研究課題/領域番号 |
23K26248
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補助金の研究課題番号 |
23H01554 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23010:建築構造および材料関連
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
金田 一広 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (30314040)
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研究分担者 |
中井 照夫 中部大学, 工学部, 客員教授 (00110263)
余川 弘至 中部大学, 工学部, 准教授 (20736087)
鈴木 比呂子 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (60401527)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 既存杭 / 弾塑性構成モデル / 連成解析 / 模型実験 / 撤去 / 弾塑性モデル |
研究開始時の研究の概要 |
今後建築物のリニューアルに伴い、既存杭の撤去が行われる。撤去後に周辺地盤の乱れが発生して強度が低下するという事例が多く発生している。強度低下が見られれば、地震時に水平耐力の低下が懸念される。しかし、この既存杭の撤去に伴いなぜ周辺地盤が乱れるか、メカニズムが明らかにされていない。本研究ではメカニズムの解明を目指す。 まず既存杭撤去に伴う施工過程を模擬した模型実験を実施する。画像解析などを駆使して、各杭撤去工法に伴う周辺地盤の変形を把握する。 次に最新の地盤弾塑性力学に基づく土水連成解析によって理論的に検討する。さらにこの最新弾塑性力学の解析手法を講習会などを通じて地盤技術者に広く提供する。
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研究実績の概要 |
今後建築物のリニューアルに伴い、既存杭の撤去が行われる。撤去後に周辺地盤の乱れが発生して強度が低下するという事例が多く発生している。強度低下が見られれば、地震時に水平耐力の低下が懸念される。しかし、この既存杭の撤去に伴いなぜ周辺地盤が乱れるか、メカニズムが明らかにされていない。本研究ではメカニズムの解明を目指す。 2023年度では、まず既存杭撤去に伴う施工過程を模擬した模型実験を実施した。乾燥砂の模型地盤に杭を設置して、引き抜き実験を行った。周辺地盤の強度はコーン貫入試験で確認をし、引き抜き後に強度が低下することが確認された。さらに、画像解析を実施して周辺地盤の変形を把握した。 一方で、最新の地盤弾塑性力学に基づく土水連成解析によって理論的に検討をすすめた。土の構成モデルはSubloading tijモデルを用いている。縁切引抜工法は、杭の周りに泥水を噴射させながらケーシングを貫入して杭と地盤の摩擦を切って、その後杭を引き抜く工法となる。数値解析では、ケーシング貫入は地盤の掘削としてモデル化した。杭の引き抜き時に、引き抜き速度が速い場合は杭周辺の地盤の引き込みが発生する。数値解析ではその地盤の引き込みを内側へ強制変位を与えることでモデル化した。解析の結果、杭引き抜きに伴う周辺地盤の引き込みによって杭周辺地盤でアーチング効果が生じて、有効応力の増加がみられた。さらに、その周辺地盤は応力の低下が発生することが分かった。この応力の低下によって地盤強度が低下し、杭撤去による周辺地盤の乱れの原因である可能性が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
模型実験に関して、杭撤去の再現実験が難しいと考えていたが、アーチング効果を生じるようにすることで実験ができるようになっている。杭を引き抜いた後の周辺地盤に静的な杭貫入試験を行って強度を確かめたところ、杭を引き抜くことによって周辺地盤の強度が低下していることが再現できた。また、画像解析など周辺ツールの整備によって地盤内のせん断ひずみの可視化ができるようになり、今後さらに分析を進めていく。 2次元軸対象による数値解析においても、杭撤去に伴う複雑なプロセスを理論的な背景をもって単純化することによって現象を解明することができている。杭を引き抜くことによって杭の孔壁に地盤が引き込まれ、孔壁にアーチング効果が生じ、その周辺地盤では逆に応力の低下が生じることが示された。この応力の低下が、杭引き抜き後の周辺地盤の強度の低下(N値の低下)の起因であると考えている。また、3次元解析を行うためのソフトなどの環境の整備もおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
模型実験に関しては、周辺地盤の乱れを調べるためコーン貫入試験を用いていたが、その都度地盤を乱してしまい、統計的な実験データを得るためには複数の実験が必要であった。今年度はベンダーエレメントを導入することで非破壊で地盤の強度を測定することに挑戦し、信頼性の高い実験データの取得を目指す。さらに地盤条件(密度や粒形など)を変えることで周辺の地盤が乱れやすさなどのデータの収集を目指す。 数値解析に関しては、ケーシング貫入時に投入される泥水の影響が周辺地盤にどのような影響を及ぼしているか水と土の連成解析によって明らかにする。さらに、杭撤去は複数本にわたって行われ、3次元的な配置によってどのくらいの杭間隔で影響が大きくなるかなど、3次元解析を進める。解析は市販ソフトPlaxisに弾塑性モデルを導入して行うことを予定している。また、模型実験の再現解析も実施する予定である。弾塑性モデルの妥当性を確認するとともに、実験結果と齟齬や収束性が悪い場合などは弾塑性モデルの修正、高度化も進める。
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