研究課題/領域番号 |
23K26401
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補助金の研究課題番号 |
23H01708 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中谷 真人 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30725156)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
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キーワード | 環境発電 / 熱電変換 / フレキシブル材料 / フラーレン / 酸化物ナノクラスター / ウェアラブルデバイス / ナノクラスター / 金属酸化物 / ナノクラスター集積個体 / マルチスケール計測 / ゼーベック効果 / フレキシブルデバイス |
研究開始時の研究の概要 |
近年,電子機器は「周辺に配置するモノ」から「人間が装着するモノ」に変貌しようとしており,このような人体装着型素子の実現と普及は,モノのインターネットを基盤とする近未来の安心・安全な社会を実現するための鍵である。ヒトの体温から電力を取り出す高性能熱電変換素子は,様々な人体装着型素子のワイヤレスで電池レスな電源としての利用価値が高い.本研究では,フラーレン分子と金属酸化物ナノクラスターを溶液中で複合化させることで「ナノクラスター集積固体」と呼ばれる新材料群を創製し,高性能熱電変換素子を大量生産するための基盤技術を開発する.
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研究実績の概要 |
本研究では、フラーレンと金属酸化物ナノクラスターからなる複合薄膜を溶液原料から作製する方法論を開発し高性能熱電材料へ応用することを目的としている。2023年度は、試料作製のための設備の準備や基礎データの取得および評価方法の検討を進めた。 N-メチル-2-ピロリドンを溶媒としてフラーレン粉末を溶解させることでフラーレン原料溶液を調製し、これを雲母基板へドロップキャストおよびスピンコートすることでフラーレン薄膜を作製した。スピンコート法では、試料全面(1.5 cm×2.5 cm)に均一な薄膜を形成できたが、電気特性および熱電特性の計測に必要な厚さ(約100 nm以上)の薄膜を形成することは困難であることが分かったので、今後はよりフラーレンの溶解度が大きな溶媒を使用した高濃度フラーレン溶液を原料とした製膜が必要である。また、多段階ドロップキャスト法により成膜した場合は、電気特性および熱電特性の測定が可能な薄膜を作製することができた。この方法では、膜厚の均一性が劣るものの乾燥プロセスの高速化などで改善できる可能性を見出した。また、金属酸化物ナノクラスターの原料溶液として三酸化モリブデンからなるポリオキソメタレート(POM)を形成する準備も進めた。今後は、適切なPOM溶液をフラーレン溶液と混合させ、混合溶液をドロップキャスト/スピンコートすることで複合膜を作製する方法を検討する。 さらに、複合薄膜の構造および化学状態の評価方法としてX線吸収微細構造分光法(XAFS)を検討した。三酸化モリブデンとフラーレンの真空共蒸着法によって複合膜を作製しXAFS測定を行ったところ、サイズ約1 nmの三酸化モリブデンナノクラスターがフラーレン薄膜中に分散しP型ドーパントとして機能していることを示す結果が得られた。今後はXAFSを溶液原料から作製した複合薄膜の評価方法として利用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、フラーレンと金属酸化物ナノクラスターからなる複合薄膜を溶液原料から作製する方法論を開拓し高性能熱電材料群の開発に資することを目的としている。2023年度はフラーレン溶液および金属酸化物ナノクラスター溶液の調製・準備を進めた。N-メチル-2-ピロリドンを溶媒としてフラーレン粉末を溶解させることでフラーレン原料溶液を調製し、これを雲母基板上へ多段階ドロップキャストすることで電気特性および熱電特性の計測が可能な薄膜を形成できることを見出した。金属酸化物ナノクラスターの原料溶液として三酸化モリブデンからなるポリオキソメタレート(POM)を形成する準備も進めた。また、真空蒸着法で作製した複合膜をX線吸収微細構造分光法(XAFS)で評価したところ、サイズ約1 nmの三酸化モリブデンナノクラスターがフラーレン薄膜中に分散しP型ドーパントとして機能していることを示す結果が得られた。この知見は、溶液原料から作製した複合薄膜内部の金属酸化物ナノクラスターの構造および化学状態を評価する方法としてもXAFSが有効であり、XAFSを活用することで、優れた熱電特性を示す複合膜の作製条件を効率的に探索できることを示している。 以上から本年度は、当初の研究計画と照らし合わせて良好な進捗が得られたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
フラーレンと金属酸化物ナノクラスターからなる複合薄膜を溶液原料から作製する方法論を開拓するために、2024年度は下記の2種類の方法を基にした複合膜形成を本格化し、複合薄膜の構造、電気特性、および熱電特性の評価を進める。 (1)金属酸化物をターゲットとしたマグネトロンスパッタによってイオン液体内へ金属酸化物ナノクラスターを分散させ金属酸化物ナノクラスター溶液を作製し、フラーレンが溶解した有機溶媒と混合させることで原料溶液の作製を目指す。 (2)モリブデンやタングステンの酸素酸の脱水縮合反応によりナノクラスター[ポリオキソメタレート(POM)]を溶液中で合成できることが知られており、水を溶媒とする場合は、POMのサイズや構造を溶液のpH、濃度、溶液温度などで制御可能である。この知見を利用して、金属酸化物ナノクラスター含有溶液を液相合成によって調製し、フラーレン溶液と混合させることで原料溶液を作製することも並行して進める。 以上の混合溶液を基板上へドロップキャスト/スピンコートすることで複合薄膜を作製し、ドメイン構造や分子配列構造を原子間力顕微法および走査トンネル顕微法によって分子スケールで詳しく調べる。熱電特性の評価については、これまで研究代表者らは、薄膜上に幅数μm間隔で形成した金属電極を局所加熱することで, 薄膜試料のゼーベック係数をマイクロスケール評価することに成功しており、本研究でもこの方法を利用することで薄膜のゼーベック係数を評価する。また、X線吸収微細構造分光法(XAFS)によって複合膜中の金属酸化物の化学状態や配位構造を調べると共に、 膜中に分散した金属酸化物ナノクラスターとフラーレンとの電子的相互作用を紫外光電子分光法(UPS)によって系統的に明らかにする。
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