研究課題/領域番号 |
23K26435
|
補助金の研究課題番号 |
23H01742 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27010:移動現象および単位操作関連
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
稲澤 晋 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30466776)
|
研究分担者 |
安倍 紘平 沖縄科学技術大学院大学, マイクロ・バイオ・ナノ流体ユニット, リサーチフェロー (10981582)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
2025年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
|
キーワード | コロイド粒子分散液 / 乾燥 / 粒子充填 / 濃縮 / 循環流れ / 浮力流れ / 粒子濃縮 / 塗布乾燥 / 充填のされやすさ / 新規計測手法 |
研究開始時の研究の概要 |
溶液中に分散した粒子は、溶媒が蒸発すると充填される。粒子膜の物性には充填構造が影響するが、現状では充填構造を事前に予測できない。 そもそも乾燥中の粒子にかかる力や粒子充填のされやすさを計測する手段がないためである。本研究では、粒子充填に至る前段階の、局所的に濃縮された粒子分散液に作用する重力と粒子膜成長の関係を利用した計測法を提案する。ガラス板とスペーサーで作る小型のセルで、汎用的で簡単に測定できる手法を実証する。世界のものづくりで広範に使われている乾燥プロセスには、いまだ試行錯誤が不可欠である。そんな現状から脱却するための強力な武器を、世界に先駆けて整備する。
|
研究実績の概要 |
粒子分散液の流れが粒子充填をどのように阻害するのか、に着目し検討を進めた。具体的には、既報の斜めに傾けた界面だけではなく、乾燥する分散液を載せた基板自体も傾けた場合の粒子充填を観察した。粒子充填しやすいサンプルでは基板を傾けても大きな変化は見られなかったが、粒子充填しにくいサンプルでは基板を傾ける影響が明確に確認された。影響があるサンプルでも、基板角度に応じて、最終的には一定の充填角度で粒子膜が成長することも明らかにした。一方で、界面角度は充填角度の収束値にほとんど影響しなかった。乾燥界面付近で粒子が速やかに充填されずに濃縮だけが進むと、分散液の密度が局所的に高くなる。この影響で、基板の傾きに応じて下向きの流れが発生し粒子輸送の方向が変わる。これが充填角度に影響したと解釈できる。この密度差流れの方向は鉛直下向きであるのに対して、本実験系の乾燥による流れは水平方向であり互いに直交する。乾燥速度が粒子充填の角度に与える影響を精査し、より一層の理解を深める。 また海外研究者と光干渉断層法を用いた粒子分散液の充填過程観察を行った結果、本研究で検討している分散液の密度による自発的な流れ発生が粒子充填に極めて重要な影響を与えていることも明らかになった。なかでも、自発流れが発生すると自発流れがない場合に比べて粒子充填の開始が遅れること、自発流れの影響で、従来は初期の濃度から変化しないとされていた乾燥界面から遠い分散液の粒子濃度も著しく増加すること,を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
粒子充填のされやすさを、基板を傾けるだけのシンプルな方法で可視化出来ることを明らかにできた。また、光干渉断層法を用いた乾燥中の粒子分散液内部の粒子濃度測定が可能となった。この測定から、蒸発による粒子濃縮が自発流れを予想以上に引き起こしており、粒子の充填のされやすさと密接に関わっていることを示唆する結果を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
充填されにくい粒子は、乾燥で一時的に濃縮されて「重たい分散液」になると重力の影響で沈む。この浮力流れの影響がどの程度の長さまで影響するのかを確認する。先行研究ではこの浮力流れの影響は乾燥界面から数百マイクロメートルであると報告されているが、光干渉断層法を用いた測定結果から、予想以上に長距離の影響を与えることが示唆されている。自作の乾燥セルを使い、蛍光粒子を用いた流れの可視化などの手段を用いて、乾燥界面で生じた流れがどこまで分散液に影響するのかを明らかにする。
|