研究課題/領域番号 |
23K26162
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補助金の研究課題番号 |
23H01468 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中田 陽介 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (50745205)
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研究分担者 |
沖村 邦雄 東海大学, 工学部, 教授 (00194473)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2026年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2025年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | スマート反射板 / メタ表面 / 二酸化バナジウム / テラヘルツ |
研究開始時の研究の概要 |
通信・センシング技術の高周波数化により、テラヘルツ波を高効率に取り回す技術の開発が求められている。本研究では状況に応じ賢くテラヘルツビームの伝搬を変えることができるテラヘルツスマート反射板を動的メタ表面によって実現する。メタ表面は 2次元的な人工構造体であり、サブ波長の厚みにも関わらず高い応答性を持つ。外部刺激により特性を変化させることが可能な材料をメタ表面に組み合わせることで、周辺環境に応じて、テラヘルツビームの伝搬方向をスマートに制御できるようになる。
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研究実績の概要 |
通信・センシング技術の高周波数化により、テラヘルツ波を高効率に取り回す技術の開発が求められている。本研究では、状況に応じ賢くテラヘルツビームの伝搬を変えることができるテラヘルツスマート反射板を動的メタ表面によって実現することを目的としている。メタ表面は 2次元的な人工構造体であり、サブ波長の厚みにも関わらず高い応答性を持つ。外部刺激により特性を変化させることが可能な材料をメタ表面に組み合わせることで、周辺環境に応じて、テラヘルツビームの伝搬方向をスマートに制御できるようになる。上記の目的達成に向け、2023年度は主に3つの課題に取り組んだ。まず第1に異常反射切り替えを実現する動的メタ表面を設計した。数値シミュレーションによって、二酸化バナジウムと金属パターンの様々な組み合わせを試み、異常反射角を可変にできる動的メタ表面構造を見い出した。特に、正反射/異常反射の切り替え以外にも、異常反射/異常反射を切り替え可能なメタ表面構造を見いだすことができた。第2に設計したメタ表面を評価するために必要な測定装置を新たに導入し、テラヘルツ帯域のメタマテリアル評価に使えることを検証した。第3に二酸化バナジウムに大きな電場を印加して転移を制御するため、透明導電性のアルミニウムドープ酸化亜鉛上への二酸化バナジウム成膜を試み、導電性材料上でも二酸化バナジウムの切り替え特性が維持されることを見い出した。以上の成果を元に、今後は実験的にテラヘルツスマート反射板の動作を実証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には主に以下の3つの課題に取り組んだ。第1に異常反射切り替えを実現するメタ表面の設計を行なった。まず横電場(TE)波に対して完全異常反射を実現する表面アドミタンスを導出するための理論を構築した。次に、構築した理論に基づき500 GHzにおいて0°入射・60°異常反射角度の場合の有効表面アドミタンスを導出した。得られた有効アドミタンスに対して、シミュレーションで反射効率を求めると99 %以上となり、理論の有効性を確認することができた。この有効表面アドミタンスを再現する構造を模索し、500 GHzの垂直入射に対し正反射(0°反射)と異常反射(60°反射)を高効率に切替可能な動的メタサーフェスが実現できることをシミュレーションによって示した。さらに垂直入射に対し,異常反射(60°反射)と異常反射(-60°反射)を切替可能な動的メタサーフェスの設計も行ないシミュレーションにより動作検証ができた。得られた成果は「IEEE MTT-S Kansai Chapter and IEEE AP-S Kansai Joint Chapter 合同若手技術交流会」でポスター発表された。第2に、異常反射メタ表面の測定に必要な測定系の準備も進めた。ファイバーカップルのテラヘルツ時間領域分光装置を新たに導入し、市販のバンドパスフィルタの特性を評価することで、メタマテリアル特性を正しく測定可能であることを確認した。第3に、二酸化バナジウムへ大きな電場を印加するために、透明導電性のアルミニウムドープ酸化亜鉛(AlドープZnO: AZO)上に二酸化バナジウムを成膜した。得られた膜に対して、面直方向への電圧印加で二酸化バナジウムが金属的となり、赤外光(波長1.45 μm)の透過率が大幅に低下する結果を得た。以上より順調に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
すでに反射角度が可変なメタ表面の設計ができており、今後はデバイスの高効率化が主な設計課題である。設計したメタ表面構造は、共用の微細加工施設を利用して作製する。作製したサンプルの評価のための測定系も構築する。このためにテラヘルツ時間領域分光系を角度分解測定が可能になるように改造する。構築した測定系を用い、サンプルの評価を行ない、テラヘルツスマート反射板の動作を実証する。また、さらなる高性能・高機能なメタ表面特性の切り替えを実現するために、垂直積層型二酸化バナジウム構造の研究も進める。透明導電性のアルミニウムドープ酸化亜鉛(AlドープZnO: AZO)上へ相転移二酸化バナジウム薄膜を堆積し、AZOを下部電極、二酸化バナジウム上へ上部電極を設けて、膜の面直方向への電圧印加による抵抗スイッチング実験を行う。微小な電極間の電圧印加による広い面積に亘る光透過制御技術は、長波長赤外光やテラヘルツ波の制御を可能とするものと期待できる。具体的にはAZO膜及び二酸化バナジウム薄膜の膜厚変化や電極構造と配置、電圧印加に対する時間応答の検討に取り組む。得られた知見をテラヘルツスマート反射板へも展開する。
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