理的に複合するエレクトロスピニング技術や繊維に直接加工する手法を用い、複数の酵素や異種材料を複合したメッシュ構造を作製した。研究設備として導入した高圧電源装置を用いて、エレクトロスピニング装置を開発した。装置を用いてメッシュを作製し、繊維材料表面に微細なメッシュ状の膜の作製に成功した。生体適合性材料としてキトサンを用いたセンサデバイスの作製に成功し、学術誌に掲載された。キトサンを活用したメッシュデバイスの作製を進めている。 マイクロ流体デバイスとバイオセンシング技術の基礎検討を行った。マイクロ流路中に生体ガスを模した標準ガスを導入し、微細な流路内でのイメージングを行ったところ、酵素反応に伴う蛍光強度の変化を計測することが可能となった。生体の皮膚表面の装着に適したマイクロ流路のデザインや材料について検討を進めている。 分担者とは生体計測に向けたバイオセンサのデザイン、材料について打ち合わせを行い、プロトタイプデバイスの作製を行った。基礎特性の評価を分担者のイメージング装置を活用して評価を行った。 研究計画に沿って順調に研究を進められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度はイメージングシステムの開発を実施した。複数成分のイメージングのため、異なる機能を有する複数の繊維材料を物理的に複合するエレクトロスピニング技術や繊維に直接加工する手法を用いた評価を行った。研究設備として導入した高圧電源装置を用いて、エレクトロスピニング装置を開発した。シリンジポンプにポリマー材料(ウレタン、ポリビニルアルコール、キトサンなど)、導電性の炭素材料などイメージングに適していると検討した材料を用いて、導入流量、印加電位(1 kV~20 kV)、シリンジポンプから基板までの距離などの条件を最適化し、直径300 nmから1000 nm程度の微細なメッシュ状構造を実現することができた。今後はこの技術を活用してイメージングへと展開する。また、生体適合性材料としてキトサンを用いたバイオセンサを作製し、溶液系において有用性を評価したところ、従来のポリビニルアルコールを用いたセンサと比較して安定した動作を確認することができた。この研究結果は学術誌において発表した。 マイクロ流体デバイスとバイオセンシング技術の融合研究に関する基礎検討を実施した。PDMS製のマイクロ流路中に生体ガスを模した標準ガスを導入し、微細な流路内でのイメージングを行ったところ、酵素反応に伴う蛍光強度の変化を計測することが可能となった。感度としては数十マイクロmol/L程度であったため、更なる高感度化が必要である。紙製のマイクロ流路の作製方法についても新規に開発を進め、自家蛍光を抑えたイメージングに成功した。生体の皮膚表面の装着に適したマイクロ流路のデザインについて検討を進めている。 分担者とは生体計測に向けたバイオセンサのデザイン、材料について打ち合わせを行い、プロトタイプデバイスの作製を行い、基礎特性の評価を分担者のイメージング装置を活用して評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画は3つの要素技術確立(2023-2024年度)、要素技術を集積化・機能化したイメージングシステム構築(2024-2025年度)と疾患スクリーニングへの応用(2025年度)のスケジュールで研究を進める。確立を目指す要素技術として、①複数種のガスのイメージングシステムの構築、②3次元の酵素マトリクスを用いた創傷部位貼付用ドレッシング材料の開発、③ドレッシング材とマイクロ流体システムを融合したバイオセンサの検討を行い、長時間安定評価が可能な生体ガスイメージングデバイスを実現する。①~③の要素技術を応用して、④創傷治癒診断装置を開発し、被験者を用いた評価へと展開し、簡易診断への実用化を見据えた研究を推進する。 ②-1三次元の酵素マトリクスを用いたドレッシング材の開発を行う。コア・シースファイバーメッシュをガス透過性のあるドレッシング材の上に積層して三次元構造を構築し、揮発性有機化合物と酵素反応による化学発光・蛍光を用いた三次元イメージングを試みる。 さらに、②-2シャッター同期式読み出しによる三次元空間分布の取得を行う。ドレッシング材に3Dマトリクスを用いて三次元のVOCs時空間分布を取得するため2Dメッシュを集積した3Dマトリクスを1枚ずつ、カメラのシャッターと同期して発光させ断面図を取得する手法を開発する。③ドレッシング材とマイクロ流体システムを融合したバイオイメージングの検討を行う。反応試薬、酵素機能、出力の安定化に関わる緩衝液を供給できるような並列マイクロ流路とイメージングに用いるバイオセンサを一体とした系を構築する。 分担者とは生体計測に向けたバイオセンサのデザイン、材料について打ち合わせを行い、バイオセンサの作製を行う。作製したセンサを用いた基礎特性の評価および生体計測においては、分担者の研究設備を活用して評価を行う。
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