研究課題/領域番号 |
23K26485
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補助金の研究課題番号 |
23H01792 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28020:ナノ構造物理関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
後藤 秀樹 広島大学, 半導体産業技術研究所, 教授 (10393795)
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研究分担者 |
俵 毅彦 日本大学, 工学部, 教授 (40393798)
国橋 要司 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, 主任研究員 (40728193)
章 国強 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, 主任研究員 (90402247)
徐 学俊 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, 主任研究員 (80593334)
眞田 治樹 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, 特別研究員 (50417094)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2026年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2025年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 量子情報 / 量子ドット / ナノ物性制御 / 光物性 / 単一光子・もつれ光子 / Bi添加GaAs / スピン軌道相互作用 / 半導体ナノワイヤ / 電気制御型発光素子 |
研究開始時の研究の概要 |
量子情報処理の基本的な要素である、通信波長帯でのオンデマンド単一光子・もつれ光子発生源(所望のタイミングで光子発生)の実現を目的とし、固体材料の発光過程と光非線形効果を用い、光子のスペクトル特性、統計の制御技術を確立させる。研究では、半導体量子ドットと非線形結晶、希土類酸化物とフォトニック結晶、レーザと非線形結晶の3つのテーマに取り組んで目的達成をめざす。この成果を用い、高効率な単一光子、もつれ光子発生装置を構築し、量子インターネットや、量子計算などの量子情報技術の発展に貢献する。関連する基本的な光物性の解明も進め、学術発展にも貢献する。
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研究実績の概要 |
量子情報処理の基本的な要素である、通信波長帯でのオンデマンド単一光子・もつれ光子発生源(所望のタイミングで光子発生)の実現を目的とし、固体材料の発光過程と光非線形効果を用い、光子のスペクトル特性、統計の制御技術を確立させる。研究では、半導体量子ドットと非線形結晶、希土類酸化物とフォトニック結晶、レーザと非線形結晶の3つのテーマに取り組んで目的達成をめざしている。 今期は、単一光子およびもつれ光子の発生につながる半導体材料のスピンに着目した光学評価を進め、Biを添加したGaAsにおいてスピン軌道相互作用が増強されることを明らかにした。本成果を国際会議、論文誌で発表した。GaAsBiはBiが重い元素であることから、スピン効果の増大が予測されていたが、本成果はそれを定性的および定量的に証明したことを意味し、重要な成果である。 また、高品質の量子ドットの実現のための基礎技術となる半導体ナノワイヤを用いた発光素子の高効率化に関しても成果を得て、論文誌で発表した。半導体ナノワイヤは量子ドットのサイズや、発光状態の制御を可能にすることが期待できるため、研究の進捗に対して重要なマイルストーンとなる。本成果では、電気制御型の発光素子に向けての技術も実現させており、光子発生源の応用範囲の拡大にもつながる。 3つのテーマともシミュレータを用いた光学特性のシミュレーションが必要なことが明らかになったので、高性能なシミュレータを導入し、初期的な結果を獲得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単一光子・もつれ光子の発生には固体発光材料が不可欠であるが、発光材料の高品質化が欠かせない。そのためには、発光材料の物性を解明し、所望の特性を得る必要がある。光子の発生過程には、スピン状態の物性が深く関与することが知られているが、その特性を明らかにしたことは研究の進捗にとって重要である。また、研究目的の達成のためには量子ドットは、発光波長の制御を実現する必要があることが分かっている。今期の取り組みで、半導体ナノワイヤを用いると量子ドットの構造を適切に設計することにより、この発光波長の制御が可能であるとの見通しを得た。 外部発表には至っていないものの、ErO結晶の研究は着実に進展している。フォトニック結晶との組み合わせが可能な光学特性を持つErOの作製条件が明らかになっている。フォトニック結晶との組み合わせ実現に向けて、より構造がシンプルな光導波路構造との組み合わせ構造の作製に成功した。これは、研究目標実現のための重要なステップとなる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)量子ドットから発生する単一光子を、継続的に高度化させてきた顕微分光技術を用いて高効率波長変換が可能な光非線形結晶であるPPLN(Periodically-poled LN)結晶に導入し、ポンプ光を用いる光非線形によって、通信波長帯の単一光子に変換する。波長変換の基本技術の構築と、量子ドットを含むナノ構造や新規発光材料での光物性の解明を進める。昨年の検討からシミュレーションによる波長変換効率の見積りが必要なことが分かったため、実験に加えてシミュレーションも進めていく。 (2)発光波長の均一性にすぐれたErO結晶を用い、発光過程の時間分布をフォトニック結晶を用いて均一化して通信波長帯の単一光子を発生させる。このErOを、フォトニック結晶中の光共振器に組み込むことで強結合状態を形成し、ラビ振動という、光非線形効果の一種の量子振動を発生させる。この状態では、光共振器中のEr中の電子は、すべて同期して時間変化するため、同じタイミングで光子が発生して、単一光子が発生する。光共振器の構造最適化を行い、発光効率の増大が可能な構造を明らかにする。また、ErO結晶の高品質化に向けての作製技術の高度化を進める。 (3)レーザから発生する光を、光非線形効果が高効率で起こる結晶と組み合わせ、光子統計を制御して、単一光子を発生させる。レーザから発生する光は、単一光子成分と多光子成分が存在する。この多光子成分を波長変換して選択的に除去する。残った光は単一光子のみとなり、レーザを用いた単一光子源を得る。研究では、PPLNの設計・実用化で数多くの実績がある組織と協力して、最適なPPLNを作製し効率向上を図る。本項目は、PPLNの構造によって発生効率が大きく異なることが予測されるため、光学シミュレーションで最適な構造を明らかにする。
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