研究課題/領域番号 |
23K26379
|
補助金の研究課題番号 |
23H01686 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
塩貝 純一 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30734066)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
|
キーワード | 自立型メンブレン / 2次元物質 / 熱電効果 / 薄膜 |
研究開始時の研究の概要 |
IoT機器を駆動する持続可能な環境発電の候補として、体熱や廃熱を電力に変換する熱電効果が注目されている。熱電性能指数向上のためには、高電気伝導度と低熱伝導度を満たす必要がある。しかし、ウィーデマン・フランツ則のため、単一物質でこれらを同時に満たすことは困難である。一方、薄膜研究では、次元性を制御して高い性能指数を得る工夫がされているが、格子整合性のため物質や構造が限定されている。これら既存の問題を解決する手段として、自立型メンブレンの積層構造を提案する。本課題では、3次元物質と2次元物質の積層構造や超格子を作製し、従来の物質科学の限界を突破する革新的熱電素子の概念を実証する。
|
研究実績の概要 |
本課題では、エピタキシャル薄膜成長、エッチング、転写の技術を用いて、3次元的な結晶構造をもつ物質と2次元物質の積層構造や超格子構造を実現することで、異方的な積層構造が熱電効果に与える影響を明らかにし、従来物質を越える熱電機能を示す素子の実現を目的とする。このために、(1) 高熱電材料と低熱伝導物質の積層構造の実現、(2) 積層によるゼーベック効果やネルンスト効果の増大、(3) 2次元磁性体が示す異常ネルンスト効果を活用した熱電素子の開発を計画している。(1)と(2)に関しては、当該年度は分子線エピタキシー法を用いて、FeSeとSrTiO3の薄膜積層構造の作製に成功し、ゼーベック効果やネルンスト効果の観測に至った。今後は、FeSe層の膜厚を調整することで、FeSe特有の電子状態を活用した熱電効果の観測を目指す。(3)に関しては、当該年度はパルスレーザー堆積法を用いて、CrSeのエピタキシャル薄膜を得ることに成功した。本物質は、反強磁性的に結合したCrスピンが、二次元の三角格子状に並んだフラストレーション系である。このような状況では、非共面的なスピン構造が現れ、ネルンスト効果が増大すると期待される。本研究では、薄膜成長条件を整えることで、薄膜試料で初めて金属伝導を得ることに成功し、磁気抵抗効果とホール効果測定から、本物質薄膜が非共面的なスピン構造をもつことを明らかにした。さらに、適切な単結晶基板を用いることで、CrSeの結晶ドメインの制御ができるという予備的な実験結果が得られた。今後は、本物質の熱電効果測定を進めると共に、CrSeの薄膜成長で得られた知見を元に、類縁物質の薄膜合成にも取り組む。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FeSe/SrTiO3の薄膜積層構造やCrSe薄膜の成長条件を明らかにし、これらの薄膜試料における磁気抵抗効果の物性評価が順調に進んでいる。さらに、FeSe/SrTiO3の積層構造では、熱電特性の評価が既に進んでおり、予備的な結果であるが、FeSeの特異な電子状態を反映したネルンスト効果が得られている。また、2次元磁性体のCrSe薄膜成長については、当該年度内に論文化できた。以上より、当該年度の研究内容はおおむね計画通り進んでいると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度で得られたそれぞれの薄膜積層構造と物性評価の結果を元に、熱電素子としてのポテンシャルを明らかにする。具体的には、FeSe/SrTiO3のFeSe層膜厚及びキャリア濃度依存性を評価し、ネルンスト効果に対する積層構造の影響を明らかにする。また、CrSe及びその類縁物質の物質開発と物性評価も進め、最終的には熱電効果の評価とその構造依存性を調べる。
|