研究課題/領域番号 |
23K26312
|
補助金の研究課題番号 |
23H01618 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24020:船舶海洋工学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村山 英晶 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (10361502)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
|
キーワード | 光ファイバセンサ / 分布計測 / 形状計測 / 構造健全性 / 線状構造体 / 健全性評価 / ひずみ分布 / 光周波数領域反射計 / Fiber Bragg Grating / 海洋機器システム / 形状同定 / マルチコアファイバ |
研究開始時の研究の概要 |
海洋でのエネルギ・資源開発、水産業、科学観測において、大深度・広域・長期の安定的・効率的設備利用が求められており、ケーブルなど重要な線状構造体の運用状態の不確実性が増幅され、その健全性・機能確保が増々難しくなっている。可視化困難な海中構造体・機器の形状が把握されることはほとんどなく、過剰な安全率が設定される。本研究では、海洋で利用される線状構造体の設計・敷設・運用・保守を最適化するため、光ファイバに沿った連続的なひずみ検出技術とひずみ情報にもとづく形状計測技術の極限的な精度・分解能・応答性を追求する。さらに形状の時空間情報にもとづく構造健全性評価・管理手法について、ケーブルを対象に検討する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、海洋で利用される線状構造体の設計・敷設・運用・保守を最適化するため、線状構造体の形状計測技術の開発と海中ケーブルの健全性評価・管理手法の開発の2つの開発課題を設定する。初年度である2023年度は、線状構造体の形状計測技術に関する課題に取り組んだ。 まず4コアのマルチコアファイバ(MCF)のひずみ分布を高精度・分解能、リアルタイムに計測可能な4chの光周波数領域反射計(OFDR)を用いたひずみ計測システムを構築した。計測距離を20m、ファイバグレーティング(FBG)からの反射光を用いた4chひずみ計測を可能とするひずみ計測システムを設計・開発した。波長可変光源は新しく開発はせず現有設備を使用する一方、高速なADCと信号処理部をもった計測用計算機を構築した。4コアがらせん状に配置され、各コアにFBGが連続して導入されている長さ2メートルのMCFを準備し、形状を変えながら開発したひずみ計測システムを用いて4chの同時計測を行った。従来の信号処理方法(短時間周波数解析STFT)により、1Hz程度の連続計測が可能となった。新しく参照データ(初期値)との位相差にもとづく高速アルゴリズムを開発し、次年度以降実装する。さらに開発した形状計測手法を計測ひずみに適用し、形状計測を実施した。ここで、形状計測技術の精度評価指標が確立されていないため、形状計測の評価として局所的な曲率や捩率の精度に加え、全体形状や特定位置での変位の精度が指標を検討した。この評価手法により、開発したひずみ計測システムによる形状計測の誤差が大きいことを定量的に分析することができた。干渉計のSN比を向上するために行った変更によって各チャンネルの計測位置にずれが生じたことが原因であると判明し、開発したシミュレーションにより解決策を見出すことができた。干渉計の構成を修正することで精度を向上させられることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するため、線状構造体の形状計測技術の開発と海中ケーブルの健全性評価・管理手法の開発の2つの開発課題を設定している。 2023年度は、形状計測技術に関して、4コアのマルチコアファイバ(MCF)のひずみ分布を高精度・分解能、リアルタイムに計測可能な4chの光周波数領域反射計(OFDR)を用いたひずみ計測システムを構築した。申請段階では計測距離を200m、レーリー後方散乱光を用いたひずみ計測を提案していたが、予算の減額、機器類の想定以上の価格高騰のため、計測距離を20m、ファイバグレーティング(FBG)からの反射光を用いた4chひずみ計測を可能とするシステムに変更した。2024年度に、本研究の主題である信号処理手法の高速化、高精度化のための形状同定アルゴリズムの改良を検討する。レーリー後方散乱光からFBGベースの計測システムの変更があっても、信号処理手法の高速化、形状同定アルゴリズムの改良は可能であり、また、予定している健全性評価・管理手法の開発への影響もほとんど考えられない。 また、形状同定システムの精度が系統的に議論された論文は見当たらず、その理由として精度を評価する指標が確立されていないことがあげられる。形状計測の評価として局所的な曲率や捩率の精度に加え、全体的な形状や特定位置での変位の精度が指標を検討した。この評価手法により、開発したひずみ計測システムによる形状計測の誤差が大きいことを定量的に分析し、誤差の原因追求、改善方法の効果などを評価することができた。 ほかに2023年度に予定していた既知点を複数個与えた形状同定アルゴリズムの開発について、シミュレーターを用いたアルゴリズムの評価を実施し、端点位置を拘束条件として与えるのみで全体的な形状の精度が大幅に向上することが分かった。 以上のことから概ね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、3倍の感度向上が期待できる太径マルチコアファイバ(MCF)と開発したひずみ計測システムの組み合わせによる形状計測の極限的な性能追及を目指していたが、2023年度に開発した計測システムは、やむを得ない理由で仕様変更したため、ファイバブラッググレーティング(FBG)を導入した通常径のMCFで研究を進める。太径MCFの利用以外で、2024年度以降に予定している研究計画に変更はない。 まず2024年度は、MCFとひずみ計測システムを用いた海中ケーブルの形状同定システムを開発する。MCFを沿わせた中性浮力を持つケーブルを水槽に展開し、実験的に精度、応答性を検証する。またOFDRシステムの性能の最適化を図る。特に最適な空間分解能、データ圧縮方法を検討する。海中ケーブルを対象として、現状で実現し得る最高精度の長距離形状同定システムであることを示す。精度の評価指標には前年度に検討したものを利用し、参照可能な研究があれば比較する。 2025年度は前年度に開発したMCFを沿わせたケーブルを水槽に展開し、重量増加による着底や過大な変形などを再現し、計測結果を分析したのちに早期検知が可能なアルゴリズムを検討する。治具を開発し、ケーブル端部を2次元的に動かしたときのケーブル全体の挙動を計測する。蓄積したデータから端部の動きからケーブル全体の挙動を強化学習により推定することができるかを検証する。次に、外乱を与えてケーブルの曲率を変化させた場合、端部の位置制御によりケーブル全長にわたり所定の曲率分布になるよう制御が可能かという問題を設定し、強化学習を用いた制御手法の開発に取り組む。海中ケーブルの制御手法として、新しいアプローチとして提案する。
|