研究課題/領域番号 |
23K26436
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補助金の研究課題番号 |
23H01743 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27010:移動現象および単位操作関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
汲田 幹夫 金沢大学, フロンティア工学系, 教授 (60262557)
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研究分担者 |
児玉 昭雄 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (30274690)
辻口 拓也 金沢大学, 機械工学系, 教授 (10510894)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
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キーワード | Composite adsorbent / Surface modification / Heat and mass transfer / Water vapor adsorption / Adsorption cooling cycle / 複合吸着材 / 表面改質 / 伝熱促進 / シリカ・アルミナ系吸着材 / 水蒸気吸着 / 吸着冷凍サイクル / 熱・物質移動 |
研究開始時の研究の概要 |
中低温熱で駆動可能な吸着式冷凍機の性能向上には吸着材熱交換器内の冷媒蒸気吸着と伝熱の促進が鍵となる。本研究では,シリカ・アルミナ系吸着材微粒子層を金属表面に形成した高伝熱性複合吸着材(HHTCA)の創製を基軸として,水蒸気吸着能を増強したHHTCAの微視的構造と吸着及び伝熱機構の解明,水蒸気吸着及び熱移動解析に基づくHHTCAの設計指針の取得および多段化したHHTCA熱交換器の構築による新たな逐次吸着冷凍サイクルの確立について検討を行う。これにより,吸着蓄熱材の設計と吸着冷凍プロセスの強化の両面から吸着冷凍サイクルに基づく高度熱エネルギー変換技術の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
中低温熱を冷熱に変換可能な吸着式冷凍機の冷熱出力向上には吸着材熱交換器内の冷媒蒸気吸着と伝熱の促進が不可欠である。本研究では、シリカ・アルミナ系吸着材微粒子を金属表面に固定化した高伝熱性複合吸着材の水蒸気吸着能の増強とともに、逐次吸着冷凍操作の確立により吸着冷凍システムの性能向上を目指す。今年度は、アルミニウムを基材とする複合吸着材の調製とその水蒸気吸着及び熱移動特性について検討を行った。 高伝熱性複合吸着材の調製は、基材アルミニウムの化学的表面改質、基材表面のシランカップリング剤修飾及び吸着材微粒子のディップコーティングにより実施し、得られた複合吸着材の水蒸気吸着特性を評価した。アルミニウムの表面改質では、ホウ酸及びシュウ酸の電解浴における陽極酸化処理によってホウ酸浴ではバリア型酸化アルミニウム皮膜が、シュウ酸浴では多孔質酸化皮膜がそれぞれ得られ、後者の酸化皮膜をリン酸によるエッチング処理にて微細な凹凸層に改変することができた。特に、エッチング処理では、リン酸濃度や操作時間等により凹凸酸化皮膜の構造が大きく変化することが明らかとなった。吸着材微粒子の基材表面への固定化では、自作ディップコーターの導入によって基材表面に形成される吸着材粒子層の均一化を図ることができ、また、吸着材粒子層の形成はシランカップリング剤種により変化し、アミノ基を有する3-Aminopropyltriethoxysilaneの場合に相対的に厚く強固な粒子層が得られることが判明した。調製したAlPO型ゼオライト/アルミニウム複合材は基材の改質状態に関わらずいずれも良好に水蒸気吸着が進行し、特に、凹凸層に表面改質した基材で調製した複合材では水蒸気吸着容量が増大することを確認した。また、本複合吸着材の二次元熱・物質移動モデルに基づく数値解析を実施し、複合材の水蒸気吸着と熱移動の過渡的挙動を概ね把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吸着式冷凍機に組む込む吸着材の冷媒蒸気吸着能は冷熱出力性能に直接影響を及ぼす。今年度は、吸着材の伝熱促進と水蒸気吸着容量の増大を目指して、高熱伝導性のアルミニウムの表面にシリカ・アルミナ系吸着材微粒子を化学的に固定化した複合吸着材の創製とその水蒸気吸着及び熱移動特性について検討を行った。 金属アルミニウム表面へのシリカ・アルミナ系吸着材粒子の固定化にはシランカップリング剤を用い、その導入のために、陽極酸化法及びエッチング法によって基材表面を酸化アルミニウム層に改質した。その結果、陽極酸化処理条件を調整することでサブミクロンから数十ミクロンに至る厚みの酸化皮膜を表面に形成させることが可能となり、特に、陽極酸化により得られる多孔質酸化皮膜に対してリン酸エッチング処理を施すことでこれを微細な凹凸層に変化させることができ、その構造がエッチング条件に依存することを明らかにした。このように表面改質したアルミニウム基材にシランカップリング剤を修飾し、続いて吸着材微粒子懸濁液を用いてディップコーティングすることで吸着材/アルミニウム複合材を調製した。ここでは、自作ディップコーターの導入による吸着材粒子層の均一化と再現性の向上を図ることができ、また、アミノ基を有するシランカップリング剤の採用により厚く強固な吸着材粒子層の形成が可能になることを見出した。さらに、AlPO型ゼオライト/アルミニウム複合材について水蒸気吸着容量と吸着速度を評価した結果、いずれも良好な水蒸気吸着能を示し、特に、リン酸エッチングによって微細凹凸表面に改質した基材で調製した複合材では、原料ゼオライトに比べて水蒸気吸着容量が増大することを確認した。一方で、本複合吸着材の水蒸気吸着及び熱移動の過渡的挙動を二次元熱・物質移動モデルに基づく数値解析によって概ね把握することができた。以上より、本研究の進展はおおむね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた研究結果を踏まえて今後は以下に示すように、吸着冷凍サイクル操作に好適な吸着材/アルミニウム複合材の創製に取り組み、さらに、本高伝熱性複合吸着材を適用する逐次水蒸気吸着冷凍サイクルの確立について検討を進める。 シランカップリング剤を固定化剤とする高伝熱性複合材の調製手順は概ね確立されたが、水蒸気吸着能を増強したAlPO型ゼオライト/アルミニウム複合材の調製の再現性を向上させる必要がある。特に、シュウ酸陽極酸化処理により得られるアルミニウム基材表面の多孔質酸化皮膜に対するリン酸エッチング処理工程における操作条件を最適化することで酸化皮膜を再現良く微細凹凸層に改質する。そして、AlPO型ゼオライト/アルミニウム複合材における水蒸気吸着能の増強効果のメカニズムを、基材表面及びゼオライト粒子層の微視的構造と水蒸気吸着特性の関連性を把握して解明する。また、ゼオライト/アルミニウム複合材の水蒸気吸着および伝熱シミュレーションに基づいて吸着冷凍サイクル操作に、より好適な複合吸着材の設計指針を取得する。 高伝熱性複合吸着材を組み込む吸着材熱交換器を多段化し、その上流側から冷媒水蒸気を逐次的に吸着させることで大きな吸着推進力を継続的に保持し、見掛けの水蒸気吸着速度を向上させ得ることについて検証する。ここでは、複合吸着材単体の水蒸気吸着特性データに基づく数値シミュレーションによって2段に直列配置した吸着材熱交換器における逐次操作時の熱・物質移動特性を明らかにするとともに、本熱交換器の最適設計・操作指針を得る。そして、AlPO型ゼオライト/アルミニウム複合材を適用した逐次吸着冷凍システムを構築し、吸着冷凍サイクル操作による冷熱生成性能の評価を行う。併せて、本システムの理論解析を実施して、本高伝熱性複合吸着材の適用と逐次吸着冷凍操作の有効性を検証する。
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