研究課題/領域番号 |
23K26364
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補助金の研究課題番号 |
23H01670 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26010:金属材料物性関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 博之 京都大学, 工学研究科, 助教 (50727419)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
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キーワード | 新規物質探索 / 機械学習 / 自律運転ロボット / 合成実験 / 酸化物 / ロボット協働合成実験 / 合成条件推薦システム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究で対象とする無機物質の場合、既知物質の機能を大きく凌駕する新物質が発見できれば、物性発現機構の理解を深化するだけでなく、産業のイノベーションにも繋がることが期待される。「どのような物質が存在するか」という理論計算からの知見と、「どのように合成すればよいか」という合成実験からの知見を融合的に用いる本研究独自の手法を開発することで、これまで試行錯誤的に行われてきた材料探索の高効率化を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は「マルチデータベース学習による多元系材料の推薦システム開発」であり、多数の合成実験結果を整理した合成条件データベースと、様々な物質の熱力学的安定性や物性の計算値を整理した計算データベースを統合的に用いて物質の合成可能性を記述する新しいフレームワークの開発を目指す。従来からあるような、データベースに基づいた単なるスクリーニングや、目的物性に特化したデータベースに対して機械学習手法を適用するものではなく、性質の異なる複数のデータベースにそれぞれ潜在する物質科学的情報を抽出および融合し、多角的かつ高精度に目的物性を評価できる手法の開発を目指している。 2023年度は、まず比較的単純な物質である擬二元系酸化物に対するデータベースを充実させることに注力した。具体的には、20種の元素に対する原料を選択し、それらを様々な混合比で混ぜ合わせ、酸化物の代表的な合成手法である固相反応法、および液相法の一つである錯体重合法により、計1万程度の合成実験を行った。効率的に合成実験が行えるようにロボットとの協働作業化を実施するとともに、試料の相同定にもロボットによる自動化と解析の自動処理を導入した。当初の計画ではこれらのデータをテンソル型データベースにして、テンソル分解手法によって原料名などを潜在的な数値空間上のベクトルに変換して多元系の合成実験条件の予測システムを構築する予定であった。一方で近年、生成AIに代表される自然言語処理の分野でも用いられるニューラルネットワークを用いた数値ベクトル作成手法も取り入れるべく、技術開発を行った。現時点ではニューラルネットワーク手法で得たベクトルとテンソル分解手法で得られたベクトルの比較検討を行っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、これまで定性的にしかとらえられていなかった原料の特徴を、大規模なデータと機械学習手法により定量的なベクトルとして表現することで、原料の組み合わせなども潜在ベクトル空間上で処理するモデルを構築することを目的としている。当初の予定ではテンソル分解手法を用いることでこの目的の達成を予定していたが、近年自然言語処理分野での発展が著しいニューラルネットワークを用いた手法も並行して取り入れることを計画に取り入れた。手法の実装とテスト、および実データへの適用を行ったため当初の予定より若干の遅れはあるが、本手法によってより複雑な非線形空間への合成パラメータの展開が可能になったことで、多元系酸化物の合成成否の予測がより広い範囲へ展開できるものと期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ニューラルネットワーク手法により獲得した合成パラメータの数値ベクトルと、テンソル分解法による数値ベクトルの比較検討をより詳しく行い、それぞれの適用範囲の見極めを行っていく予定である。また本手法は計算データベースに適用することで熱力学的安定性に寄与する物質の構成イオンなどの数値ベクトル化にも用いることができる。これらを複合的に用いることで、熱力学的安定性だけでは評価できない物質の合成可否に関して、実際に検証実験を行いながら予測モデルの構築を行っていく。
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