研究課題/領域番号 |
23K26457
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補助金の研究課題番号 |
23H01764 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27030:触媒プロセスおよび資源化学プロセス関連
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
山本 勝俊 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (60343042)
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研究分担者 |
池田 拓史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (60371019)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2026年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 有機ー無機ハイブリッド / ナノシート / メタロシリケート / 触媒 / 結晶構造解析 / 親疎水性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、有機基で修飾されたケイ素化合物の自己組織化を通じてゼオライトのような構造を持つ二次元ナノシート物質を合成し、その結晶構造を粉末X線回折により解明するとともに、触媒として応用するまでを行う。本研究が期待する材料は、アルミニウムやチタンを含むメタロシリケート組成のナノシートが弱い分子間力で積層した二次元物質であるため、層剥離や層間拡張が可能であり、さらに有機基に覆われたナノシート表面は親油的であるためサイズを問わず有機分子に対して親和性の高い吸着場・反応場を提供することができる。この特異な反応場とメタロシリケートの触媒能を併せ持つ新規材料を触媒として応用し、その活性を評価する。
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研究実績の概要 |
本研究では、末端型有機シランの自己組織化を通じてメタロシリケート組成を持つ二次元ゼオライト様ナノシート物質を合成し、その結晶構造を粉末X線回折により解明するとともに不均一系触媒として応用するまでを行う。本研究で合成しようとする材料は、多孔質メタロシリケートで構成されたナノシートが弱い分子間力で積層した二次元物質であるため、層剥離や層間拡張が可能であり、さらに有機基に覆われたナノシート表面は親油的であるためサイズを問わず有機分子に対して親和性の高い吸着場・反応場とすることが期待できる。 研究初年度である2023年度は、研究代表者らが合成したKCS-11の合成手法を発展させながら、アルミノシリケート組成のナノシートが積層した物質の開発を行った。ゼオライト様物質の結晶化過程は解明されていないため、その開発は試行錯誤的に行わざるを得ない。そこで末端型有機シランをメチルトリメトキシシランに固定し、これにTEOSとアルミナを加えて前駆体を調製し、それらの組成比や合成温度を変化させながら水熱合成することにより生成物を得た。TEOSを原料の一部として加えることにより、これまでに得られていない新たな結晶相を得ることに成功し、原料比だけでなく、原料それぞれの加水分解時間のような前駆体調製条件も最終的に得られる物質の構造に影響を及ぼすことを明らかにした。得られた物質について、SEM観察により粒子径・モルフォロジーを、窒素吸着、エタノール蒸気吸着により表面積や有機分子に対する親和性をそれぞれ評価した。材料開発は、有機リン酸であるフェニルリン酸とアルミナを原料としたアルミノホスフェート組成を持つ層状物質の合成まで進めており、複数の結晶性物質を得ることに成功している。ここまでに得られた物質のうち結晶性の良いものについては2024年度以降に結晶構造の解明を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、研究代表者がすでに合成に成功しているKCS-5、KCS-11などの層状アルミノシリケート物質の合成を発展させ、アルミノシリケート組成のナノシートが積層した物質の開発を実施する計画であった。この研究計画に従い、有機シランとともにTEOS、アルミナを原料として調製した前駆体を水熱合成することにより、未知構造を持つアルミノシリケート物質を複数得ることに成功した。さらにこの合成を繰り返すことにより、原料比だけでなく、原料それぞれの加水分解時間のような前駆体調製条件も最終的に得られるアルミノシリケート物質の構造に影響を及ぼすことを明らかにした。今後の研究では生成相に影響を与える因子を洗い出し、それらの条件を精密に制御しながら、再現性良く層状アルミノシリケートを合成できる条件・手法の確立を目指す。さらに有機リン酸エステルとアルミナを原料とするアルミノホスフェート組成の層状物質合成にも着手できており、すでに複数の結晶性物質を得ることに成功している。このように材料合成の面では、計画以上の成果が得られている。得られた未知構造物質の結晶構造解析に繋げるまでには至っていないが、SEM観察や熱分析、吸着測定などの物性評価データは着実に蓄積できており、それらのデータを今後の結晶構造解析に活用できる状況は整えられている。 以上から、研究全体としておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、層状アルミノシリケート物質の合成では、原料比だけでなく前駆体調製条件も最終生成物の構造に影響を及ぼすことが明らかになった。前駆体調製におけるパラメータは非常に多いため、2024年度の研究では生成相に影響を与える因子の特定に集中し、再現性良く層状アルミノシリケートを合成することを重視しながら材料開発を進める。材料開発はすでにアルミノホスフェート組成の層状物質合成まで進められているが、より難易度が高いと考えられるチタノシリケート(チタン含有ケイ素酸化物)組成を持つ物質の合成にもできるだけ早く着手し、合成条件の探索を進める。また、これらの層状物質を様々な有機溶媒中で処理し、層間導入、層間拡張に最適な条件の探索も並行して行う。 得られた未知構造物質のうち結晶性の良いものについては、粉末X線回折やmicroEDを駆使してその結晶構造を決定する。その際、固体NMRから推測される局所構造や、結晶のモルフォロジーや表面積などこれまでに集めた情報を組み合わせながら結晶構造を決定する。これら構造解析や物性評価で触媒としての適性が期待される物質については2025年度以降に触媒としての利用を検討する。酸触媒活性を持つことが期待されるナノシートでは例えば安息香酸エステルの加水分解など、酸化触媒活性を持つことが期待されるナノシートでは例えばシクロヘキセンの酸化など、比較的嵩高い分子を基質とする反応をモデル反応として選択し、外表面での触媒活性を評価する。
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