研究課題/領域番号 |
23K26145
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補助金の研究課題番号 |
23H01451 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
中嶋 誠二 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (80552702)
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研究分担者 |
藤澤 浩訓 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (30285340)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 強誘電体 / 光起電力効果 / ビスマスフェライト / 低次元物質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、pn接合型太陽電池の理論限界であるショックレー・クワイサー限界を超える変換効率が報告されている、強誘電体におけるバルク光起電力効果(BPVE)に基づくホットキャリア型太陽電池の発電機構を解明するものである。加えてグラフェン、カーボンナノチューブ,WTe2を用いた低次元物質/強誘電体接合により、さらなる変換効率の向上を目指す。 BPVEに基づくホットキャリア型太陽電池は強誘電体層が極薄膜であるために光吸収が小さいという根本的な問題があるが、低次元物質特有の物性に着目し、強誘電体層に加え低次元物質層も光吸収層とする構造を提案しその有効性を検証する。
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研究実績の概要 |
2023年度はグラフェン/BiFeO3(BFO)構造およびBFO/カーボンナノチューブ(CNT)構造の作製とその光起電力効果の評価を行った。当初R6年度実施予定であったが、前倒しして実施した。グラフェンはCu上の成長させた単層グラフェンを購入し、その転写プロセスを確立した。特にBFO表面の親水化が重要であり、酸素プラズマ処理により水滴の接触角が大幅に低減され、親水化できることを見出している。さらにグラフェン/BFO構造においてBFOの分極反転が光起電力特性に与える影響も確認でき、現在、英語原著論文を執筆中である。 CNTは金属および半導体が混在しているものを用いて、BFO上へ分散塗布し、電極パターンの作製に成功している。パターニングには酸素プラズマによるアッシング用いた。この際。グラフェン転写プロセスで見出した酸素プラズマ処理によるBFO表面の親水化も実施している。また、この構造により光起電力効果の評価にも成功している。 強誘電体層の作製として、VドープBiFeO3薄膜の作製を実施し、その局所原子構造の観察を行った。その結果、ドーパントとしてMnで見られたようなBi原子の不安定性は確認できなかった。これに関しては英文原著論文一件いて報告している。 さらにMnドープBFOにおける電場印下の分極反転挙動を放射光を用いた蛍光X線ホログラフィにより測定し、(001)配向単一ドメインBFO薄膜において面内電場印加により109°ドメインスイッチングが誘起されることを直接観察した。このことは光起電力特性に大きく大きく影響する知見である。この成果は現在論文投稿中である。 さらにHfO2系の薄膜に関しては低温での結晶化が可能であることを見出しており、光起電力効果の測定に繋げる。これに関しても英文原著論文1件にて報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定ではR5年度中に金属/強誘電体界面のバンド構造に関する研究を実施する予定であったが、試料構造作製に時間を要しそこまで至らなかった。そこで当初R6年度実施予定であったCNT/BFO構造作製、グラフェン/BFO構造の光起電力効果の評価を前倒しして実施しており、グラフェン/BFO構造の光起電力効果に関しては現在論文一報を執筆中である。CNT/BFO構造に関しては、金属および半導体混合CNTにおいて構造作製と光起電力効果の測定に成功しており、今後半導体CNTを用いた構造の作製と特性評価、強誘電体層の分極が光起電力特性におよぼす影響を明らかにするために土台となる結果を得ている。 また、光起電力効果増強に向けて強誘電体層形成にも取り組んでおり、VドープBFO薄膜作製と構造評価、HfO2系薄膜の低温結晶化に関する論文をそれぞれ報告している。これは光起電力特性向上のための材料探索において有用な知見を示すものである。 以上により、本研究課題は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
R6-7年度かけての研究方策は次のとおりである。 グラフェン/BFO構造においてBFOを10nm程度まで極薄膜化し、その光起電力特性を評価し、加えて光の透過率を評価し量子効率の算出を行う。次に同構造のバンド構造を明らかにするためにSPring-8の角度分解硬X線光電子分光測定を実施する。これによりバンド構造に起因する光起電力効果を明らかにし、最適なバンド構造を見出す。CNT/BFO構造に関しては、半導体CNT/BFO構造の作製とその光起電力効果の測定を実施し、グラフェン/BFO構造と同様に量子効率の算出とバンド構造の測定を行う。また、WTe2を2次元物質層としてWTe2/ BFO構造の作製を行う。これらにより、金属、半導体、極性金属の2次元物質が光起電力効果に及ぼす影響を明らかにするとともの最適なバンド構造を見出す。 上記取組と並行して強誘電体層の物性解明を行う。特にBFOに関してはドーパントを変えることでその強誘電性が変化する。これは結晶構造の非対称性が影響するバルク光起電力効果にとって重要であり、BFOへのドーパントの最適化を実施する予定である。VおよびSmドープを実施し、その局所原子構造を解明する。また、HfO2系強誘電体に関しても同様に検討する。HfO2系強誘電体薄膜はバンドギャップが大きく、光起電力効果を用いた新規太陽電池への応用という観点では不利であるが。数nmの極薄膜でも強誘電性が得られることから量子効率向上の検討には有用である。
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