研究課題/領域番号 |
23K26352
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補助金の研究課題番号 |
23H01658 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古川 愛子 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00380585)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2027年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2026年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 石造アーチ橋 / 地震動 / 数値解析手法 / 個別要素法 / 耐震対策 |
研究開始時の研究の概要 |
我が国では,「インフラ長寿命化基本計画」が策定され,国や地方公共団体等が一丸となってインフラの長寿命化を推進している.近代的建造物を対象とした長寿命化が主体であるが,歴史的建造物の長寿命化も重要である.本研究では,歴史的建造物である石造アーチ橋(石橋)を対象とし,地震によって大きな被害に至ることなく,軽微な補修で永く使い続けるための方法論について研究する.具体的には,石橋の立地の特殊性を踏まえた地震動評価手法と,石橋の破壊メカニズムを踏まえた数値解析手法を開発し,発生が予測される最大級の地震動に対しても,軽微な補修で復旧できる範囲に被害を留めるための耐震対策を検討する.
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研究実績の概要 |
熊本の石橋において,麓の地盤の震動計測を行い,近傍強震観測点の地盤の震動計測結果と比較した.通潤橋では麓の地盤の卓越振動数が周辺地盤に比べて高かったが,今回対象とした石橋では,麓の地盤の卓越振動数は周辺地盤に比べてやや高いものの,大きな差はなかった.石橋毎に傾向が異なることが示唆された.麓の地盤の震動計測に関しては,計測場所を離して結果を比較したが,計測場所によって結果に大きな違いはなく,空間的なばらつきは検出されなかった.また,麓の地盤の卓越振動数と石橋の固有振動数の関係を調べたところ,通潤橋では麓の地盤の卓越振動数が石橋の固有振動数に比べて2倍以上大きかったが,今回対象とした石橋では,麓の地盤の卓越振動数と石橋の固有振動数が同程度であり,共振の恐れのあることがわかった. また,石橋の崩壊メカニズムを理解するため振動台実験を実施した.中詰め材が崩れて,崩れた中詰め材が壁石を押して壁石が中詰め材とともに崩壊するという崩壊メカニズムが確認された.アーチ中央に比べて,アーチ端部の方が,中詰め材が厚く堆積しているため,中詰め材が崩れやすく,崩れやすいことがわかった. さらに,石橋の数値解析手法を確立するため,個別要素法を用いて振動台実験の再現解析を実施した.六面体要素を組み合わせることで,様々な形状の輪石,壁石,中詰め材をモデル化した.中詰め材は自由落下により充填させた結果,実験と数値解析とで,同程度の充填率を達成できた.物性値は,実験による固有振動数と数値解析による固有振動数が一致するように試行錯誤により決定したが,橋軸方向の固有振動数と橋軸直角方向の固有振動数を同時に一致させることはできなかった.また,振動台実験と数値解析結果を比較した結果,崩壊のタイミングを再現することができなかったが,実験で早く崩壊したモデルは,数値解析でも早く崩壊し,崩壊のしやすさの大小関係は再現できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震動計測,振動台実験,個別要素法を用いた数値解析の3項目を実施することができ,3項目とも有益な知見が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
●石橋の震動特性の把握:異なる石橋において麓の地盤の震動計測を実施し,石橋の麓の地盤の震動特性の特徴と傾向を把握する.また,石橋の近傍の地震観測点でも振動計測を実施し,石橋建設地点の地盤の震動特性と,近傍の地盤の震動特性とを比較し,石橋建設地点の地盤の震動特性の特徴を把握する.さらに,石橋そのものの振動計測も実施し,麓の地盤の震動特性と石橋の振動特性の相関などを調べて,全体系の動的特性の特徴を把握する. ●振動台実験では,当然のことながら供試体の加工精度には限界があり,積み上げ方や型枠の外し方,境界条件によって供試体にばらつきが生じる.また,治部の構成が崩壊挙動と無関係でもない.したがって,振動台実験の再現性を高めるために,治具の設計を含め,供試体の作成・設置方法に工夫しながら,より実際に近い石橋模型を作成し,より信頼性の高い実験結果を得られるように改善をしていきたい.その上で,様々な条件での振動台実験を実施し,データを蓄積していきたい. ●個別要素法を用いた数値解析では,供試体の加工精度の限界や,石材表面に凸凹があるため,供試体と解析モデルは完全に同一にはできない.また,石材のヤング率と接触剛性は異なることから,石材のヤング率を用いて石材をモデル化することは適切でない.個別要素法を用いて石橋の数値解析を実施する際の,石材のモデル化手法や物性値の決定方法について更なる検証が必要であることから,実験の実施と実験の再現解析を通して,数値解析におけるモデル化手法の改良や,物性値の決定方法について改良を重ねる. ●石橋の耐震対策について,伝統的な工法を収集し,振動台実験や数値解析に取り組み,有効性の評価を行い,メリット,デメリットを分析していきたい.
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