研究課題/領域番号 |
23K26217
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補助金の研究課題番号 |
23H01523 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22050:土木計画学および交通工学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷口 守 筑波大学, システム情報系, 教授 (00212043)
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研究分担者 |
饗庭 伸 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (50308186)
野澤 千絵 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (50345146)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
2026年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2025年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
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キーワード | バイオミメティクス / x minute city / 退化マネジメント / アーバン・フレイル / Afterコロナ / コンパクトシティ / 空き家 / COVID-19 / 地域交通計画 |
研究開始時の研究の概要 |
人口減少とコロナ禍を受け、多くの都市では空き家の増加などの機能不全が拡大し、気候変動に伴う災害も激化している。そもそも都市の成り立ちや機能は生命体に酷似しており、既に多くの都市が様々な成人病に罹患したアーバン・フレイルの状況にある。このような都市の効果的救命には単独の方策では不十分で、社会基盤、都市計画、住宅政策・防災といった個々の専門分野を超えた包括的な取り組みを行う必要がある。本研究では都市を一つの生き物と見立てるバイオミメティクスの視点に立ち、「理論」「実態解明」「システム構築(予防診断・体質改善・治癒リハビリ)」「実践」をあわせた「都市の退化マネジメント」を体系的に導入・展開する。
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研究実績の概要 |
都市の退化マネジメントの研究体系を構築する前段として、まずその代表的手法であるコンパクトシティ政策がどれだけ正しく市民に認識されており、また行政担当者が取り組む意思を見せているのかを独自の調査で明らかにした。その結果、市民の多くは内容を理解するに至らず、またむしろ理解していると回答した者の方が誤って理解をしている現状が明らかになった。次に、都市居住者の高齢化が進み、店舗等都市機能が撤退することで、都市自体が老化現象を示すアーバン・フレイルについて、郵便局などのローカル拠点の再生や、サービス機能自体が居住者の元に移動する対応策にについて検討を行った。さらに、人口減少社会における建物や土地に対し、どのような維持管理や終末管理方策があり得るのかを実例を交えて整理を行った。 また、これらの当初の進捗予定に添った研究実績に加え、都市退化マネジメントを効率的に成立させるための地域交通計画についても議論を拡張し、退化が不十分な地域で自動車利用に依存することによって生じる格差と環境負荷に関して統計的な検討を行った。あわせて公共交通サービスの再編のあり方についても新たなデータ活用を通じて言及している。さらにこれら新時代の都市計画をけん引するためのキーワードを体系化した事典を上梓した。これに加え、都市退化マネジメントを今後の都市計画のセントラルドグマとしていくために、空き家数が如何に全国で増えていくかをシミュレートした内容をNHKスペシャルなどのメディアを通じて広く広報を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
各構成メンバーがそれぞれ予定された研究を進捗させ、成果について既に公開を始めている。谷口については、コンセプトの確立と理論体系の構築に関わる分野を主に担当しており、都市退化マネジメントを促進するうえで、それが市民や行政担当者といった関係者の間でセントラルドグマとしてそもそもどれだけ認識されているのかを検証した成果を発表した。饗庭については、実態調査と体質改善システムの構築に関わる分野を主に担当しており、ローカルな退化拠点として想定される郵便局の持つ意義を検証し、アーバン・フレイル防止のために訪問型サービスによって都市機能を補うシステムの検証を行った。あわせてそれらを復興計画として捉える道筋の提案と公表を行っている。野澤については、実態調査と予防システムの構築に関わる分野を主に担当しており、建物や土地の取得・開発後に空き家や空き地が発生しないようにするための対応策に関する試案を提示している。 以上は当初の計画に沿った進捗であるが、計画以上に進展している内容として、一つは検討を進める中で、都市退化マネジメントを支える交通体系や移動の格差に言及する必要性が明らかになったことで、当初の計画を超える領域にも取り組みを広げている。具体的には野澤が地域公共交通の再編策に取り組み、谷口は移動格差検証のための自動車保有・利用負担の網羅的算出方法を提案し、交通環境負荷の追跡ともあわせて都市退化の方向性を示唆している。もう一つは最終年度に予定していた政策決定者や社会・市民への情報提供を既に開始している点で、谷口は社会資本整備審議会において、饗庭は著書で、野澤はNHKスペシャルなどでそれぞれ活発に得られた成果の発信を始めている。
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今後の研究の推進方策 |
1)体質改善システムの構築:減少社会における活動と施設の空間上での最適なマッチング関係を、防災性能も考慮した上で検討する。共同研究者の野澤は空き家の発生予測と防災対応に関する情報の整理を進め、饗庭はコミュニティ計画実施の円滑化を通じ、都市縮退における合意形成の方向性を提示する。システムは現在の計画制度上欠落している「広域計画圏」を上位とし、x minute cityとしての「15分生活圏」と「町丁目スケールの地区」レベルでの検討を通じ、それぞれの圏域での体質改善メニューの提示を目指す。 2)治癒リハビリシステムの構築:上記の解析を通じ、広域的視点を含む都市計画制度の抜本改革(饗庭)、空き家対策・不動産の克服と防災計画の連動(野澤)、生活圏の再構築も含めたアーバンリフォーム(谷口)を進めることで、自律的な治癒リハビリシステムを構成する。その中には需要マッチングを通じた見える化とサービス集約による体力回復、なりわいの確保と連動した住み続けられる地域要件の体現、ワークシップ等コミュニケーションベースによる負担の少ない世代間・地域間互助方式の導入、認知症対策として住民や行政担当者等ステークホルダーの新たな態度行動変容ツールなどがシステム構成のパーツとなる。 3)支援方策・制度の確立、適用、広報:関連支援方策の創設、関連制度の抜本改正、各種条例の制定などとして本研究の成果が実務に導入されるよう、積極的な働きかけを行う。特にx-minute cityの観点に立った、居住者目線の新たな立地適正化計画のあり方について、具体的な法制度の在り方も含めた取り組みを実施する。その中で、研究成果として得られたカルテやモデル、各システムはそのままツールとして利用されるよう、必要な改善を実施する。都市を一つの生き物のようにとらえ、その健全性を高めていくための一連のバイオミメティクスの視点に立つアプローチを完成させる。
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