研究課題/領域番号 |
23K26132
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補助金の研究課題番号 |
23H01438 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
長浜 太郎 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20357651)
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研究分担者 |
岡林 潤 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70361508)
本多 周太 関西大学, システム理工学部, 准教授 (00402553)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2025年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
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キーワード | スピントロニクス / 酸化物エレクトロニクス / 磁性酸化物 |
研究開始時の研究の概要 |
スピントロニクスは現在、主な機能は強磁性トンネル接合で観測されるトンネル磁気抵抗効果を用いた抵抗変化素子に限定されている。今後の超省電力動作素子や増幅素子の実現には、コンデンサやダイオードといった電子素子にスピン機能を組み合わせ、新たな機能デバイスを実現することが不可欠である。本研究では半導体的な伝導と高い磁気転移温度を持つスピネル型酸化物磁性体に着目し、機能発現に重要な鍵となる界面特性を様々な観点から検討し、その制御法を開発する。このような新たな酸化物スピントロニクス素子を実現させることで、超省エネルギー素子や新型論理素子などの革新的新機能素子実現の道を拓く。
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研究実績の概要 |
本研究課題は磁性酸化物であるFe3O4やNiCo2O4を用いて接合素子を作製、磁性及び伝導特性を解明するとともに新機能デバイスとして開発を進めるものである。本年度は反応性MBEによるFe3O4/NiCo2O4の製膜法を確立することを目的とした。予定外の事項として長浜が北海道大学から山口大学へ異動となったため、特に今年度の前半は研究室および実験装置類の異設に注力した。製膜装置や磁気伝導測定装置などの主要な装置を山口大学に移送するとともに、装置の立ち上げなどの研究環境の整備を行った。 また本研究課題において重要な材料であるFe3O4を含んだトンネル接合に関して、その伝導メカニズムに関する検討を行った。特に絶縁層として結晶性のMgOを有する場合とアモルファス構造のAlOを有する場合で、トンネルメカニズムに違いがあるのかどうか調べた。一般的な金属系TMR素子では電極の伝導電子はs電子であるが、Fe3O4電極内の電動を担っているのはd電子である。そのため結晶性の障壁層であったとしてもコヒーレントトンネルは起こらないように思われるが、バンド計算からはコヒーレントトンネルも完全には否定されなかった。そこで実験的に明らかにするために、それぞれの磁気トンネル伝導特性について、温度依存性およびバイアス電圧依存性を調べ比較した。バイアス依存からバンドの特徴を観測するには至らなかったが、スピン分極率などを総合的に判断するとどちらの接合においても拡散的なトンネルが支配的であると結論した。 実験装置移設後、成長条件検討を行った。Fe3O4/NiCo2O4(100)は膜の積層順によって膜の品質に違いが出ること、NiCo2O4(110)の酸素分子ガス酸化による製膜では、エピタキシャル成長するもののスピネル型NiCo2O4ではなく反強磁性である岩塩型酸化物が得られていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要に記したように、申請時には予期していなかったが研究代表者である長浜が北海道大学から山口大学に異動となったために、実験装置の移設、研究室の立ち上げなどで年度の前半が課題の実施に専念できなかった。そのため、当初の予定からはやや立ち遅れた状況となった。現在は製膜装置など移送した装置はほぼ問題なく立ち上がった(酸素ラジカル源に部分的に不具合が残っている)。 一方で成長条件の検討を行い、Fe3O4/NiCo2O4膜の成長条件や、NiCo2O4の(110)成長方向におけるエピタキシャル成長に関する知見を得た。また、将来的なp-i-n接合の伝導現象の理解につながるFe3O4トンネル接合の伝導メカニズムに関する検討が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
異動に伴う実験施設の移設立ち上げに関しては、やむを得ない状況であったと考える。しかし、現在では実験装置や研究環境は十分整っており、今後は加速的に実験に取り組み遅れを取り戻す。とくに本課題にかかわる学生数は移動前の予定より増えており、試料作製手法の確立などは十分にマンパワーをかけられる状況にある。酸化源の不具合については早急に対応して試料作製条件の探求を加速的に行う。また、研究代表者の異動に伴い、昨年度やや疎かになっていた共同研究者間の連携を密にし、理論計算型のサポートをうけつつ、まずは試料作製と伝導特性の評価と理解に注力する。また再来年度は得られた知見をもとにデバイス機能の実現に向けた開発を進める。
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