研究課題/領域番号 |
23K26306
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補助金の研究課題番号 |
23H01612 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24010:航空宇宙工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
小川 博之 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (60311172)
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研究分担者 |
秋月 祐樹 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (00887573)
長野 方星 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10435810)
小田切 公秀 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特任助教 (50866481)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
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キーワード | 深宇宙探査 / 自律熱制御 / 熱スイッチ / ループヒートパイプ / 多孔質体 / SMAバルブ |
研究開始時の研究の概要 |
将来の深宇宙探査で想定される複雑な熱環境変化に対応するため、自律的な熱流動反転機能を有しかつ大発熱変動に順応可能な「自律スイッチング熱流体システム」を提案し、宇宙模擬環境での実証を目指す。その実現のため、ループヒートパイプ(LHP)熱輸送技術に着目して動作駆動源となる多孔体の細孔径・濡れ性に階層性を有するマルチポーラス体を提案し、マイクロスケール赤外・可視観測装置を用いて熱流動メカニズムを明らかにする。次にマルチポーラス体をLHPに適用し、広域熱流束条件下での熱流動特性を明らかにする。さらに形状記憶合金を用いたパッシブ流動制御バルブを新たに提案し、熱流体システムの自律スイッチング性を実証する。
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研究実績の概要 |
将来の深宇宙探査では、熱環境がさらに複雑に変動することが予想され、熱的要求がより厳しくなると考えられる。そこで本研究では、自律的な熱流動反転機能を有し、かつ大発熱変動に順応可能な「自律スイッチング熱流体システム」を提案し、宇宙模擬環境において実証することを目指す。本デバイスの軸となる技術は、幅広い熱流束域に対応可能な広域熱流束ループヒートパイプ(LHP)と、温度に応じてON/OFFが切り替わるパッシブ流動制御バルブである。広域熱流束LHPにおいては、駆動源となる多孔体の細孔径・濡れ性に階層性を有するマルチポーラス体を提案し、マイクロスケール赤外・可視観測装置を用いて熱流動メカニズムを明らかにし、LHPに適用することで技術実証と設計理論確立を目的とする。パッシブ流動制御バルブでは、形状記憶合金を用いることで熱環境に応じた流動制御を実証し、システムに適用することを目的とする。最終的にはこれらを融合し、宇宙熱環境下での自律スイッチング熱流体システムの動作実証と設計理論確立を目指す。 2023年度は、金属三次元積層技術によるマルチポーラス体の試作および基本特性評価、ハイスピード顕微観察装置の構築、自律スイッチング熱流体システムの基本原理を再現したマルチエバポレータ型LHPの構築と特性評価に取り組んだ。第一に金属積層造形により異なる空孔径ピークを有するポーラス体の製作に成功した点、第二に作動流体の一つであるエタノール飽和蒸気雰囲気下の顕微観察において熱伝達特性と核沸騰現象撮像の同時取得が可能となった点が研究実績として挙げられる。さらに、大気環境下での自律熱スイッチング熱流体システムの原理検証に取り組んだ。その結果、手動開閉バルブを用いたマルチエバポレータ型LHPにより、蒸発器(吸熱)と凝縮器(放熱)の機能スイッチング実証に成功し、提案システム実現の見通しが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、広域熱流束ループヒートパイプ(LHP)およびパッシブ流動制御バルブの機能を融合することで自律スイッチング熱流体システムを実用化することを最終目的とする。広域熱流束LHPに対しては、細孔径および濡れ性に階層性を持つマルチポーラス体の構築、ハイスピード顕微観察による多孔質体内に沸騰現象の解明が挑戦性の高い課題であり、パッシブ流動制御バルブに対しては、バルブ単体およびシステムとしての熱スイッチング機能の原理検証が課題であった。2023年度は、金属三次元積層技術によるマルチポーラス体の試作および基本特性評価を実施し、部分的に試作に成功したこと、飽和蒸気環境におけるハイスピード顕微観察装置を構築し、健全性確認を実施したこと、自律スイッチング熱流体システムの基本原理を再現した、手動開閉バルブを有するマルチエバポレータ型LHPにおいて吸熱と放熱の機能スイッチング実証に成功したことから、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、1年目の成果を発展させ、金属三次元積層技術を用いたマルチポーラス体の空孔径分布の制御性の向上に取り組む。多孔質体の積層パラメータを変化させ、複数のサンプルについて特性を評価する。また、1年目のポーラス体製作条件を用いて、熱流動観察用小型サンプルを製作する。本サンプルは、異なる蒸気溝・伝熱面構造のものを複数評価することで、提案システムの実現において重要な「幅広い熱流束域において高い熱伝達特性を示すポーラス構造は何か?」という問いに対する答えを導く。さらに、大気環境下での自律熱スイッチング熱流体システムの検証を継続して進める。今年度は、手動バルブを感温式バルブへと変更し、システムとしての基本特性を取得する。ループヒートパイプの熱輸送量、動作温度、蒸発器・凝縮器の機能スイッチングにおける自律性を中心的に評価し、2025年度実施予定の宇宙模擬環境での有効性検証に備える。
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