研究課題/領域番号 |
23K26507
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補助金の研究課題番号 |
23H01814 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28040:ナノバイオサイエンス関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
荒磯 裕平 金沢大学, 保健学系, 准教授 (20753726)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,240千円 (直接経費: 14,800千円、間接経費: 4,440千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
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キーワード | ミトコンドリア / TOM複合体 / タンパク質輸送 / 高速原子間力顕微鏡 / 膜タンパク質 / 膜タンパク質複合体 |
研究開始時の研究の概要 |
TOM(Translocase of the outer mitochondrial membrane)複合体はミトコンドリア外膜に存在する膜透過装置で、サイトゾルで合成されたミトコンドリアタンパク質の約99%がTOM複合体を通ってミトコンドリアへ取り込まれる。本研究では、溶液中のタンパク質をリアルタイム観察できる高速原子間力顕微鏡を用いて、TOM複合体が前駆体タンパク質を輸送する仕組みを1ダイナミクスごとに切り分けて解析する。不均一なTOM複合体が、1,500種類に及ぶ前駆体ミトコンドリアタンパク質の認識と輸送を厳密に制御する分子メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
今年度は、TOM複合体の精製条件、HS-AFM測定条件の最適化を進め、TOM複合体のオリゴマー状態と相互作用因子の関係を評価するための実験系を構築した。TOM複合体単独でのHS-AFM解析では、TOM複合体が3量体から2量体へ構造変化する様子を再現性よく明瞭に捉えることに成功した。さらに、プレ配列型基質タンパク質を添加することで、基質タンパク質と3量体TOM複合体の相互作用を可視化することに成功した。1粒子の3量体TOM複合体に同時に結合できる基質タンパク質の数は3個以下であることが示唆され、結合位置にも偏りがあることが考えられた。また、TOM複合体のタンパク質搬入孔の出口付近で基質タンパク質を待ち構え、目的地への仕分けを行う分子シャペロンTim9-Tim10複合体の単離・精製にも成功し、TOM複合体との相互作用解析を開始した。一方で、3量体TOM複合体は基質タンパク質存在下で解離しやすくタンパク質輸送機序の解析が困難であったため、3量体を安定化させる変異TOM複合体をデザインした。単離ミトコンドリアからの大量精製にも成功し、次年度以降のHS-AFM解析に導入していく。 さらに、TOM複合体を構成する補助サブユニットのTom6、またはTom7を欠損した変異型TOM複合体の精製・HS-AFM観察にも成功し、両サブユニットが3量体TOM複合体の形態維持に重要であることが示唆された。 現在は脂質二重膜ナノディスクやリポソームに対してTOM複合体を再構成し、膜環境下で基質タンパク質との相互作用を解析するための実験系構築を進めている。 また、タンパク質輸送とカップルしてミトコンドリア内部でタンパク質の仕分けや品質管理を担う分子装置の機能・構造にも着目し、発現・精製条件の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TOM複合体は不安定で扱いが難しいタンパク質複合体であるが、条件検討を重ねた結果、オリゴマー状態や、基質タンパク質との相互作用をHS-AFM解析するための測定条件を最適化することに成功した。また、TOM複合体の機能解析に有用な変異型TOM複合体の精製に複数種類成功している。本年度の成果をベースにすることで、TOM複合体の動的構造解析を更に発展させることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、膜環境下での分子動態解析を進めるため、TOM複合体を脂質二重膜ナノディスクやリポソームに再構成する手法をいち早く確立することを目指す。基質取り込みを計測するためのin vitro実験系を構築し、様々な基質タンパク質とTOM複合体の相互作用や膜透過能を評価する。最終的には、最も高効率で取り込みが観察できる条件にてHS-AFM解析を行い、TOM複合体によるタンパク質輸送の可視化を膜環境下で達成する。 同時に、基質タンパク質の認識や輸送効率を低下させる変異体のデザインに着手し、活性の低下したTOM複合体精製を行う。HS-AFM解析によって正常なTOM複合体との性質の違いを検討する。 また、1年目の研究を進めるにつれて、3量体TOM複合体のクライオ電子顕微鏡構造を決定し、精密構造情報に基づいたダイナミクス解析を実施する必要性が出てきた。そのため、1年目に作成した3量体を安定化させる変異型TOM複合体を大量精製し、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析による精密構造決定にも挑戦する。 さらに、タンパク質輸送装置とカップルして働くミトコンドリア内部のタンパク質品質管理装置にも焦点を当て分子動態を解析することで、ミトコンドリア全体でのタンパク質動態を多角的に理解する。
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