研究課題/領域番号 |
23K26462
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補助金の研究課題番号 |
23H01769 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
福谷 洋介 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50747136)
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研究分担者 |
廣橋 良彦 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30516901)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | 嗅覚受容体 / がん幹細胞 / 細胞膜輸送 / RTP1 / 大腸がん幹細胞 / 内因性リガンド |
研究開始時の研究の概要 |
嗅覚受容体は周辺環境の分子を認識するセンサータンパク質である。がん幹細胞は高い造腫瘍能、自己複製能、分化能を有する腫瘍細胞亜分画と定義され、腫瘍増殖の起始点と考えられている。嗅覚受容体OR7C1はヒト大腸がん幹細胞に選択的に発現し、大腸がん細胞増殖を促進する。しかし、OR7C1の内在性リガンドは未同定であり大腸がん幹細胞におけるOR7C1の機能は分かっていない。本研究は大腸がん幹細胞におけるOR7C1の選択的発現制御メカニズムからOR7C1の機能活性に至る包括的な解析により、OR7C1の大腸がん幹細胞発現意義の解明を行い、嗅覚受容体を標的とした新規がん免疫療法の開発を目指す研究である。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、がん幹細胞に特異的に発現している嗅覚受容体の発現意義の解明を目的としている。 今年度は、大腸がん幹細胞に発現する嗅覚受容体OR7C1の機能発現に関する新規関連因子の探索を中心に研究を進めた。SW480細胞の幹細胞画分であるSide population(SP)細胞と分化がん細胞画分であるMP細胞のそれぞれの単クローン株に対し、RNA-seq解析を行いがん幹細胞に特徴的に発現する遺伝子の探索を行った。まず、SP単クローン細胞において幹細胞マーカーとOR7C1の発現を確認した。さらに、嗅覚受容体の機能発現に関連する遺伝子の発現を確認したところ、Receptor transporting protein(RTP)の中でも嗅覚受容体のシャペロンとして機能するRTP1とRTP2がSP細胞に選択的に発現していることが確認された。また、3量体Gタンパク質などの嗅覚受容体のアゴニスト応答に伴って誘導されるシグナル伝達を担う各種遺伝子のSP細胞での発現を確認した。一方でMPクローン株ではRTP1とRTP2の発現が見られなかった。このことから、SW480のSP細胞では、嗅覚受容体が機能的には発現し、機能する環境が整っていることが確認された。 そこで、SW480細胞のRTP1をノックダウンし、OR7C1が細胞膜への局在を抑制した場合にSW480細胞の幹細胞性に与える影響を調べた。アルデフローアッセイにより、RTP1ノックダウンのアルデヒドデヒド活性を評価した結果、RTP1をノックダウンするとSW480細胞の幹細胞活性の増加がみられた。この結果から、RTP1によるOR7C1の細胞膜局在活性がSW480の幹細胞の割合の制御に寄与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸がん細胞株SW480由来のSP細胞群とMP細胞群の特徴をRNA-Seq解析によって見出した。その中に、嗅覚受容体の機能発現に関与するRTP1の特徴的な発現を確認した。これまで、大腸がん幹細胞で発現しているOR7C1の受容体としての機能性については検証が進んでいなかったが、今回の解析結果によって、OR7C1が大腸がん幹細胞の細胞膜に局在し、細胞外のリガンドを認識している可能性が高いことを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
SW480細胞由来のSP細胞とMP細胞の単クローン株に対するRNA-Seq解析の結果から、SP細胞とMP細胞で発現している遺伝子が大きく異なることを確認した。特に、SP細胞では、嗅覚受容体の機能発現に関する遺伝子の発現を確認した。SW480細胞株では、幹細胞株の割合は約10%程度となり、大部分の細胞応答はMP細胞の応答が検出されてします。そこで、今後はSP細胞の単クローン株を軸に、ノックアウト株や遺伝子導入株を作製することでOR7C1の役割について検討を進める。また、ニッチな環境がSP細胞の幹細胞性やOR7C1の機能発現性に影響を与える可能性があることから、MP細胞とSP細胞のそれぞれの単クローンを混合した培養などを行うことで、その幹細胞の割合の変化を調べるとともに、嗅覚受容体の機能性の変化、内因性リガンドの存在などを探索する予定である。
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