研究課題/領域番号 |
23K26449
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補助金の研究課題番号 |
23H01756 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27020:反応工学およびプロセスシステム工学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
大島 達也 宮崎大学, 工学部, 教授 (00343335)
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研究分担者 |
大榮 薫 宮崎大学, 工学部, 准教授 (00315350)
稲田 飛鳥 宮崎大学, 工学部, 助教 (10803835)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2026年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 溶媒抽出 / 機械学習 / 希少金属 / リサイクル / 湿式精錬 / extraction / ion solvation / rare metal / gold / gallium / separation / solvent / hydrometallurgy / 溶媒和抽出 / 金 / ガリウム / 分離 |
研究開始時の研究の概要 |
半導体産業の成長に伴い希少金属の需要増が予見されている。イオン溶媒和抽出は優れた分離法であるが,優れた抽出溶媒ほど水に溶出しやすく環境負荷が大きい。本研究では,優れた金属分離回収能力と,低水溶性に基づく低環境負荷性を両立した最適な新規抽出溶媒を機械学習法によって見出す。合成した溶媒を含めた150種以上の溶媒によるAu(III),Ga(III)等の金属抽出の実験を得る。金属抽出率と水溶性の2つを目的変数とし,抽出溶媒の分子構造から得られる記述子を説明変数とする機械学習によって最適な抽出溶媒を見出す。詳細な抽出特性および物性を調査し,廃電子機器浸出模擬液を用いた抽出実験により,実用性を評価する。
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研究実績の概要 |
本研究では,希少金属リサイクルの効率を高める新規抽出溶媒として,優れた抽出能力と,低い水溶性に基づく環境低負荷・高い再利用性を兼ね備えた新規溶媒を見出すことを目的とする。溶媒の探索法として,複数の目的変数を設定した機械学習を利用する。 2023年度は抽出能力の高い溶媒を探索するための機械学習モデルの精度向上を目的とした。目的金属の抽出率は塩酸濃度により変換することから、Au(III)については89種の溶媒について異なる塩酸濃度での抽出率を調査し、それらを複数の目的変数として機械学習モデルを構築した。得られたモデルにおいて決定係数が0.9を超え、適切なモデルが得られるとともに、複数の目的変数を両立する機械学習モデルを構築しうることを示した。他方、Ga(III)についても複数目的変数による機械学習モデルを構築した。さらに、カルボニル基とエーテル酸素を近傍に有した芳香族化合物がGa(III)への高い抽出能力を有することを明らかにした。 見出した抽出系の実用性評価の一例として、Ga(III)の抽出分離試験を行った。文献を参考にCIGS太陽光廃パネルの焼成後の金属組成に基づいてCu(II)、In(III)、Ga(III)、Se(IV)を含む塩酸溶液からの抽出分離を試みた。これまでに見出している有力な抽出溶媒の2-ノナノンを用いた抽出およびストリッピングを行った結果、Ga(III)が選択的に抽出され逆抽出後には最も高濃度となり、初濃度よりも4.4倍に濃縮された。この結果より、筆者らが見出した抽出溶媒によって半導体廃棄物からの希少金属を分離回収しうることを見出した。 これらの研究成果は別途記載の関連する査読あり学術論文4編が発表されるなど、広く公開することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は複数の目的変数による機械学習モデルの構築を目標として、異なる塩酸濃度での金属抽出率を目的変数として精度よく抽出率予測のモデルを構築できることを示した。本課題では研究期間内に150種の溶媒による金属抽出率を得て機械学習を行うことを目標としているが、Au(III)については2023年度の時点で89種の溶媒について異なる塩酸濃度での抽出率を得ており、順調に推移している。Ga(III)についても今後データ量を増やしていく予定である。 並行して検討した新規溶媒がAu(III)やGa(III)への高い抽出率を示すことを見出しており、本研究の目的である高い抽出能力と低い水溶解度を両立する溶媒を数種新たに発見した。 これらの研究成果について複数の論文を発表することができた。以上のとおり当初の計画通りに順調に研究が進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降も溶媒探索を進めることで機械学習モデルの精度向上を進める。さらに、当初目的である高い抽出能力と低い水溶解度を両立する溶媒を探索するための機械学習モデルの構築に努める。2024年度はAu(III)およびGa(III)の抽出率を100種程度の溶媒による抽出実験により得ることを目標として、最終年度(2026年度)までに150種の溶媒でデータ獲得することを目標とする。候補化合物については単に種類を増やすことのみを目標とするのではなく、機械学習の精度向上のため、既存のデータを補完すると期待される候補物質から予算内で購入できるものに絞って試験する。別途、機械学習の精度向上あるいは目的に最適と期待される溶媒の一部を合成して試験する。特に、アルコール類を新たに試験対象に追加する。アルコール類は塩酸系で水相と混和するためにこれまで検討対象から除外してきたが、幾つかの候補化合物について新たに試験する。 機械学習にはクラウドのシステム(Datachemical LAB) を用いて、目的変数を複数としたプログラムを比較的平易な方法で構築する。 有用と見いだされた溶媒の数種についてより詳しい抽出特性を調査する。具体的には2023年度にAu(III)の抽出溶媒として有用であることが見出された1-acetonaphthoneについて抽出速度、金属選択性、抽出容量、抽出した金の還元回収などについて調査する。同様に、Ga(III)抽出についてもこれまでに有力として見出された溶媒の抽出特性を調査する。 2024年度中もこれらの研究成果の学術論文ならびに学会発表による成果発表に努める。
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