研究課題/領域番号 |
23K26455
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補助金の研究課題番号 |
23H01762 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27030:触媒プロセスおよび資源化学プロセス関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大山 順也 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (50611597)
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研究分担者 |
高橋 啓介 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80759481)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 固体触媒 / 金属ナノ粒子 / 3次元構造解析 / 電子顕微鏡 / ナノ粒子 / 3次元 / 原子スケール |
研究開始時の研究の概要 |
固体触媒はエネルギー、環境、化学プロセスのキーマテリアルである。その性能は構造によって変化することがわかっているが、固体触媒の構造は非常に複雑であり、いまだに正確に明らかにできていない。そこで本研究では、固体触媒の3次元構造を原子スケールで解析し構造の効果を調査することを目的とする。具体的に固体触媒として担持金属ナノ粒子触媒をターゲットとし、電子線トモグラフィーなどの技術を用いて原子スケール3次元構造解析を行う。この解析によって、これまでとは全く異なる次元・スケールで触媒構造が性能に与える効果を調査していく。構造データベースを構築することで、新しい固体触媒研究の基盤を作っていく。
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研究実績の概要 |
担持金属ナノ粒子触媒の原子構造効果を明らかにすることを目的とし、電子線トモグラフィーの手法を用いて担持金属ナノ粒子の原子分解3次元構造解析を進めた。メタン燃焼に特異な活性を示すθアルミナ担持Pdナノ粒子について、原子分解3次元構造を基に露出表面を調査した。その結果、理想的なモデル粒子とは異なり、原子配列が乱れたPd{111}やPd{100}、さらにPd{212}といった高指数面が露出していることが判明した。つまり、θアルミナ担持Pdナノ粒子ならではの表面が露出しており、これが高いメタン酸化活性の原因であることが明らかになった。また、担体の種類がPdナノ粒子構造に与える影響を示すために、酸化チタン担持Pdナノ粒子の原子分解3次元構造解析を進め、アルミナ担持Pdナノ粒子と比べて粒子構造が大きく異なることが見えてきた。一方、今回取得した酸化チタンPdナノ粒子像の一部において、これまでに開発してきたディープラーニングを用いたPdナノ粒子像の抽出が難しく、本手法を使った粒子像抽出のためには、学習データ数、さらには、金属ナノ粒子と担体背景のコントラストや金属ナノ粒子が像全体を占める率といった取得像の質に条件があることが示唆された。そこでディープラーニングを用いた方法とは別の方法として、担体を含めて3次元再構築した後に粒子データを抽出する方法を検討した。本手法のためのサンプル作成と観察の条件を検討した結果、原子分解手前の空間分解能では担体を含めた3次元再構築に成功した。これによって担体と金属ナノ粒子の位置関係を明確にできた。今後、本手法による原子分解3次元構造解析を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルミナ担持Pdナノ粒子の原子分解3次元構造を解析することで、原子配列や表面構造が乱れているだけでなく高指数面が現れていることが分かった。つまり、担体と相互作用することで現れる金属ナノ粒子の表面構造を明らかにすることができた。この結果は学術誌で発表した。さらに、新しいサンプルとして酸化チタン担持Pdナノ粒子の原子分解3次元構造解析を進めた。当初の予想とは違ってディープラーニングを用いた背景予測の精度が向上しなかったために、アルミナ担持Pdナノ粒子と同じように3次元構造解析を進めることが難しかった。この手法については教師データ増加など引き続き検討をするが、もう一つの解析方法として、担体を含めた3次元再構築を行い、その後に粒子像を抽出することを試みた。電子顕微鏡観察のためのサンプル調製を工夫し、金属ナノ粒子と担体粒子から成る触媒粒子の3次元再構築することができた。今後、この手法を原子分解3次元解析へ適用していく。触媒の吸着および活性評価については、環境を整備し、触媒構造の平均情報の取得と触媒性能評価を進めた。また、電子顕微鏡以外の触媒構造解析手法として、高分解能X線吸収分光法を試したところ、従来のX線吸収分光法では分析が困難であった構造の違いを明らかにすることができることが分かった。以上のことから、固体触媒の原子分解構造解析とそれに基づく構造―特性・活性相関の解明という目的に順調にアプローチできていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
酸化チタン担持Pdナノ粒子触媒および他の特徴的な担持金属ナノ粒子触媒について電子線トモグラフィーによる3次元原子構造解析を進め、その構造データを基に担体や金属種による金属ナノ粒子構造の違いを明らかにしていく。金属ナノ粒子の3次元原子構造解析では二つの方法を検討する。一つはディープラーニングによる背景予測技術を使って金属ナノ粒子像を抽出・3次元再構築する方法、もう一つは担体を含めた3次元再構築後、金属ナノ粒子の3次元像を抽出する方法である。この検討と同時に、サンプルの平均構造情報を与える分光法を利用して、解析した3次元原子構造が平均的な構造であることをサポートしていく。具体的に、その分光法として一酸化炭素をプローブ分子とした赤外吸収分光法を計画している。このようにしてサポートした3次元原子構造データを基に反応・吸着実験や計算によって触媒の構造-活性相関を検討していく。また、担持金属触媒材料の中でも特に活性金属種が原子状で分散あるいは固溶しているような材料の原子分解構造解析には、高分解能X線吸収スペクトルが有効であることがわかってきたため、この手法を用いた触媒解析によっても構造―活性相関の研究を進める。
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