研究課題/領域番号 |
23K26131
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補助金の研究課題番号 |
23H01437 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 威友 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 准教授 (50343009)
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研究分担者 |
赤澤 正道 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 准教授 (30212400)
三好 実人 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30635199)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
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キーワード | 窒化物半導体 / 界面制御 / トランジスタ |
研究開始時の研究の概要 |
次世代無線通信用増幅器として期待されている窒化ガリウム(GaN)系トランジスタの高性能化には、電流の漏れを抑止する絶縁膜をゲート金属と半導体界面に挿入する構造が有望であるが、絶縁体/GaN系材料の物性は未解明である。本研究では、種々のGaN系材料界面について、その電子状態と電子伝導特性がトランジスタ特性に与える影響を明らかにし、GaN系トランジスタの動作安定性の向上と高性能化を目指す。低損傷加工技術を駆使したトランジスタの試作と、その動作の実験および理論的解析を進め、より広い電圧駆動領域で安定動作する「マルチチャネルトランジスタ」の開発につなげる。
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研究実績の概要 |
(1) AlGaN/GaNヘテロ構造に対して界面準位の発生を抑制する絶縁体界面形成法を確立するために、AlGaN/GaNヘテロ構造に対して表面の電子状態を評価した。X線光電子分光(XPS)法によりAlGaN表面状態を分析した結果、結晶成長条件の違い(基板材料の違いによる成長条件の最適化状況の違い)により、フェルミレベルのピンニング位置が異なることを明らかにした。また、そのピンニング位置の違いに対応し、AlGaN表面に形成したオーミック電極の接触抵抗が増減し、さらに異常なピンニング位置を示したAlGaN表面に対して光電気化学エッチングを5 nm実施すると、接触抵抗は正常値に戻るように低減することを明らかにした。これは、結晶成長直後の表面状態が電極の電気的特性に影響を与え、その特性改善には光電気化学エッチングが有効であることを示す結果であり、ゲート絶縁膜界面形成条件の最適化に関する有用な知見を得た。 (2) GaNおよびAlGaN表面に対して光電気化学酸化を利用した低損傷エッチングに取り組み、1 nm/min程度の低速エッチングを実現した。またエッチング溶液のpH値によって加工後の表面状態は大きく異なり、酸性溶液を利用した時に平坦性が最も良いことを明らかにした。中性溶液では、母体材料であるAlOxおよびGaOxが表面に形成されることをXPS分析により明らかにした。 (3) AlGaN/GaNヘテロ構造上に作製したMISキャパシタの容量-電圧(C-V)評価により、2つの界面(絶縁膜/AlGaNとAlGaN/GaN)の電子密度分布を算出した。計算機シミュレーションによる理論解析の結果、AlGaN/GaN界面の2DEGチャネルが空乏し始める順方向ゲート電圧領域で絶縁膜/AlGaN界面に電子チャネルが形成される様子が確認され、実験結果をよく説明できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初に計画していた3つの重点目標について進捗があり、学術雑誌2件、国内外の学術会議14件(うち招待講演2件、基調講演1件)で成果を公表することができた。また、当初予定していなかった電気化学酸化による絶縁膜の形成可能性についても知見を得ることができ、本研究の発展につながる波及効果が一部見られた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)窒化物半導体絶縁膜界面の電子準位評価と制御:窒化物半導体(GaN, AlGaN etc.)上に形成した絶縁膜界面の容量-電圧(C-V)特性から界面電子状態を明らかにし、ギャップ中準位を低減する界面形成プロセスを開発する。その物理的理解を進めながら形成条件を最適化するため、対象とする窒化物半導体の伝導型は、n型のみならずp型も対象とし、伝導体近傍および価電子帯近傍の評価を行う。またミッドギャップ近傍は光支援C-V法を適用し、ギャップ中準位密度を算出する。界面形成プロセスには、光電気化学エッチングによる表面清浄化および原子層堆積(ALD)法によるシリコン系絶縁膜、Al2O3を第一候補として進める。また、今年度得られた知見から電気化学酸化膜により形成される母体半導体材料の酸化膜の適用可能性についても検討を進める。 (2) 窒化物半導体に対する低損傷エッチング法の開発:AlGaN/GaNヘテロ構造の電気化学エッチングを、上層AlGaN層から下層のGaN層まで精密な深さ制御に対応させるため条件を最適化する。特に下層のGaNに到達した後のエッチングレートは、AlGaN層と比べて高くなることが予想されるため、溶液のpHや濃度および光照射条件を系統的に変えて調査する。また、同時に表面モホロジーにも留意して条件最適化を進める。 (3) AlGaN/GaNヘテロ構造上MISゲート電極の電気的特性評価:通常のAlGaN層より厚め(例えば40 nm)に結晶成長したAlGaN/GaNヘテロ構造を電気化学エッチングにより薄層化して異なる層厚のトランジスタを試作し、AlGaN厚さと電気的特性との相関(2DEG密度、移動度、閾値電圧etc)を明らかにする。これにより、準バイアス領域において、絶縁膜/AlGaN界面に流入する電子数を見積もり、2つのチャネル形成を制御するための知見を得る。
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