研究課題/領域番号 |
23K26373
|
補助金の研究課題番号 |
23H01680 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中島 章 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (00302795)
|
研究分担者 |
石黒 斉 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 「次世代ライフサイエンス技術開発」プロジェクト, プロジェクトリーダー (00381666)
磯部 敏宏 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (20518287)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2024年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
|
キーワード | ウイルス / 複合酸化物 / 希土類 / 固溶体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は各種複合酸化物の抗ウイルス活性を評価するとともに、その発現機構を材料科学的に解明し、これらの材料の各種ウイルスに対する抗ウイルス活性に及ぼす組成・構造等の各種特性の効果を、既往の報告と併せて分析する、そして得られた知見を基に抗ウイルス活性を極限まで高め、世界最高水準の抗ウイルス材料の創製に繋げる。また抗菌活性・抗真菌活性との関係性や、循環系での性能についても明らかにする。本研究の成果は、人類の脅威であるウイルス関連被害への対策技術になるとともに、大規模自然災害の被災地等における衛生環境の確保にも貢献できる。
|
研究実績の概要 |
希土類元素を含む酸化物La2Sn2O7 (LSO), Y2Cu2O5, La2CuO4, Y2Sn2O7, イットリア安定化ジルコニア(YSZ)の抗菌・抗ウイルス活性を評価した。また、Mg2SnO4, MgSn(OH)6, Al2CuO4および各種複合酸化物に含まれる含まれる元素の単純酸化物の抗菌・抗ウイルス活性も評価し、希土類を含む酸化物と比較を行った。抗菌・抗ウイルス活性の評価はISO規格を参考にした手順で実施した。抗菌試験の結果、希土類(La, Y)を含む酸化物はグラム陰性菌とグラム陽性菌両方に対し、比較材料より高い抗菌活性を示す傾向が確認された。また、抗ウイルス試験の結果でも、エンべロープ型ウイルスとノンエンべロープ型ウイルス両方に対し、希土類を含む酸化物が高い抗ウイルス活性を示す傾向が確認された。メカニズムの調査の結果、抗菌・抗ウイルス活性は、いずれの試料も吸着とタンパク質の変性によって引き起こされる可能性が高いことが確認された。希土類を含む酸化物はリン酸との親和性や、負電荷の吸着に有利であることや、タンパク質の変性に有利であることが確認され、高い活性に繋がったと考えられる。Snを含む試料によるタンパク質の不活化はMars-van Krevelen機構による可能性が考えられた。また、希土類酸化物のリン酸や負電荷吸着は複合酸化物にすることにより向上することも確認された。試料による細胞毒性は確認されなかったため、生体安全性が高い可能性が確認された。これらの中で特にY2Sn2O7は、非溶出型の優れた抗ウイルス材料になる可能性が見出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初計画は、単独酸化物での抗菌・抗ウイルス活性の報告があることに加え、溶解性、酸性/塩基性度、合成の難易度、コスト、安全性等を考慮して元素の組み合わせを考え、まだデータが得られていない元素の組み合わせで構成される複合酸化物を合成し、抗ウイルス活性とその作用機構を解明して知見をさらに蓄積することであった。上記のようにCu, Al, Mgを中心に、多くの複合酸化物について、抗菌・抗ウイルス活性の知見を集積できた。このことから研究は概ね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度はさらにZn, Bi, Snの各種複合酸化物、並びにCeO2固溶体について知見を集積する。特にCeO2は希土類を固溶することで非常に抗ウイルス活性が向上することが、これまでに明らかになっている。これらの物質群について 引き続きデータの蓄積を継続するとともに、これら得られた知見をもとに、各種ウイルスに対する抗ウイルス活性とその評価方法、機構、細胞毒性、化学組成 (全体組成と表面分析)、構造、結晶性、酵素タンパク質の不活化活性、pH、漏出イオン濃度、酸/塩基性度等との関係性について整理・分析を行い、それぞれの相関を評価する。分析には複合酸化物だけでなく、これまでに得られた単独酸化物や固溶体酸化物のデータ、さらに学術論文で報告されている様々な酸化物の抗ウイルス活性に関するデータも導入し、複合酸化物群のポテンシャルとして最高になると考えられる組成系を探索する。
|