研究課題/領域番号 |
23K26376
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補助金の研究課題番号 |
23H01683 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
大幸 裕介 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70514404)
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研究分担者 |
小幡 亜希子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40402656)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | イオン伝導 / イオン放出 / ガラス / 細胞培養 / 抗菌 / イオン照射 / 細胞活性 / CNC制御 |
研究開始時の研究の概要 |
イオン照射による細胞の増殖や活性向上など,細胞死とは真逆の効果や,未照射の周囲細胞にもイオン照射効果が現れる遠達効果などが報告されている。しかし細胞へのイオン照射はこれまで大型のサイクロトロン施設などでのみ実施され,世界的に報告例は少ない。本研究で扱うイオン銃は1 cm程度に小型化でき,大気圧条件でイオン放出可能である。この非真空・小型の特徴を最大限に生かし,イオン照射後の細胞応答を観察することで,イオン照射に伴う細胞の活性化もしくは細胞死の誘導などに関する詳細を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では,細胞に対して任意量の目的イオンを大気圧で直接照射・観察する実験系を構築し,どの程度のイオン照射で細胞増加と細胞死が誘導されるかイオン照射量のしきい値,また照射するイオン種と細胞活性など,細胞に対する各種イオンの照射効果を明らかにすることを目的とする。これまではイオン銃先端の高さが0.5 mmずれてもイオン電流値が著しく変化して定量評価を困難にしていた。また被照射範囲が直径数mm程度と狭く,培養プレートにはイオンの照射されていない細胞も含まれていた。初年度は計画書に記載の自動イオン照射装置を構築した。これにより照射位置や高さ,照射範囲を高い再現性でセットでき,またウェルプレートの異なるセルに対してそれぞれ異なる照射条件(加速電圧,照射時間など)を連続的に実施できるようになり,従来より短時間で10倍以上の個数の試料を一度に評価可能となった。大気圧条件では大気分子による放電も同時発生していたが,条件を検討したところおよそ100%の効率で銀イオンのみが放出可能な条件を新たに見出した。 倒立型の位相差顕微鏡とイオン照射を同期させることで,in-situ顕微鏡観察を実施した。細胞死に伴い位相差像の明度が変化することから,位相差像の平均明るさを求めたところ,典型的なシグモイド型のカーブが得られた。Ag+イオン照射による細胞死の誘導に閾値が存在することを示唆する結果であり,具体的なイオン照射量の定量などを進める。またマウスマクロファージ(RAW264)に対するイオン照射では,照射時間の増加に伴いやや細長く伸長した細胞が散見されるようになった.複数回実験を続ける中で,この細胞形態の変化(伸長)はイオン照射域のごく周囲(照射の直撃を受けていないと思われる周辺域)で特に顕著に見られることが新たに明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに大気圧で計測可能な質量分析計を構築して大気放電の影響を評価することで,銀イオンのみが放出される条件を見出した。またイオン照射と観察を行う実験系の構築についても概ね完成した。細胞に対してイオン電流値を直接評価することはできなかったが,今後はイオン照射量がリアルタイム計測可能となり,定量評価を進める。
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今後の研究の推進方策 |
構築した自動照射システムを用いて,イオン種や照射量と細胞応答との関係を明らかにする。銀イオンと銅イオンについてはイオン放出に適した条件などが明らかになっており,これらのイオン銃を用いて,特に 細胞の増減を決定するイオン照射量のしきい値の定量化について,優先して取り組む。細胞死(細胞 毒性)や細胞増の詳細な機構は,細胞数,代謝活性,分化,細胞形状,分裂挙動などから評 価する。In-situ顕微観察システムでは,イオン照射時の細胞形態変化をその場観察でき,これまで主に位相差像の変化に注目してきた。今年度以降は蛍光色素を用いることで,より詳細なイオン照射と細胞応答の関係を調査する。細胞に実際に取り込まれるイオンの量について,感度の高いICP分析(外注)より明らかにすることを目指す。
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