研究課題/領域番号 |
23K26274
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補助金の研究課題番号 |
23H01580 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分23030:建築計画および都市計画関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
江口 亨 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (60599223)
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研究分担者 |
角倉 英明 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (50512654)
渡邊 史郎 国立研究開発法人建築研究所, 建築生産研究グループ, 主任研究員 (70749209)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2025年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 木造住宅 / 性能表示制度 / 長期優良住宅 / 工務店 / ストック型社会 / 維持管理 / 長期利用 / 生産組織 / ストック |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、住宅産業をストック型へ転換するにあたり、実効性のある制度設計のあり方を考察するものである。これまでの法制度では、長期の利用に耐える厳しい基準を定め、高品質の住宅供給を促してきた。一方で工務店は地域の実情に合わせた仕様で木造住宅を供給し、かつ適切な維持保全を顧客とともに実行しており、長期利用されている事例が全国に多く存在することに寄与している。 そこで、木造住宅を対象として、従来の全国一律で基準を適用するトップダウン型の制度を補完するため、主に工務店の実績を踏まえて作成した基準を併用するボトムアップ型の制度のあり方を考察する。
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研究実績の概要 |
初年度である2023年度には、基礎的な調査を行った。まず、木造戸建住宅で建設住宅性能評価書を交付された性能表示事項の傾向を分析した。その結果、必須項目では最高等級が最多の割合を占めているものが多く、また、法制度変更の影響で特定の等級が増加した傾向が読み取れた。 次に、制度が定める仕様の妥当性に関して、特徴的な仕様で質の高い住宅を供給している工務店など8社へのヒアリング調査を実施した。これらの工務店は、設計から施工、維持管理の全てに対応できる総合力があり、品質の高い住宅供給に貢献していた。また、性能を担保する施工の品質や、施主と顔を合わせる関係の継続、建物のシステム化により性能を発揮する手法など、住宅の長期利用で重要になる要素が明らかとなった。これらの要素は、長期優良住宅制度が性能表示制度との一体運用を目指して図ってきた仕様などの合理化と、方向性は一致しない。ただ、制度で評価するに値する要素だと考えられるため、次年度でも検討を続ける研究計画とした。 加えて、試行的に、広島県の工務店による長期優良住宅の利用と意向を調査した。9工務店へのヒアリング調査により判明した長期優良住宅制度の認定を取得しない理由は、情報管理の負担や金銭的なメリットが無い場合があるなどで、住宅性能が劣っているものではなかった。また、工務店が制度を十分に理解しておらず、本来は上位の等級に相当する性能でも、誤って下位の性能として申請したケースもあった。 なお、これらのヒアリング対象には、他社施工の物件を大規模改修して性能向上を図った経験が少ない、または無い工務店が多かった。木造軸組住宅は部材を交換できるなど手を加えやすいとされるが、大規模改修を経た住宅の長期利用について考察できなかった点は今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制度が定める仕様の妥当性に関して、ヒアリング調査を計8社に対して実施できたのはほぼ計画通りであった。北海道から鹿児島まで気候特性の異なる地域にて、様々な創意工夫の仕様などを把握できた。その一方で、それらの仕様などは、性能表示制度や長期優良住宅制度で十分に評価できていないが、木造の長期利用に資する可能性が十分にあることが確認できた。さらに、試行的な調査により、長期優良住宅の申請をしていなくとも、それに相当する質の住宅が供給されている実態が確認され、本研究の仮説の確からしさを裏付けることができた。 また、性能表示制度の統計情報を管理している一般社団法人へもヒアリング調査を実施して、全国的な傾向の把握について意見交換をし、仕様の分析につなげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、制度が定める仕様の妥当性に関して、工務店へのヒアリング調査を継続する。特に、気候条件が厳しい地域における仕様を把握すると共に、地域に密着したビジネスを行う工務店だからこそ有するノウハウを明らかにする。次に、計画していた通りに、仮想の木造住宅を設定し、長期利用した際の維持管理費のシミュレーションを行う。この住宅の仕様の設定にあたっては、業界団体などへヒアリング調査をして情報を補足し、現実的なシミュレーションにする計画である。
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