研究課題/領域番号 |
23K26423
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補助金の研究課題番号 |
23H01730 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
服部 賢 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (00222216)
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研究分担者 |
吉村 哲 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (40419429)
服部 梓 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80464238)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 11,180千円 (直接経費: 8,600千円、間接経費: 2,580千円)
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キーワード | ナノスケール立体造形 / ナノ立体磁性薄膜 / 磁気渦 / 立体形状強磁性ナノ薄膜 / 磁気結合 / スキルミオン・エレクトロニクス / 立体形状造形技術 / カー効果顕微観察 |
研究開始時の研究の概要 |
スピンの渦状の秩序構造が生み出すnmサイズのスキルミオンは、不揮発性、高速駆動性と高集積が可能なためカーボンニュートラル社会を担う次世代の大容量情報担体となり得ます。 スキルミオンの安定的な生成・駆動のボトルネックとなっていたスピン立体配置の人為的な制御を、研究代表者らの精緻なナノ立体空間加工・造形技術で実現し、スキルミオンの特性を決める位相幾何学的な支配因子と磁気的相互作用を結ぶ学理を構築し、堅牢性と安定性を両立したスキルミオンを情報担体としたメモリデバイス機能へと展開します。
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研究実績の概要 |
当該年度は、立体構造パラメーターを制御した立体強磁性ナノ薄膜構造試料を作製し、磁気的秩序構造とその動的挙動の理解のためカー効果顕微鏡を新規に導入し、磁気渦構造の直接的な顕微観察に成功した。 立体強磁性ナノ薄膜構造試料は、フォトグラフィー技術を用いて、Si(001)基板上に4方向のSi{111}面をもつピラミッド形状のテンプレートを準備し、その上にFeを約50 nm蒸着することで作製した。作製したピラミッド形状の寸法はマイクロメートルスケール(辺長約15-20 μm)で、ピラミッド同士の間に数μmの隙間を開けた。立体ピラミッド形状に由来する強磁性ナノ薄膜間の磁気結合の様相を理解するために、立体ピラミッド形状の3Dナノ薄膜とピラミッドの隙間(基板平坦部)の2Dナノ薄膜が磁気結合している試料(3D-2D試料)と、2Dナノ薄膜を除いた3Dナノ薄膜のみの試料(3D試料)を作製した。 2種類の立体強磁性ナノ薄膜構造試料を消磁し磁気的な安定構造を準備した。カー効果顕微鏡測定によるヒステリシス解析を適用して、この初期状態の磁化の空間分布を調べた結果、3D-2D試料では2Dナノ薄膜内の磁気結合が強く3Dナノ薄膜内においても初期の安定磁化は一様な方向が出現する傾向にあること、一方、3D試料では2Dナノ薄膜の磁気結合の影響がないため安定磁化は3Dナノ薄膜内でピラミッド頂点を中心とする磁気渦を形成する傾向があることが分かった。 以上の実験結果は、立体形状に直接由来する磁気結合の様相や磁気渦の形成を議論するには、2Dナノ薄膜排除の必要性を直接的に示しているとともに、更には2Dナノ薄膜の接続の様態を制御することにより新たな設計を成し得ることも示唆している点で重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、磁気渦構造を生み出す幾何学的要因の同定に注力するため、立体構造パラメーターを制御したナノ立体薄膜構造試料の作製、及び磁気的秩序構造の直接顕微測定を予定していた。実際に、ナノ立体薄膜構造試料の作製を行い、カー効果顕微鏡を新規に設置し、立体薄膜構造試料の磁気的秩序構造を直接観察し得たので、この点は順調に研究が進んでいると言える。一方、立体形状など形状因子を変化させた際の磁気応答評価については未だ試験的段階であるため完了していない。従って、概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
磁気渦構造を生み出す幾何学的要因(=立体性の効果)の理解のために、ナノ立体薄膜構造試料における立体構造パラメーターとして、ピラミッド構造以外に傾斜ライン構造や多角錐構造など異なる形状を候補とし、初期安定磁化構造の空間分布の系統的評価への展開を今後の推進方策の柱とする。そこでは磁気渦構造が安定して存在し得る形状条件範囲の探索も行う。 また前年度の研究成果より、3Dナノ薄膜領域を囲う2Dナノ薄膜の接続の様態の制御も重要であることが示唆された。そこで、立体形状テンプレートSi試料へのマスクパターン構築という更に高度な作製技術を併せることで、2Dナノ薄膜パターンを制御した3Dナノ薄膜領域自体の初期安定磁化構造の評価も推進方策に加える。
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