研究課題/領域番号 |
23K26466
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補助金の研究課題番号 |
23H01773 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青木 航 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (10722184)
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研究分担者 |
後藤 佑樹 京都大学, 理学研究科, 教授 (70570604)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 人工リボソーム / 合成生物学 |
研究開始時の研究の概要 |
本申請では生体ポリマーの再発明を目指し、以下の研究項目を推進する。 研究項目1. 試験管内リボソーム生合成を改良し、人工リボソームを大量に取得可能な条件を探索する。 研究項目2. 一度のアッセイで多くのリボソーム変異体を構築・評価可能な試験管内リボソーム進化工学を確立する。 研究項目3. 試験管内リボソーム進化工学を応用し、非天然モノマーを効率的に重合可能な人工リボソームの構築に向けて基盤となる技術を開発・評価する。
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研究実績の概要 |
リボソームは、遺伝コードに従って20種類の天然アミノ酸を重合し、多様なタンパク質を生み出す。もしリボソームの触媒活性を改変できれば、人類が利用可能なポリマー種を大幅に拡張できる。しかし、リボソームは生命の必須因子であり、その触媒活性を自在に改変することは難しかった。申請者はこれまでに、遺伝子を出発物質として試験管内でリボソームを合成することに世界で初めて成功した。この「試験管内リボソーム生合成」は、出発物質となるリボソーム遺伝子に変異を導入するだけで、任意の人工リボソームを自由自在に構築可能である。本申請ではこの技術を基盤に、生体ポリマーの再発明に挑戦する。第一に、 多数のリボソーム変異体を一斉構築・評価可能な「試験管内リボソーム進化工学」を確立する。第二に、試験管内リボソーム進化工学により、D-アミノ酸などの非天然モノマーを効率的に重合する人工リボソームを創出する。本年度は、「試験管内リボソーム生合成」の改良を推進した。申請者は試験管内リボソーム生合成の確立に成功したが、その収量は1 nM程度である。多様な人工リボソームを評価可能とするためには、収量を改善する必要がある。そこで、さまざまな低分子化合物の添加や連続透析などを試みたところ、連続透析法により新生リボソーム由来のシグナルを大きく改善することに成功した。また、新生リボソームのみを特異的に精製可能な方法論を開発し、新生リボソームを濃縮することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は試験管内リボソーム生合成の確立に成功したが、その収量は1 nM程度である。多様な人工リボソームを評価可能とするためには、収量を改善する必要がある。そこで、さまざまな低分子化合物の添加や連続透析などを試みた。例えば、rRNAの修飾に重要なS-アデノメチオニンやクラウディングエージェントの添加を試みたが、新生リボソーム由来のシグナルを改善することはできなかった。そこで、連続透析法を検討した。連続透析法とは、無細胞転写翻訳系を、半透膜を有するチューブに入れ、そのチューブを、反応に必要な各種低分子化合物を含む溶液に入れる方法論である。連続透析法により、エネルギーの連続供給と老廃物の除去が可能となり、無細胞転写翻訳系のキャパシティを向上させられる。連続透析法により、新生リボソームの合成量を大きく向上させることに成功した。 また、試験管内リボソーム生合成では、精製した天然リボソームがリボソーム遺伝子を翻訳することで人工リボソームが合成される。この状況で新生リボソームの活性を測定しようと試みても、リボソームを構成する30S小サブユニットと50S大サブユニットは自由に交換可能であり、合成された多くの人工リボソームサブユニットが天然リボソームにトラップされてしまう。そこで、新生リボソームのみを精製・濃縮する方法論を検討した。具体的には、リボソームを構成する16S rRNAと23 S rRNAに、ストレプトアビジンに結合するアプタマーを挿入した。アプタマーを持つ新生リボソームをストレプトアビジンビーズと相互作用させることで、新生リボソームのみを精製することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度の研究を拡張する。具体的には、反応条件の最適化とリボソーム精製条件の最適化をさらに実施し、新生リボソームの収量を向上させる。 また、当初予定の「試験管内リボソーム進化工学」を推進する。具体的には、以下のステップから成る試験管内リボソーム進化工学を開発する。 A) 変異を導入したいリボソーム遺伝子群(rRNA・uL3・uL16・uL27 など)を含むマスタープラスミドを準備する。B) マスタープラスミドに対して網羅的変異を導入し、同時に、リボソームの機能に影響しない16S rRNA helix 6 にDNA バーコードを付与する。C) 変異マスタープラスミドライブラリをPacBio HiFi リードでシーケンスし、各DNA バーコードと変異パターンを対応づける。D) 微小液滴を用いて人工リボソームライブラリを構築する。具体的には、RNA ポリメラーゼ・天然リボソーム・変異マスタープラスミドライブラリ・変異を導入しないリボソーム遺伝子を封入する。rRNA が発現する際に、DNA バーコードはRNA バーコードに変換されて人工リボソームに取り込まれる。各液滴に2 つ以上の変異マスタープラスミドが封入されないようにすることで、人工リボソームを構成するrRNA とr-proteinに導入された変異を、RNA バーコードを解読するだけで決定できる。E) 微小液滴を破裂させて人工リボソームライブラリを回収し、非天然ポリマーと精製タグをエンコードする人工mRNA と反応させる。非天然ポリマーを合成できた人工リボソームをタグレジンでアフィニティー精製する。F) 精製された人工リボソームのRNA バーコードを決定し、優れた非天然ポリマー合成能力を示す人工リボソームを決定する。
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