研究課題/領域番号 |
23K26137
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補助金の研究課題番号 |
23H01443 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
垣尾 省司 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (70242617)
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研究分担者 |
鈴木 雅視 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (60763852)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2023年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | 弾性表面波 / 板波 / 異種材料接合 / 高周波フィルタ / 周期的空隙 / SAWフィルタ |
研究開始時の研究の概要 |
次世代通信システムへの進化,実現に向けて,弾性表面波を利用した周波数フィルタの高周波化・広帯域化が要請されている.本研究代表者らは,これまでの科研費研究により,圧電結晶薄板と水晶支持基板を異種材料接合させた基板構造を開発し,高性能な弾性表面波特性を実現した.本研究では,この構造をさらに進化させて,圧電薄板と支持基板の接合境界面に周期的な空隙を設けることにより,弾性表面波のエネルギーを薄板中に集中させ,板波に近い高音速・高結合な特性を有する弾性表面波を励振させる堅牢な基板構造を開発し,次世代通信システム端末用の高周波・広帯域フィルタに応用することを目的とする.
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研究実績の概要 |
次世代通信システムへの進化,実現に向けて,弾性表面波(SAW)を利用した周波数フィルタの高周波化・広帯域化が要請されている.本研究では,圧電結晶薄板と支持基板の接合境界面に周期的な空隙を設けることによりSAWのエネルギーを薄板中に集中させ,板波に近い高音速・高結合な特性を有するリーキーSAW(LSAW),および高音速な縦型LSAW(LLSAW)を励振させる堅牢な基板構造を開発することを目的としている.本年度の成果を以下に示す. 1. 圧電結晶薄板としてSH0モード板波に対して大きな結合係数K2を示す27.5°YX-LiNbO3(LN)と,LLSAWに対して最大のK2を示すX36°Y-LNを選択した.空隙をLN薄板と支持基板の境界に電極(IDT)の直下に形成し,電極と同じピッチとした.支持基板としてLN,ガラス,水晶(Qz),Si(100)を想定し有限要素法による共振特性を解析した.LSAWでは,波長λに対する規格化板厚h/λが0.05~0.15,薄板支持率が0.1~0.3のとき,全ての支持基板において比帯域幅が18~22%のSH0モード板波に近い共振特性が現れた.LLSAWについても,h/λが0.1~0.2,支持率0.3のとき,Qzとガラス基板において比帯域幅が13%,反共振速度が6,500 m/sのS0モードラム波に近い共振特性を示すことを明らかにした. 2. ZX-LNに周期的空隙を設けた構造の送受IDT間の周波数特性を解析した結果,伝搬路下に設けた空隙の周期によってレイリー型SAW(R-SAW)とLSAWの応答のうち,R-SAWの応答のみが低減することを明らかにした.この構造を,LSAWを主応答としR-SAWによるスプリアス応答があるフィルタに適用することができればスプリアス応答が抑圧でされる可能性があることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の検討により,圧電結晶薄板を水晶等の支持基板と異種材料接合させた構造の接合境界面に周期的な空隙を設けると,高結合な特性を有する擬似板波,および高音速な擬似ラム波が得られる諸条件を理論的に明らかにした.また,周期的空隙を利用した不要応答の抑圧手法を理論的に明らかにした.これらの項目については当初の計画通りに進行しているが,当該年度に予定していた低周波帯での実験的評価については試料作製の途中である.以上のことから,総合的におおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
【令和6年度】 1.擬似板波基板構造の設計・作製・評価: 令和5年度における検討に引き続き,圧電薄板として入手可能なカットである36°YカットLNとXカットLNを擬似SH板波と擬似ラム波にそれぞれ適用させて,空隙を設けた接合構造上にAl製電極を設けたモデルについて有限要素法解析により共振特性をシミュレートし,擬似SH板波,および擬似ラム波の高結合な励振に必要な空隙,基板構造,電極の各パラメータを明らかにする.次に,得られた最適パラメータを有する提案構造を作製する.3インチ径のATカット水晶の支持基板上に,Al蒸着膜をマスクとして逆スパッタ法により周期的凹形状を形成する.LNと異種材料接合させ,所定の板厚に研磨した後,Al蒸着膜により数百MHz(波長4.8~8μm)の擬似板波共振子を作製する.作製した擬似板波共振子の共振特性と耐電力特性を測定,周期的凹形状を設けない共振子の特性と比較し,提案構造の優位性を明らかにする. 2.不要応答の抑圧手法の検討: 令和5年度における検討に引き続き,周期的空隙に起因する不要応答を抑圧するための空隙断面形状の探索と,周期的空隙により生じる禁制帯を用いて不要応答となる弾性波伝搬モードのみを抑圧させる構造の探索を有限要素法解析により検討する. 【令和7年度】 GHz帯擬似板波共振子の設計・作製・評価: 令和6年度における,数百MHzで作製,評価された提案構造の検討結果,および不要応答抑圧の検討結果を設計にフィードバックさせた後,GHz帯(波長1.2~2μm)での実証実験を行う.支持基板上への周期的凹形状と電極パターンの作製はファウンダリに外注する.共振特性と耐電力特性を評価し,5Gの5GHz帯高周波・広帯域フィルタと,2~3GHz帯の超広帯域フィルタへの適用可能性を明らかにする. 上記の推進方策に加えて成果報告,論文執筆,社会への成果公開等を行う.
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