研究課題/領域番号 |
23K26171
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補助金の研究課題番号 |
23H01477 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
日比野 有岐 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (60895788)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
2025年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 14,950千円 (直接経費: 11,500千円、間接経費: 3,450千円)
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キーワード | スピントロニクス / スピンオービトロニクス / スピン軌道相互作用 / スピン流 / 磁気層間結合 / スピン軌道トルク / ナノ構造制御 / スピンホール効果 / 磁気トンネル接合 |
研究開始時の研究の概要 |
スピンオービトロニクスは従来のスピントロニクスで用いられた電子の電荷とスピンの自由度に加え、電子軌道の自由度を取り入れた新たな分野であり、非磁性材料中のスピン軌道相互作用を利用したスピンホール効果を中心に発展してきた。本研究課題では従来の非磁性材料ではなく、磁性材料・構造に焦点を当てることで、スピンオービトロニクスの新たな展開を見出す。磁性材料・構造におけるスピン軌道相互作用や対称性の破れを積極的に利用することで、新奇スピン流生成現象の解明・高効率化の新たな指針を示し、スピンオービトロニクスの不揮発性磁気メモリ搭載に向けた応用展開の足掛かりを開拓する。
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研究実績の概要 |
本研究は、従来のスピントロニクス・スピンオービトロニクスにて着目されてきた非磁性材料中のスピン軌道相互作用に対して磁性材料・構造におけるスピン軌道相互作用に焦点を当てることで、スピンオービトロニクスの新展開を見出すことを目的とし、1.磁性材料におけるスピン変換現象の開拓、2.自己誘発スピン軌道トルクの観測および高効率化、そして3.カイラル磁気層間結合の系統的調査を研究項目として掲げる。今年度では主に2と3の研究項目に取り組んだ。まず研究項目2については、Ni-Fe薄膜に組成傾斜を意図的に付与することで、自己誘発スピン軌道トルクの誘発を試みた。その結果、組成勾配方向に応じた自己誘発スピン軌道トルクがNi-Fe内生じることを観測し、この現象を説明する機構を理論的にも明らかにした。研究項目3については強磁性/Ir/強磁性の三層構造を磁気トンネル接合素子の記録層に搭載することでカイラル磁気層間結合の電気的な観測を試みた。その結果、nmスケールの磁気トンネル接合素子においてカイラル磁気層間結合に起因した反転磁場シフトの観測に成功し、反転磁場シフトおよび反転保磁力の角度依存性からカイラル磁気層間結合の要因である層間ジャロシンスキー・守谷相互作用を定量的に算出することができた。また、今年度は面内磁界プローバーを導入し来年度以降の高いスループットを実現するための環境を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度では、面内磁界プローバーの導入と並行して組成勾配導入による自己誘発スピン軌道トルクの観測に成功・その機構を明らかにすることに加え、微小領域におけるカイラル磁気層間結合現象の観測に成功した。これらの結果は、磁気メモリへ搭載するにあたり書き込み効率を向上や無磁場下での磁化反転を実現する上で重要な知見であり、開発の新たな展開に繋がるものと考えられる。自己誘発スピン軌道トルクに関しての研究成果は、英文学術論文誌への掲載に採択された。また、予想外の成果としてアモルファス構造の非磁性材料において巨大スピンホール効果が発現することを見出し、世界最高レベルの省電力書き込みの実証が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度導入した面内磁界プローバーを駆使し、当初計画の研究を推進する。自己誘発スピン軌道トルクで得られた知見から、面直磁化膜の磁化反転の可能性やカイラル磁気層間結合を用いた磁化ダイナミクス誘起の可能性を探索する。
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