研究課題/領域番号 |
23K26158
|
補助金の研究課題番号 |
23H01464 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
久保 俊晴 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10422338)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
|
キーワード | GaN / Si基板 / 縦型デバイス / Si / 歪超格子 / GaN on Si / 緩衝層 / MOS構造 |
研究開始時の研究の概要 |
昨年度は歪超格子層にδドープを施すことにより、歪超格子を通した伝導度を上昇させることができた。本年度はGaNドリフト層に歪超格子などの層を数層導入することにより、転位密度を減少させ、ドリフト層の低抵抗化を図る。また、TEMなどにより、転位の様子を評価するとともに、転位密度の低減したドリフト層におけるキャリア密度を評価し、ドリフト層の構造にフィードバックすることによって、更なる特性改善を行う。また、実際にGaN/Si縦型デバイスを作製し、その電気特性の評価を行い、今後のデバイス特性改善のための情報を得る。
|
研究実績の概要 |
令和5年度は、これまでにデバイス動作を確認している電流狭窄層を有する縦型のGaNデバイス、Current Aperture Vertical Electron Transistors (CAVETs)におけるSiドープにより伝導性を持たせた緩衝層である歪超格子層(SLS層)に対して、SLS層内のAlN層上下にSiを高濃度ドープしたδドープ層を形成することによって、伝導特性の向上を目指した。 δドーピングを行ったGaNドリフト層を含むSLS層の縦方向伝導特性を評価した結果、180μm×180μmの電極面積に対して、3.2 Vの電圧印加での電流値がδドープ試料で100mA、標準試料で52mAを示し、δドーピングによりSLS層を介した垂直伝導特性が向上していることが分かった。 次に、CAVET上部のAlGaN/GaN構造における2次元ガス層(2DEG)を介した横方向の伝導特性を評価した結果、最大ドレイン電流(Idmax)はδドーピングを施した試料、施していない試料(標準試料)において、それぞれ377mA/mm、334mA/mmであり、ほとんど変化がなかった。このことから、δドーピングによる上部AlGaN/GaN層の電気特性への影響は小さいことが分かった。 最後に、CAVETの電気特性を評価した。本研究では、δドープ試料のゲート絶縁膜の成膜条件が最適化されておらず、ゲート絶縁膜が比較的大きなリーク特性を示したため、δドープ試料の最大ゲート電圧は0 Vとしたが、δドープ試料と標準試料のIdmaxはそれぞれ298A/cm2と95.6A/cm2となり、δドープ試料のIdmaxは標準試料の約3.1倍と向上した。このことから、導電性SLS層へのSiのδドープがSi上GaN縦型デバイスのデバイス特性の改善に有効であることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、高い動作周波数域での中~大電力用途の省エネ用パワーデバイスを開発するために、これまで我々が研究を進めてきた技術である Si基板上歪超格子(SLS)を有するGaN/Siエピ構造に対して、SLS層に導電性を持たせるという独自の方法により、縦方向に電流を流すことができる 新しい構造を有するGaN/Si縦型電子デバイスを実現するものである。本研究ではSi上GaN縦型電子デバイスに対して、導電性SLS層、低オン抵抗GaNドリフト層の二つの要素技術を構築し、縦型デバイスを実現する。 令和5年度は、これまでにデバイス動作を確認している電流狭窄層を有する縦型GaNデバイスであるAlGaN/GaN CAVETにおける、Siドープにより導電性を持たせたSLS層に対して、SLS層内のAlN層上下にSiを高濃度ドープしたδドープ層を形成することによって、デバイス特性の向上を目指した。 緩衝層を介した垂直伝導特性はδドーピングによって改善され、また、上部AlGaN/GaN界面に形成された2DEG層の電気特性はδドーピングによってほとんど変化せず、δドーピングにより上部AlGaN/GaN層の劣化等は無いことが分かった。δドーピングを施したCAVETのIdmaxはδドーピングを施していない標準試料の約3.1倍であり、δドーピングがSi基板上GaN縦型デバイスのデバイス特性の改善に有効であることが分かった。今回作製したデバイスのゲート絶縁膜のリーク特性が良くなかったため、今後絶縁膜のリーク特性を改善することにより、更にデバイス特性を向上させることができると考えられる。また、今後は計画に沿って、SLS層の材料および構造を変化させて評価を行うと共に、縦型デバイスの作製を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、Si基板上の緩衝層である導電性SLS層の伝導特性をSiのδドープ層の形成により改善することができたので、令和6年度以降は、GaNドリフト層の電気特性改善を進める。まず、GaNドリフト層の高品質化によるオン抵抗低減および高耐圧化として、【貫通転位密度の低減】を行う。これまでの研究において、SLS層を用いて成長したGaN/Siの断面TEM写真より、GaN層/SLS層界面において、貫通転位が低減されることが分かっている。これは、複数のGaN層/SLS層界面を形成することにより、GaNドリフト層中の貫通転位密度を低減できることを示唆しているため、SLS層や類似の構造の形成実験を行う。 次に、【キャリア密度の制御性の改善】を行う。SiH4をドープした貫通転位密度の異なるGaNドリフト層に対し、ホール効果測定による移動度、キャリア密度の評価を行う。TEMを用いてGaNドリフト層における貫通転位の状態を観察し、どの種類の転位がキャリアの補償効果に影響を及ぼすかを評価し、ドリフト層の構造形成にフィードバックする。ドリフト層の【移動度の改善】について、ドリフト層には、高い移動度が求められるが、貫通転位低減により移動度は向上すると考えられるため、目標とする数値を貫通転位密度は10^8~10^9/cm2とし、移動度は250cm2/Vs、キャリア密度は10^15/cm3~10^18/cm3の範囲で線形的に制御することを目指す。 最後に、GaN/Si縦型パワーデバイスの作製についても研究を進める。上記の技術を用いたGaN/Si上の縦型電子デバイスとして、ショットキーバリアダイオード(SBD)と縦型FETを試作し、電気特性を評価する。GaN/Si縦型FETでは、デバイス特性の最終目標値として、直列オン抵抗5mΩcm2以下、 耐圧600V以上を目指して研究を進める。
|