研究課題/領域番号 |
23K26412
|
補助金の研究課題番号 |
23H01719 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
土谷 浩一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, センター長 (50236907)
|
研究分担者 |
宮川 仁 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 主任研究員 (40552667)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
|
キーワード | マルテンサイト変態 / 低サイクル疲労 / 変形双晶 / 高エントロピー合金 / 中エントロピー合金 / FCC-HCP変態 / 積層欠陥 / 転位 |
研究開始時の研究の概要 |
準安定オーステナイト鋼等で見られるFCC→HCPマルテンサイト変態の詳細については不明な点が多い。近年、国際的に研究が盛んなFCC系高エントロピー合金についてもFCC→HCP変態を利用した強度-延性バランスに優れた合金が多数報告されているが、低サイクル疲労に関する研究は少ない。我々は最近Co-Cr-Mo-Ni系中エントロピー合金について、HCP相と変形双晶が束になった組織が形成する場合に低サイクル疲労寿命が大きく向上する事を見出した。 本研究ではこの様な組織の生成機構を明らかにする事で、加工硬化率と低サイクル疲労特性をさらに向上させ、高強度・長寿命ステント素材への展開をはかる。
|
研究実績の概要 |
Cr20Mn20Fe20Co30Ni10合金(以下、Ni10), Cr20Mn20Fe20Co25Ni15合金(Ni15)について,高周波溶解でインゴットを作成後,1000℃において鍛造,溝ロール圧延して棒状の試料を作成した。 熱処理温度と時間によりオーステナイト結晶粒を変える事を試みた。その結果、熱処理時間よりも温度の方が粒径の粗大化に有効である事がわかった。例えばNi10では800℃30分の熱処理後では7.9μmだった結晶粒が1000℃-30分の熱処理では15.2μm、さらに1200℃では47.3μmと粗大化した。NI15についても同様な結果が得られた。一方でCo45Cr23Mo6Ni26合金(CCMN26)合金については800℃ 熱処理材では36.8μm,1200℃では46.0μmとあまり変化がなかった。両合金において、より広い範囲で粒径を制御するには焼鈍双晶の量を制御する必要がある事が明らかになった。 Co51-xCr23Mo6Ni20+x系合金(CCMN)について室温で引張り試験後の試料について微細組織観察を行った。Ni量が26at%以下の合金ではFCC-HCP変態、積層欠陥・ナノ双晶が主要な変形モードであるが、Ni量が26at%以上に増えると転位すべりが支配的変形モードになる事が確認された。時に優れた強度延性バランスをしめす26合金では変形モードが共存する事が強度・延性バランスや低疲労寿命向上に貢献すると考えられる。 Cr20Mn20Fe20Co40-xNix合金についてHPT加工による結晶粒微細化と加工後熱処理による構造・組織変化についても調べた。各合金について650℃による熱処理後の構造・組織について調べたところ、粒径100~150nmの再結晶粒が見られた。またNiを15at%以上含む合金ではσ相が生成する事が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cr20Mn20Fe20Co40-xNix合金、Co51-xCr23Mo6Ni20+x系合金(CCMN)について熱処理による結晶粒径の制御について貴重な知見が得られつつある。CCMN合金については結晶粒径が熱処理温度に不備感という興味深い現象が見られた。この原因については今後の研究で明らかにする事で、組織制御に関する新たな提案が生まれると期待される。 室温引張り特性と変形後の組織についてもデータが蓄積されつつある。 CCMN合金の結晶粒径制御の部分が若干遅れてはいるが、研究全体としては概ね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、Cr20Mn20Fe20Co40-xNix合金、Co51-xCr23Mo6Ni20+x系合金(CCMN)の結晶粒径制御の検討を続けるとともに、今年度は両合金の室温力学特性、疲労特性と変形後の微細組織観察に関す研究に重点を置く。特にTEM観察によるHCP相、ナノ双晶の形成と結晶粒径の相関について明らかにしたい。またHPTや冷間線引きなどの強加工した試料についての熱処理と結晶粒径、力学特性、変形モードの関係を明らかにする。 高圧負荷により室温かつ同一組成でΔG(HCP-FCC)を変化させる事ができ,FCC→HCP変態への自由エネルギー効果についての直接的な情報が得られる。そこでベルト型高圧発生装置により各種合金に室温で9.4GPaまでの静水圧を負荷した試料について,HCP相や双晶の生成量と形態の圧力及び時間依存を明らかにする。これによりFCC→HCP変態のキネティクスに関する議論も可能になる。また予備的に高圧ねじり加工装置による5 GPaまでの擬静水圧負荷による組織変化も観察しHCP相,HCP-twin bundleの生成や形態に与える圧力効果を解明する。
|