研究課題/領域番号 |
23K26264
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補助金の研究課題番号 |
23H01570 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
上野 佳奈子 明治大学, 理工学部, 専任教授 (10313107)
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研究分担者 |
吉澤 望 東京理科大学, 創域理工学部建築学科, 教授 (40349832)
高橋 秀俊 高知大学, 医学部, 特任教授 (40423222)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,380千円 (直接経費: 12,600千円、間接経費: 3,780千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | 発達障害 / 感覚特性 / ユニバーサルデザイン / 感覚過敏 / センサリーフレンドリー |
研究開始時の研究の概要 |
ユニバーサル社会の実現において、発達障害児・者の感覚過敏等の非定型な感覚特性に配慮して、ソフト・ハード両面の対策を整備することが求められている。国内の現状としては、少数の海外の先進事例や当事者の意見を参考に試行されている段階であり、数値基準や指針は存在していない。そこで本研究課題では、発達障害等の感覚特性を踏まえた環境情報の提示及び環境調整・整備の方法を示すことを目的として、建築環境工学の知見を導入した検討を行う。研究内容として、①配慮すべき感覚刺激の特徴の整理、②センサリーガイド作成等ソフト面の対策の検討、③内装材料や設備機器などハード面の対策の検討、④普及に向けた取り組みを実施する。
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研究実績の概要 |
発達障害、特に自閉スペクトラム症については、感覚の過敏・鈍麻など感覚処理の非定型性という特徴がみられ、日常を過ごす施設や外出先において、さまざまな困りごとを抱えている。これに対して、欧米を中心に、2010年代からスーパーマーケット、サッカー競技場、美術館などで感覚過敏等に配慮した取組みが始まり、日本でも2018年ごろから先導的な取組みが行われているが、環境情報の提示や環境調整・整備に関わる基礎研究は未だ不足している。これらの背景を踏まえ、本研究は、感覚に優しい社会生活環境の普及の一助として、発達障害児・者の感覚特性を踏まえた環境情報の提示方法を検討し、環境調整・整備のガイドを提供することを目的としている。 期間全体の研究内容としては、①配慮すべき感覚刺激の特徴の整理、②センサリーガイド作成等ソフト面の対策の検討、③内装材料や設備機器などハード面の対策の検討、④普及に向けた取り組みを実施する。このうち、初年度にあたる2023年度は、①②を中心に実施した。具体的には、①について、東京都自閉症協会の紹介のもと非定型な感覚特性がある協力者を得て、東京国立博物館において様々な環境刺激に対して評価を求める調査を行い、感覚過敏特性と評価結果の対応を分析するとともに、センサリーマップに掲載すべき要素の検討を行った。また②③に関連して、高知県内の劇場、動物園、小学校、不登校児童支援施設、児童自立支援施設の視察調査を行い、現状及びソフト・ハード面の対策の必要性を把握した。このうち劇場、動物園については、センサリーイベント開催に向けた調査・サポートを通じて、センサリーガイドの作成方法に関する検討を行った。④については、川崎市及び千葉市の小学校の授業、市民向けワークショップ、浜松市の障害者施設職員研修会において、感覚特性の多様性について認識を深めるためのプログラムを実施し、有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にあたる2023年度には、主として、東京国立博物館での集中的な調査、高知県内の劇場、動物園、小学校、不登校児童支援施設、児童自立支援施設における視察調査を行い、発達障害児・者の感覚特性を踏まえた環境情報の提示方法、環境調整・整備の在り方について、多くの知見を得た。また、小学校、市民向けワークショップ、障害者施設職員研修会において、啓発・普及に向けた取り組みを実施した。研究計画に照らして、概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に実施した研究を踏まえ、今後は以下の研究を進める。 ①配慮すべき感覚刺激の特徴の整理:代表的な施設タイプ(学校、オフィス、駅、商業施設、美術館・博物館、競技場など)について、対策時に参照できるチェックリストを作成する。知見が不足する施設タイプについては、当事者の協力を得た調査を行う。 ②センサリーガイド作成等ソフト面の対策の検討:感覚を刺激しうる要素を抽出して事前情報として提示するセンサリーガイド(センサリーマップ、体験ストーリーなど)の提供を目指し、上記①を参照しながら施設内の環境を調査し、当該施設を利用する可能性のある当事者の意見を取り入れて作成する、といったプロセスを整理して示す。この中で環境調査は一般の施設職員には現状難しく簡易な手法で実施するガイドが求められることから、スマホアプリなど手近なセンサーによって、騒音レベルや残響時間、照度・輝度・色温度等の環境指標を測定し、参考値と照らし合わせて評価ができるよう、ガイド作成のための研究を行う。 ③内装材料や設備機器などハード面の対策の検討:ハード面の対策が有効であるケースについて改善手法を検討し、提案する。パニックの鎮静や休息に用いられるカームダウン・クールダウンスペースの設置、環境刺激を低減したセンサリールームの設置にあたって、光や音の面で感覚に優しい環境設定に着目し、刺激の少ない照明環境(間接照明を主体とした調光調色可能な照明器具など)及び音環境(吸音材料を使用して反射音を抑制した環境など)の有効性について、協力施設に実験的に導入して検討を行う。 ④普及に向けた取り組み:上記の成果や活動について、当事者・支援者・一般市民に広く伝えることを目指し、関連学会・小学校・市民の学びの場などでのワークショップ等を行う。
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