研究課題/領域番号 |
23K26242
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補助金の研究課題番号 |
23H01548 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 典之 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60401270)
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研究分担者 |
崔 琥 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (40512009)
晉 沂雄 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (60727006)
権 淳日 大阪工業大学, 工学部, 講師 (70847847)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 12,090千円 (直接経費: 9,300千円、間接経費: 2,790千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 津波 / 鉄筋コンクリート造 / 壁の面外破壊 / 残存耐震性能 / 面外損傷 / 浸水深 / 建物規模 / 鉄筋コンクリート造建物 / 面外破壊 / 被災度判定 / 損傷評価 |
研究開始時の研究の概要 |
日本建築防災協会発行「震災建築物の被災度区分判定基準および復旧技術指針」(2015年版)に追加された「津波被災度評価フロー」において,力学的な検討が十分ではなかった津波外力による面外損傷を経験したRC造壁部材の残存耐震性能をどのように算定するのが妥当であるか検討すべく,RC造建築物の壁体が面外方向に流体力を受けて損傷する場合の損傷レベルと,面内方向に残存する耐震性能の関係について調査し,面外方向損傷の何(ひび割れ幅,押し出し変形量,傾斜角など)をどのように評価するのが残存性能評価において妥当かについて明らかにするとともに津波被害による損傷に基づく残存性能評価手法を提案する。
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研究実績の概要 |
被災度区分判定における津波被害認定フローの再評価を目的に,特にRC造壁の面外損傷が面内方向の残存耐震性能に与える影響を評価することで,被災度区分判定基準の浸水被害フローにおける当該評価項目についてその妥当性を検証するためのバックデータ収集を目的とした研究である。 今年度は,RC造壁試験体の載荷実験予定施設(静岡理工科大)および実験施設保有の装置を視察・評価,および,現時点で販売されている面外載荷装置(エアバッグ)の導入を通して,試験体寸法について検証しなおし,試験体設計方針を固めた。 また,既往の研究の分析を通し,地震動では面外を含む2方向載荷の影響は,面内方向の耐震性能にあまり寄与しないことが指摘されている一方,面外方向においては降伏線理論を用いると面内方向の耐力が大幅に落ちることが指摘されていることを確認した。ただし,面外変形に伴う面内圧縮軸力の再評価により降伏線理論を用いた面内方向耐力が向上する可能性もあり,面外変形による面内圧縮軸力の再評価がキーファクターとなり得ることが分かった。 2024年1月1日に発生した能登半島地震における,津波被災地域(珠洲市飯田港,鵜飼漁港)の調査を行い,能登半島地震で見られた津波浸水深(建物G.L.からの浸水深で1~2m程度)では,壁面面外損傷について,木造倉庫の壁,鉄骨造漁港建屋の非構造壁において一部面外変形を伴う損傷が見られたものの,RC造建物の壁における面外損傷で顕著なものは見られなかった。 上記と並行して,RC造建物群の耐浪性指標評価についても検討し,RC造壁が面外損傷を受けながらも架構として残存することで被災度区分判定フローでの評価対象となり得る「建物規模」と「津波浸水深」との関係について明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
面外載荷装置(エアバッグ)が研究計画立案時とは異なる新しい型番で販売されており,当初予定とは異なる試験体設計があらたに必要になった。エアバッグサイズ・載荷能力(圧力,膨らみ量)を再評価し実験予定施設でのロジスティクスを考慮した試験体計画立案まで実施することで,試験体寸法について検証しなおし,試験体設計方針を立てなおすことができた。ただし,これだけでは当初予定より進捗しているとは言い難いが,2024年1月に発生した能登半島地震において津波で被災した珠洲市沿岸部の被害調査を実施するとともに,RC造壁が面外損傷を受けながらも架構として残存することで被災度区分判定フローでの評価対象となり得る「建物規模」と「津波浸水深」との関係について明らかにすることができ,載荷計画の立案に大きく寄与する情報を精査できたことは,今年度の研究を進捗させる推進力となった。あわせて,既往の研究の分析を通し,面外変形による面内圧縮軸力の再評価がキーファクターとなり得ることが分かり,計測計画における重要な示唆を得ることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究により,RC造壁が面外損傷を受けながらも架構として残存することで被災度区分判定フローでの評価対象となり得る「建物規模」と「津波浸水深」との関係について明らかにすることができた。これを踏まえ,今年度実施するRC造壁の面内・面外載荷実験においては,載荷装置による制約条件が現実的な津波被害においてどのような意味合いを持つかについて分析を進めることで,より被災度区分判定基準の浸水被害認定フローの妥当性評価・バックデータ収集が実社会に貢献する情報として読み解きやすいものになると期待され,当該面からの分析も継続的に実施することで研究を推進する予定である。また,前年度までの研究で,面外変形による面内圧縮軸力の再評価がキーファクターとなり得ることが分かったので,今年度実施するRC造壁の面内・面外載荷実験において,面内圧縮ひずみを評価するひずみゲージの設置計画を立てることで,今後の解析的評価において必要な情報を入手できるようにし,これにより期間全体を通した研究の進捗をさらに図ることができると考えた。
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